労働衛生コンサルタント試験 2018年 労働衛生関係法令 問01

事業場の安全衛生管理体制




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 このページは、2018年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2018年度(平成30年度) 問01 難易度 やや細かい内容と基本的な内容とが含まれている。難問の部類だが、正答しておきたい問題である。
労働安全衛生管理体制

問1 事業場の安全衛生管理体制に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、正しいものはどれか。

(1)常時使用する労働者数が300人の各種商品小売業の事業場では、その事業の実施を統括管理する者又はこれに準ずる者のうちから総括安全衛生管理者を選任し、労働災害を防止するために必要な業務を統括管理させなければならない。

(2)建設業に属する事業を行う元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者が同一の場所において圧気工法による作業を行う仕事に従事する場合は、これらの労働者の数が50人未満であるときを除き、統括安全衛生責任者を選任しなければならない。

(3)常時使用する労働者数が400人で、塩酸、硫酸等の蒸気又はガスを発散する場所における業務に30人の労働者が従事している事業場では、衛生管理者を2人以上選任し、そのうち少なくとも1人を専任の衛生管理者としなければならない。

(4)ずい道等の建設の仕事で、通路として用いる深さが50メートル以上となるたて坑の掘削を伴うものを行う事業者は、爆発、火災等が生じたことに伴い労働者の救護に関する措置がとられる場合における労働災害の発生を防止するために講じる措置のうち技術的事項を管理する者を選任しなければならない。

(5)産業医による作業場等の定期巡視については、衛生委員会又は安全衛生委員会を開催した都度作成する議事概要を、毎月1回以上、事業者が産業医に提供している場合であって、事業者の同意を得ているときは、2か月に1回の巡視とすることができる。

正答(4)

【解説】

(1)誤り。安衛法第 10 条第2項により、総括安全衛生管理者は、その事業場においてその事業の実施を統括管理する者を充てなければならない。「その事業の実施を統括管理する者又はこれに準ずる者のうちから」充てなければならないとしている本肢は誤りである。要は、事業場の安全衛生については、トップが責任を持てということである。

ここで、安衛法第 18 条第2項(第一号)及び第4項(同第17条第3項)が衛生委員会の議長を「当該事業場においてその事業の実施を統括管理するもの若しくはこれに準ずる者」としていることと混同しないこと。なお、安全委員会について同第 17 条、安全衛生委員会について同第 19 条に同様な規定がある。

一方、各種商品小売業の事業は、安衛令第2条第二号の事業である。従って、常時使用する労働者数が300人の各種商品小売業の事業場では、その事業総括安全衛生管理者を選任しなければならないとしているのは正しい。

【労働安全衛生法】

(総括安全衛生管理者)

第10条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、総括安全衛生管理者を選任し、その者に安全管理者、衛生管理者又は第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者の指揮をさせるとともに、次の業務を統括管理させなければならない。

一~五 (略)

 総括安全衛生管理者は、当該事業場においてその事業の実施を統括管理する者をもって充てなければならない。

 (以下略)

【労働安全衛生法施行令】

(総括安全衛生管理者を選任すべき事業場)

第2条 労働安全衛生法(以下「法」という。)第十条第一項の政令で定める規模の事業場は、次の各号に掲げる業種の区分に応じ、常時当該各号に掲げる数以上の労働者を使用する事業場とする。

 林業、鉱業、建設業、運送業及び清掃業 百人

 製造業(物の加工業を含む。)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゆう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゆう器小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業及び機械修理業 三百人

 その他の業種 千人

(2)誤り。圧気工法による作業を行う仕事は、安衛令第7条第2項第1号に該当する。従って、その労働者及び関係請負人の労働者が30人以上の場合は、統括安全衛生責任者を選任しなければならない。従って、これらの労働者の数が50人未満であるときを除くとする本肢は誤りである。

なお、「表で見る労働安全衛生管理体制」の「6 統括安全衛生責任者等」の表を参照されたい。

【労働安全衛生法】

(統括安全衛生責任者)

第15条 事業者で、一の場所において行う事業の仕事の一部を請負人に請け負わせているもの(当該事業の仕事の一部を請け負わせる契約が二以上あるため、その者が二以上あることとなるときは、当該請負契約のうちの最も先次の請負契約における注文者とする。以下「元方事業者」という。)のうち、建設業その他政令で定める業種に属する事業(以下「特定事業」という。)を行う者(以下「特定元方事業者」という。)は、その労働者及びその請負人(元方事業者の当該事業の仕事が数次の請負契約によって行われるときは、当該請負人の請負契約の後次のすべての請負契約の当事者である請負人を含む。以下「関係請負人」という。)の労働者が当該場所において作業を行うときは、これらの労働者の作業が同一の場所において行われることによって生ずる労働災害を防止するため、統括安全衛生責任者を選任し、その者に元方安全衛生管理者の指揮をさせるとともに、第30条第1項各号の事項を統括管理させなければならない。ただし、これらの労働者の数が政令で定める数未満であるときは、この限りでない。

2~5 (略)

【労働安全衛生法施行令】

(統括安全衛生責任者を選任すべき業種等)

第7条 (略)

