労働衛生コンサルタント試験 2018年 労働衛生関係法令 問03

じん肺健康診断と管理区分決定




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合格

 このページは、2018年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2018年度(平成30年度) 問03 難易度 かなり詳細な内容を問う問題であり、医師以外の受験者には難問と言えよう。
じん肺健康診断

問3 粉じん作業に従事する労働者のじん肺健康診断に関する次の記述のうち、じん肺法令上正しいものはどれか。

(1)じん肺健康診断において、エックス線写真の像が第1型で肺機能の障害がないと認められる者のじん肺管理区分は管理1に区分され、エックス線写真の像が第2型、第3型又は第4型で肺機能の障害があると認められる者は、その障害の程度により管理2、管理3(イ及びロ)又は管理4に区分される。

(2)事業者は、常時粉じん作業に従事する労働者又は常時粉じん作業に従事する労働者であった者については、じん肺管理区分が管理1である者を除き、いつでも、じん肺健康診断を行って、都道府県労働局長にじん肺管理区分を決定すべきことを申請することができる。

(3)事業者は、じん肺管理区分が管理3ロである労働者が現に粉じん作業に従事しているときは、粉じん作業に従事する作業時間の短縮、設備、作業工程又は作業方法の改善等の措置を講ずるように努めなければならない。

(4)じん肺管理区分が管理3又は管理4の者に係るじん肺と合併した続発性気管支炎は、じん肺法施行規則に定める合併症の一つであり、当該合併症にかかっている者は療養を要するものとする。

(5)事業者は、合併症により1年を超えて療養のため休業した労働者が、医師により療養のため休業を要しなくなったと診断されたときは、当該労働者に対して、遅滞なく、じん肺健康診断を行わなければならない。

正答(5)

【解説】

(1)誤り。じん肺健康診断の結果によって、じん肺の障害の程度を、管理2、管理3(イ及びロ)又は管理4に区分する基準は、じん肺法第4条第2項に示されている。

エックス線写真の像が第1型で肺機能の障害がないと認められる者のじん肺管理区分は管理2に区分され、エックス線写真の像が第2型、第3型又は第4型で著しい肺機能の障害がないと認められる者は、その障害の程度により管理3(イ及びロ)又は管理4に区分される。従って、本肢は誤りである。

【じん肺法】

(エックス線写真の像及びじん肺管理区分)

第4条 じん肺のエックス線写真の像は、次の表の下欄に掲げるところにより、第一型から第四型までに区分するものとする。

エックス線写真の像
第一型 両肺野にじん肺による粒状影又は不整形陰影が少数あり、かつ、大陰影がないと認められるもの
第二型 両肺野にじん肺による粒状影又は不整形陰影が多数あり、かつ、大陰影がないと認められるもの
第三型 両肺野にじん肺による粒状影又は不整形陰影が極めて多数あり、かつ、大陰影がないと認められるもの
第四型 大陰影があると認められるもの

 粉じん作業に従事する労働者及び粉じん作業に従事する労働者であつた者は、じん肺健康診断の結果に基づき、次の表の下欄に掲げるところにより、管理一から管理四までに区分して、この法律の規定により、健康管理を行うものとする。

じん肺管理区分 じん肺健康診断の結果
管理一 じん肺の所見がないと認められるもの
管理二 エックス線写真の像が第一型で、じん肺による著しい肺機能の障害がないと認められるもの
管理三 エックス線写真の像が第二型で、じん肺による著しい肺機能の障害がないと認められるもの
エックス線写真の像が第三型又は第四型(大陰影の大きさが一側の肺野の三分の一以下のものに限る。)で、じん肺による著しい肺機能の障害がないと認められるもの
管理四

(1)エックス線写真の像が第四型(大陰影の大きさが一側の肺野の三分の一を超えるものに限る。)と認められるもの

(2)エックス線写真の像が第一型、第二型、第三型又は第四型(大陰影の大きさが一側の肺野の三分の一以下のものに限る。)で、じん肺による著しい肺機能の障害があると認められるもの

