問14 加齢による生理機能などの変化に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)体温調節機能が低下し、熱中症が起こりやすくなる。
(2)体力測定値のうち、20歳代を基準として60歳代の低下率の大きいものの例には、閉眼片足立ちや垂直跳びが挙げられる。
(3)加齢に伴って検査値が変動しないものには、ヘモグロビン量がある。
(4)筋力については、60~70歳でもトレーニング効果がある。
(5)騒音性難聴が、4,000Hzの周波数から特異的に低下するのに対し、老人性の難聴では、1,000Hzより高い音域の聴力低下が著しい。
このページは、2018年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2018年度(平成30年度) | 問14 | 難易度 | 加齢による生理機能等の変化に関する知識問題である。難問ではあるが、正答しておきたいところ。 |
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加齢と生理機能の変化 | 5 |
問14 加齢による生理機能などの変化に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)体温調節機能が低下し、熱中症が起こりやすくなる。
(2)体力測定値のうち、20歳代を基準として60歳代の低下率の大きいものの例には、閉眼片足立ちや垂直跳びが挙げられる。
(3)加齢に伴って検査値が変動しないものには、ヘモグロビン量がある。
(4)筋力については、60~70歳でもトレーニング効果がある。
(5)騒音性難聴が、4,000Hzの周波数から特異的に低下するのに対し、老人性の難聴では、1,000Hzより高い音域の聴力低下が著しい。
正答(3)
【解説】
(1)正しい。加齢により一般健康人はほぼ30歳以降、心血管機能、呼吸機能、代謝、筋肉機能が毎年0~2%程減少するといわれる。体温調節機能は統合的な能力であり、年齢と共に低下する。従って本肢は正しい。
ただし、体温調節機能低下は年齢が要因ではなく、加齢に付随する有酸素運動能低下や体脂肪率増加が主な要因という説がある。
(2)正しい。これは解説するまでもないだろう。閉眼片足立ちや垂直跳びは、一般に加齢とともに著しく能力が減少する。一例として、樋口雅俊他「日本人の体力測定結果に関する考察」(2008年)によれば、20歳代に比較した年齢による低下傾向を見ると、握力、全身反応時間、垂直跳び、閉眼片足立ちの順であったとされる。従って本肢は正しい。
(3)誤り。ヘモグロビン量の検査値は年齢の影響をそれほど受けない。しかし、加齢に伴ってヘモグロビン(血色素)量の検査値が変動しないかと言われれば、まったく変動しないというわけではない。また、貧血の基準(ヘモグロビン濃度)は年齢によって異なる。従って本肢は誤りとしてよいだろう。
なお、70歳以降は急速に造血能が低下するといわれ、赤血球数、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値は加齢とともに減少し、MCV(平均赤血球容積)、MCH(平均赤血球血色素量)は増加する。
(4)正しい。高齢者でも適切な負荷の筋力トレーニングを継続することで、筋力増強の効果が得られるといわれている。
丹羽英人他「老人性難聴」(日本老年医学会雑誌:1990年)
図 年代別による純音オージオグラムの変化
(5)正しい。騒音性難聴が4,000Hzの周波数から特異的に低下するのは正しい。これに対し、老人性難聴は高周波域から低下してゆく。40代まではすべての周波数域についてそれほどの低下はない。50代になると、4,000Hzより高い部分の低下が目立ち、60台になると2,000より高い部分の低下が目立つようになる(図参照)。1,000Hzより高い音域の聴力低下が著しいかどうかは、評価の仕方によろうが、(3)が誤っているとすれば本肢は正しいのであろう。
【本肢に対する疑問点】
しかし、老人性難聴が1,000Hzより高い音域で著しいかと言われれば評価の仕方にもよろう。その意味でやや疑問を感じる。