労働衛生コンサルタント試験 2019年 労働衛生一般 問05

電離放射線




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合格

 このページは、2019年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2019年度(令和元年度) 問05 難易度 やや高度な内容を問う問題である。しかし、電離放射線の分野では基礎知識である。正答したい。
電離放射線

問05 電離放射線に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)軌道電子が、放射線との相互作用によりエネルギーを得て、原子から飛び出すことを電離という。

(2)マイクロ波は、電離放射線に含まれる。

(3)生物に対する影響の強さを示す放射線加重係数は、β線の1に対してX線やγ線は20の値をとる。

(4)電離放射線の影響は、神経細胞のような細胞増殖の盛んな細胞に現れやすい。

(5)電離放射線の確定的影響とは、閾値がある急性影響を指し、晩発影響は含まない。

正答(1)

【解説】

(1)正しい。電離とは、軌道電子が失われたり追加されたりして電荷を帯びた状態になることをいう。放射線との相互作用によりエネルギーを得て、軌道から飛び出すことを電離という。

(2)誤り。マイクロ波は非電離放射線に分類される。なお、電離則第2条に「電離放射線」の定義があり、電離放射線とは、①アルフア線、重陽子線及び陽子線、②ベータ線及び電子線、③中性子線、並びに、④ガンマ線及びエックス線とされている。マイクロ波はこのいずれにも該当しない。

(3)誤り。ICRPの2007年勧告では、放射線加重係数は、ベータ線、エックス線及びガンマ線については1となっている。ちなみに20とされているのはアルファ線と重イオンである。

放射線のタイプ 放射線加重係数
ベータ線、ガンマ線、エックス線
陽子線
アルファ線、重イオン 20
中性子線 2.5~21

(4)誤り。ベルゴニー・トリボンドの法則によれば、細胞分裂頻度が高く、将来、細胞分裂の回数が大きく、形態及び機能的に未分化である組織は、放射線感受性が高いとされる。従って、電離放射線の影響が、細胞増殖の盛んな細胞に現れやすいことは正しい。

しかし、神経細胞は分裂をせず、分化した細胞であるので、放射線感受性が低く、放射線に強いとされている(異論がある)。

(5)誤り。白内障は晩発影響であるが、例外的に確定的影響である。受験対策としては、急性影響、白内障及び不妊が確定的影響であると覚えておけばよい。

2019年12月01日執筆