(2)誤り。常時粉じん作業に従事する労働者又は常時粉じん作業に従事する労働者であった者は、じん肺管理区分にかかわらず、いつでも、じん肺健康診断を受けて、都道府県労働局長にじん肺管理区分を決定すべきことを申請することができる。本肢は、申請の主体を事業者としていること、管理区分1の者を除くとしていることが誤りである。

そもそも、管理区分の決定は都道府県労働局長が行うのであるから、申請の前に管理区分が分かっているわけがなかろう。本肢は「じん肺管理区分が管理1である者を除き」と書かれているところを読んだときに、すぐ変だと気付かなければならない。

【じん肺法】

(随時申請)

第15条 常時粉じん作業に従事する労働者又は常時粉じん作業に従事する労働者であった者は、いつでも、じん肺健康診断を受けて、厚生労働省令で定めるところにより、都道府県労働局長にじん肺管理区分を決定すべきことを申請することができる。

2及び3 (略)

(3)誤り。事業者は、じん肺法第 21 条第2項の規定により、じん肺管理区分が管理3ロである労働者が現に粉じん作業に従事しているときは、当該労働者を粉じん作業以外の作業に常時従事させることとするように努めなければならない。従って本肢は誤りである。

なお、粉じん作業に従事する作業時間の短縮、設備、作業工程又は作業方法の改善等の措置を講ずるように努めなければならないのは、同法第20条の3により、じん肺管理区分が管理二又は管理三イである労働者についてである。

【じん肺法】

(粉じんにさらされる程度を低減させるための措置)

第20条の3 事業者は、じん肺管理区分が管理二又は管理三イである労働者について、粉じんにさらされる程度を低減させるため、就業場所の変更、粉じん作業に従事する作業時間の短縮その他の適切な措置を講ずるように努めなければならない。

(作業の転換)

第21条 (略)

 事業者は、前項の規定による勧奨を受けたとき、又はじん肺管理区分が管理三ロである労働者が現に常時粉じん作業に従事しているときは、当該労働者を粉じん作業以外の作業に常時従事させることとするように努めなければならない。

3及び4 (略)

(4)誤り。合併症は、じん肺則第1条により、じん肺管理区分が管理2又は管理3と決定された者に係るじん肺と合併した続発性気管支炎などの疾病とされている。管理3又は管理4と決定された者に係る疾病ではない。従って本肢は誤りである。

なお、続発性気管支炎は、じん肺則第1条に定める合併症の一つであり、じん肺法第 23 条により当該合併症にかかっている者は療養を要するものとするとされている。じん肺の合併症は、すべて覚えておかなければならない。

【じん肺法】

(定義)

第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

 (略)

 合併症 じん肺と合併した肺結核その他のじん肺の進展経過に応じてじん肺と密接な関係があると認められる疾病をいう。

三~五 (略)

 合併症の範囲については、厚生労働省令で定める。

 (略)

【じん肺法施行規則】

(合併症)

第1条 じん肺法(以下「法」という。)第2条第1項第二号の合併症は、じん肺管理区分が管理二又は管理三と決定された者に係るじん肺と合併した次に掲げる疾病とする。

 肺結核

 結核性胸膜炎

 続発性気管支炎

 続発性気管支拡張症

 続発性気胸

 原発性肺がん

(5)正しい。じん肺法第9条第1項第2号の規定により正しい。

【じん肺法】

(定期外健康診断)

第9条 事業者は、次の各号の場合には、当該労働者に対して、遅滞なく、じん肺健康診断を行わなければならない。

 (略)

 合併症により1年を超えて療養のため休業した労働者が、医師により療養のため休業を要しなくなったと診断されたとき。

 (略)

 (略)

2018年10月20日執筆 2024年11月17日最終改訂