問12 有機溶剤中毒予防規則に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)有機溶剤含有物とは、有機溶剤と有機溶剤以外の物との混合物で、有機溶剤を当該混合物の重量の5パーセントを超えて含有するものをいう。
(2)タンク等の内部において有機溶剤業務に労働者を従事させる場合において、当該場所における有機溶剤業務に要する時間が短時間であり、かつ、有機ガス用防毒マスクを備えたときは、局所排気装置等の有機溶剤の蒸気の発散抑制の設備を設けないことができる。
(3)第二種有機溶剤等が付着している物の乾燥の業務を行う屋内作業場に設ける囲い式フードを有する局所排気装置は、原則として、0.4メートル / 秒の制御風速を出し得る能力を有するものでなければならない。
(4)有機溶剤作業主任者の職務には、局所排気装置、プッシュプル型換気装置又は全体換気装置を1か月を超えない期間ごとに点検することが含まれている。
(5)有機溶剤等健康診断の結果に基づき、有機溶剤等健康診断個人票を作成し、これを5年間保存しなければならない。
このページは、2017年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。
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2017年度(平成29年度) | 問12 | 難易度 | 有機溶剤中毒予防規則に関するやや詳細な知識問題である。確実に正答できなければならない問題。 |
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有機溶剤中毒予防規則 | 3 |
問12 有機溶剤中毒予防規則に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)有機溶剤含有物とは、有機溶剤と有機溶剤以外の物との混合物で、有機溶剤を当該混合物の重量の5パーセントを超えて含有するものをいう。
(2)タンク等の内部において有機溶剤業務に労働者を従事させる場合において、当該場所における有機溶剤業務に要する時間が短時間であり、かつ、有機ガス用防毒マスクを備えたときは、局所排気装置等の有機溶剤の蒸気の発散抑制の設備を設けないことができる。
(3)第二種有機溶剤等が付着している物の乾燥の業務を行う屋内作業場に設ける囲い式フードを有する局所排気装置は、原則として、0.4メートル / 秒の制御風速を出し得る能力を有するものでなければならない。
(4)有機溶剤作業主任者の職務には、局所排気装置、プッシュプル型換気装置又は全体換気装置を1か月を超えない期間ごとに点検することが含まれている。
(5)有機溶剤等健康診断の結果に基づき、有機溶剤等健康診断個人票を作成し、これを5年間保存しなければならない。
正答(2)
【解説】
(1)正しい。有機則第1条第1項第2号により、有機溶剤含有物とは、「有機溶剤と有機溶剤以外の物との混合物で、有機溶剤を当該混合物の重量の五パーセントを超えて含有するものをいう」とされている。
なお、純粋な有機溶剤は、法律的には「有機溶剤含有物」の概念に含まれないことに留意すること。
【有機溶剤中毒予防規則】
(定義等)
第1条 この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 (略)
二 有機溶剤等 有機溶剤又は有機溶剤含有物(有機溶剤と有機溶剤以外の物との混合物で、有機溶剤を当該混合物の重量の五パーセントを超えて含有するものをいう。第六号において同じ。)をいう。
三~六 (略)
2 (略)
(2)誤り。有機則第9条第2項は、「事業者は、タンク等の内部において有機溶剤業務に労働者を従事させる場合において、当該場所における有機溶剤業務に要する時間が短時間であり、かつ、送気マスクを備えたときは、第5条又は第6条の規定にかかわらず、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置、プッシュプル型換気装置及び全体換気装置を設けないことができる」としている。備えなければならないのは送気マスクであって、「有機ガス用防毒マスク」ではない。
なお、学習の初期にある受験者は、臨時の業務と短時間の業務を混同しないようにしなければならない。
【有機溶剤中毒予防規則】
(短時間有機溶剤業務を行う場合の設備の特例)
第9条 (略)
2 事業者は、タンク等の内部において有機溶剤業務に労働者を従事させる場合において、当該場所における有機溶剤業務に要する時間が短時間であり、かつ、送気マスクを備えたときは、第五条又は第六条の規定にかかわらず、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置、プッシュプル型換気装置及び全体換気装置を設けないことができる。
(3)正しい。有機則第16条第1項は、次に示すように、囲い式フードの場合の制御風速は原則として0.4[m/s]必要であり、かつそれで足りるとしている。
なお、同第2項は例外措置を認めるが、第1号はタンク等の内部で第三種有機溶剤業務を行う場合であり、第2号は、タンク等の内部における臨時の業務(第8条第2項)、タンク等の内部以外の場所における短時間の業務(第9条第1項)、及び、他の屋内作業場から隔離されている労働者が常時立ち入る必要がない有機溶剤業務を行うための設備が常置された屋内作業場における業務(第11条)で、それぞれ全体換気装置を設けた場合である。いずれも本肢の業務は含まれないと考えられ、含まれたとしても、本肢に「原則として」とあることから、誤っているとは言えない。
【有機溶剤中毒予防規則】
(局所排気装置の性能)
第16条 局所排気装置は、次の表の上欄に掲げる型式に応じて、それぞれ同表の下欄に掲げる制御風速を出し得る能力を有するものでなければならない。
型式 | 制御風速(メートル/秒) | |
---|---|---|
囲い式フード | 〇・四 | |
外付け式フード | 側方吸引型 | 〇・五 |
下方吸引型 | 〇・五 | |
上方吸引型 | 一・〇 | |
備考 一 この表における制御風速は、局所排気装置のすべてのフードを開放した場合の制御風速をいう。 二 この表における制御風速は、フードの型式に応じて、それぞれ次に掲げる風速をいう。 イ 囲い式フードにあっては、フードの開口面における最小風速 ロ 外付け式フードにあっては、当該フードにより有機溶剤の蒸気を吸引しようとする範囲内における当該フードの開口面から最も離れた作業位置の風速 |
2 前項の規定にかかわらず、次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該局所排気装置は、その換気量を、発散する有機溶剤等の区分に応じて、それぞれ第十七条に規定する全体換気装置の換気量に等しくなるまで下げた場合の制御風速を出し得る能力を有すれば足りる。
一 第六条第一項の規定により局所排気装置を設けた場合
二 第八条第二項、第九条第一項又は第十一条の規定に該当し、全体換気装置を設けることにより有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備及び局所排気装置を設けることを要しないとされる場合で、局所排気装置を設けたとき。
(4)正しい。有機溶剤作業主任者の職務は有機則第19条の2に定められており、本肢の業務は第2号に含まれている。
【有機溶剤中毒予防規則】
(有機溶剤作業主任者の職務)
第19条の2 事業者は、有機溶剤作業主任者に次の事項を行わせなければならない。
一 作業に従事する労働者が有機溶剤により汚染され、又はこれを吸入しないように、作業の方法を決定し、労働者を指揮すること。
二 局所排気装置、プッシュプル型換気装置又は全体換気装置を一月を超えない期間ごとに点検すること。
三 保護具の使用状況を監視すること。
四 タンクの内部において有機溶剤業務に労働者が従事するときは、第二十六条各号に定める措置が講じられていることを確認すること。
(5)正しい。有機則第30条の規定による。
【有機溶剤中毒予防規則】
(健康診断の結果)
第30条 事業者は、前条第2項、第3項又は第5項の健康診断(法第66条第5項ただし書の場合における当該労働者が受けた健康診断を含む。次条において「有機溶剤等健康診断」という。)の結果に基づき、有機溶剤等健康診断個人票(様式第3号)を作成し、これを5年間保存しなければならない。