問04 電離放射線の健康影響及び労働衛生管理に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)白内障は、電離放射線による確定的影響の一つで、かつ晩発影響でもある。
(2)脳は、放射線感受性が低い臓器である。
(3)外部被ばくの防護では、放射線源の隔離、遮へい及び作業管理が基本となる。
(4)内部被ばくとは、呼吸や皮膚などを介して放射性物質が体内に入り込み、被ばくすることである。
(5)実効線量は、吸収線量に、放射線の種類やエネルギーに応じて定められた放射線加重係数を乗じたものである。
このページは、2018年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
他の問題の解説をご覧になる場合は、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」か「パンくずリスト」をご利用ください。
柳川に著作権があることにご留意ください。
2018年度(平成30年度) | 問04 | 難易度 | やや高度な知識問題である。過去問で対応可能な範囲である。できれば正答しておきたい問題。 |
---|---|---|---|
電離放射線 | 4 |
問04 電離放射線の健康影響及び労働衛生管理に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)白内障は、電離放射線による確定的影響の一つで、かつ晩発影響でもある。
(2)脳は、放射線感受性が低い臓器である。
(3)外部被ばくの防護では、放射線源の隔離、遮へい及び作業管理が基本となる。
(4)内部被ばくとは、呼吸や皮膚などを介して放射性物質が体内に入り込み、被ばくすることである。
(5)実効線量は、吸収線量に、放射線の種類やエネルギーに応じて定められた放射線加重係数を乗じたものである。
正答(5)
【解説】
(1)正しい。電離放射線による健康への影響は、確定的影響と確率的影響に分けられる。確定的影響では、線量が大きいほど障害の程度が重篤となり、しきい値がある。一方、確率的影響では、線量が大きいほど障害に罹患する確率が高くなり、しきい値がないと考えられている。
また、被爆から発症までが数週間までのものを急性影響と呼び、数か月以上のものを晩発性影響と呼ぶ。電離放射線による晩発性影響は確率的影響であることが多いが例外もある。
例外の一つが本肢で問われている白内障である。白内障は、晩発性影響ではあるが、放射線白内障の重篤度や潜伏期間の長さ、進行の速さは、被ばく線量に依存するとされており、確定的影響なのである。従って、本肢は正しい。
受験対策としては、急性影響、白内障及び不妊が確定的影響であると覚えておけばよい。
(2)正しい。ベルゴニー・トリボンドの法則によれば、細胞分裂頻度が高く、将来、細胞分裂の回数が大きく、形態及び機能的に未分化である組織は、放射線感受性が高いとされる。すなわち、脳や神経組織のような(小児期を除けば)ほとんど細胞分裂しない組織は放射線感受性が低い組織である。従って本肢は正しい。
(3)正しい。本肢は当然のことを言っている。一般に、「放射線防護の3原則」といえば、時間(Time)、遮蔽(Shield)、距離(Distance)をいう。このうち、時間と距離は、職業ばく露においては「作業管理」に関する事項である。従って、本肢は正しい。
(4)正しい。内部被ばくとは、呼吸や皮膚などを介して放射性物質が体内に入り込み、被ばくすることである。
(5)誤り。本肢の説明は、“やエネルギー”の部分を削除すると等価線量の説明となる。実効線量は、等価線量に組織別に定められた組織加重係数を乗じて合計したものである。