 法第15条第1項ただし書及び第3項の政令で定める労働者の数は、次の各号に掲げる仕事の区分に応じ、当該各号に定める数とする。

 ずい道等の建設の仕事、橋りょうの建設の仕事(作業場所が狭いこと等により安全な作業の遂行が損なわれるおそれのある場所として厚生労働省令で定める場所において行われるものに限る。)又は圧気工法による作業を行う仕事 常時30人

 前号に掲げる仕事以外の仕事 常時50人

(3)誤り。本肢の事業場は、常時使用する労働者数が 400 人であるから安衛則第7条第1項第4号の規定により2人以上の衛生管理者を選任しなければならないことは正しい。

一方、塩酸、硫酸等の蒸気又はガスを発散する場所における業務は労基則第 18 条第九号の業務であり、その業務に 30 人の労働者が従事しているものの、事業場全体では常時 500 人を超える労働者を使用していない。そのため、安衛則第7条第1項第五号の適用はなく、少なくとも1人を専任の衛生管理者とする安衛法上の義務はない。

【労働安全衛生法】

(衛生管理者)

第12条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、都道府県労働局長の免許を受けた者その他厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該事業場の業務の区分に応じて、衛生管理者を選任し(中略)なければならない。

 (略)

【労働安全衛生法施行令】

(衛生管理者を選任すべき事業場)

第4条 法第12条第1項の政令で定める規模の事業場は、常時50人以上の労働者を使用する事業場とする。

【労働安全衛生規則】

(衛生管理者の選任)

第7条 法第12条第1項の規定による衛生管理者の選任は、次に定めるところにより行わなければならない。

一~三 (略)

 次の表の上欄に掲げる事業場の規模に応じて、同表の下欄に掲げる数以上の衛生管理者を選任すること。

事業場の規模
(常時使用する労働者数)
衛生管理者数
50人以上200以下 1人
200人を超え500人以下 2人
500人を超え1,000人以下 3人
1,000人を超え2,000人以下 4人
2,000人を超え3,000人以下 5人
3,000人を超える場合 6人

 次に掲げる事業場にあつては、衛生管理者のうち少なくとも1人を専任の衛生管理者とすること。

 常時1,000人を超える労働者を使用する事業場

 常時500人を超える労働者を使用する事業場で、坑内労働又は労働基準法施行規則(略)第18条各号に掲げる業務に常時30人以上の労働者を従事させるもの

 (略)

 (略)

【労働基準法施行規則】

第18条 法第36条第6項第一号の厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務は、次に掲げるものとする。

 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務

 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務

 ラジウム放射線、エックス線その他の有害放射線にさらされる業務

 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務

 異常気圧下における業務

 削岩機、鋲打機等の使用によって身体に著しい振動を与える業務

 重量物の取扱い等重激なる業務

 ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務

 鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリン、その他これに準ずる有害物の粉じん、蒸気又はガスを発散する場所における業務

 前各号のほか、厚生労働大臣の指定する業務

(4)正しい。安衛法第 25 条の2及び安衛令第9条の2により正しい。しかし、かなり細かいことを問うているような気がする。

【労働安全衛生法】

第25条の2 建設業その他政令で定める業種に属する事業の仕事で、政令で定めるものを行う事業者は、爆発、火災等が生じたことに伴い労働者の救護に関する措置がとられる場合における労働災害の発生を防止するため、次の措置を講じなければならない。

一~三 (略)

 前項に規定する事業者は、厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、同項各号の措置のうち技術的事項を管理する者を選任し、その者に当該技術的事項を管理させなければならない。

【労働安全衛生法施行令】

(法第25条の2第1項の政令で定める仕事)

第9条の2 法第25条の2第1項の政令で定める仕事は、次のとおりとする。

 ずい道等の建設の仕事で、出入口からの距離が1,000メートル以上の場所において作業を行うこととなるもの及び深さが50メートル以上となるたて坑(通路として用いられるものに限る。)の掘削を伴うもの

 (略)

(5)誤り。安衛則第 15 条に関する設問である。産業医の職場巡視を2月に1回に緩和するための条件として産業医に提供するべき情報は、本肢にいう「衛生委員会又は安全衛生委員会を開催した都度作成する議事概要」ではない。「第11条第1項の規定により衛生管理者が行う巡視の結果」や「労働者の健康障害を防止し、又は労働者の健康を保持するために必要な情報であって、衛生委員会又は安全衛生委員会における調査審議を経て事業者が産業医に提供することとしたもの」である。

【労働安全衛生規則】

(産業医の定期巡視及び権限の付与)

第15条 産業医は、少なくとも毎月1回(産業医が、事業者から、毎月1回以上、次に掲げる情報の提供を受けている場合であって、事業者の同意を得ているときは、少なくとも2月に1回)作業場等を巡視し、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。

 第11条第1項の規定により衛生管理者が行う巡視の結果

 前号に掲げるもののほか、労働者の健康障害を防止し、又は労働者の健康を保持するために必要な情報であって、衛生委員会又は安全衛生委員会における調査審議を経て事業者が産業医に提供することとしたもの

2018年10月20日執筆 2024年11月17日最終改訂