問9 衛生基準に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、誤っているものはどれか。
(1)事業者は、夜間に労働者に睡眠を与える必要のあるときは、適当な睡眠又は仮眠の場所を、男性用と女性用に区別して設けるとともに、寝具等必要な用品を備えなければならない。
(2)事業者は、男性用大便所の便房の数については、坑内等特殊な作業場でやむを得ない事由がある場合で、適当な数の便所又は便器を備えたときを除き、同時に就業する男性労働者30人以内ごとに1個以上設けなければならない。
(3)事業者は、坑内の作業場における炭酸ガス濃度については、空気呼吸器、酸素呼吸器又はホースマスクを使用して人命救助又は危害防止に関する作業をさせるときを除き、1.5パーセント以下としなければならない。
(4)事業者は、坑内における気温については、高温による健康障害を防止するための必要な措置を講じて人命救助又は危害防止に関する作業をさせるときを除き、37度以下としなければならない。
(5)事業者は、労働者の被服が著しく湿潤する作業場においては、被服の乾燥設備を設けなければならない。
このページは、2017年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2017年度(平成29年度) | 問09 | 難易度 | 安衛法上の衛生基準全般に関する知識問題。かなり細かな内容を聞いている。難問の部類だろう。 |
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安衛法令上の衛生基準 | 5 |
問9 衛生基準に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、誤っているものはどれか。
(1)事業者は、夜間に労働者に睡眠を与える必要のあるときは、適当な睡眠又は仮眠の場所を、男性用と女性用に区別して設けるとともに、寝具等必要な用品を備えなければならない。
(2)事業者は、男性用大便所の便房の数については、坑内等特殊な作業場でやむを得ない事由がある場合で、適当な数の便所又は便器を備えたときを除き、同時に就業する男性労働者30人以内ごとに1個以上設けなければならない。
(3)事業者は、坑内の作業場における炭酸ガス濃度については、空気呼吸器、酸素呼吸器又はホースマスクを使用して人命救助又は危害防止に関する作業をさせるときを除き、1.5パーセント以下としなければならない。
(4)事業者は、坑内における気温については、高温による健康障害を防止するための必要な措置を講じて人命救助又は危害防止に関する作業をさせるときを除き、37度以下としなければならない。
(5)事業者は、労働者の被服が著しく湿潤する作業場においては、被服の乾燥設備を設けなければならない。
正答(2)
【解説】
(1)正しい。安衛則第616条第1項は「事業者は、夜間に労働者に睡眠を与える必要のあるとき、又は労働者が就業の途中に仮眠することのできる機会があるときは、適当な睡眠又は仮眠の場所を、男性用と女性用に区別して設けなければならない」と定める。そして、同条第2項は「事業者は、前項の場所には、寝具、かやその他必要な用品を備え、かつ、疾病感染を予防する措置を講じなければならない」と定める。
【労働安全衛生規則】
(睡眠及び仮眠の設備)
第616条 事業者は、夜間に労働者に睡眠を与える必要のあるとき、又は労働者が就業の途中に仮眠することのできる機会があるときは、適当な睡眠又は仮眠の場所を、男性用と女性用に区別して設けなければならない。
2 (略)
(2)誤り。安衛則第628条(第2号)は、坑内等特殊な作業場でやむを得ない事由がある場合で、適当な数の便所又は便器を備えたときを除き、男性用大便所の便房の数は、原則として同時に就業する男性労働者60人以内ごとに1個以上とすることと定める。
なお、同時に就業する男性労働者30人以内ごとに原則として1個以上としなければならないのは、男性用小便所の箇所数である。
ところで、なぜか試験協会はトイレの数に関する知識が重要と信じているらしく、衛生管理者試験でもトイレの数は頻出事項である。実務においてそれほど重要とも思えないが、試験のためには覚えておいた方がよさそうだ。
【労働安全衛生規則】
(便所)
第628条 事業者は、次に定めるところにより便所を設けなければならない。ただし、坑内等特殊な作業場でこれによることができないやむを得ない事由がある場合で、適当な数の便所又は便器を備えたときは、この限りでない。
一 男性用と女性用に区別すること。
二 男性用大便所の便房の数は、次の表の上欄に掲げる同時に就業する男性労働者の数に応じて、同表の下欄に掲げる数以上とすること。
同時に就業する男性労働者の数 | 便房の数 |
---|---|
六十人以内 | 一 |
六十人超 | 一に、同時に就業する男性労働者の数が六十人を超える六十人又はその端数を増すごとに一を加えた数 |
三 男性用小便所の箇所数は、次の表の上欄に掲げる同時に就業する男性労働者の数に応じて、同表の下欄に掲げる数以上とすること。
同時に就業する男性労働者の数 | 箇所数 |
---|---|
三十人以内 | 一 |
三十人超 | 一に、同時に就業する男性労働者の数が三十人を超える三十人又はその端数を増すごとに一を加えた数 |
四 女性用便所の便房の数は、次の表の上欄に掲げる同時に就業する女性労働者の数に応じて、同表の下欄に掲げる数以上とすること。
同時に就業する女性労働者の数 | 便房の数 |
---|---|
二十人以内 | 一 |
二十人超 | 一に、同時に就業する女性労働者の数が二十人を超える二十人又はその端数を増すごとに一を加えた数 |
五 (略)
六 流出する清浄な水を十分に供給する手洗い設備を設けること。
2 (略)
(独立個室型の便所の特例)
第628条の2 前条第一項第一号から第四号までの規定にかかわらず、同時に就業する労働者の数が常時十人以内である場合は、男性用と女性用に区別しない四方を壁等で囲まれた一個の便房により構成される便所(次項において「独立個室型の便所」という。)を設けることで足りるものとする。
2 前条第一項の規定にかかわらず、独立個室型の便所を設ける場合(前項の規定により独立個室型の便所を設ける場合を除く。)は、次に定めるところにより便所を設けなければならない。
一 独立個室型の便所を除き、男性用と女性用に区別すること。
二 男性用大便所の便房の数は、次の表の上欄に掲げる同時に就業する男性労働者の数に応じて、同表の下欄に掲げる数以上とすること。
同時に就業する男性労働者の数 | 便房の数 |
---|---|
設ける独立個室型の便所の数に十を乗じて得た数以下 | 一 |
設ける独立個室型の便所の数に十を乗じて得た数を超える数 | 一に、設ける独立個室型の便所の数に十を乗じて得た数を同時に就業する男性労働者の数が三十人を超える三十人又はその端数を増すごとに一を加えた数 |
三 男性用小便所の箇所数は、次の表の上欄に掲げる同時に就業する男性労働者の数に応じて、同表の下欄に掲げる数以上とすること。
同時に就業する男性労働者の数 | 箇所数 |
---|---|
設ける独立個室型の便所の数に十を乗じて得た数以下 | 一 |
設ける独立個室型の便所の数に十を乗じて得た数を超える数 | 一に、設ける独立個室型の便所の数に十を乗じて得た数を同時に就業する男性労働者の数が三十人を超える三十人又はその端数を増すごとに一を加えた数 |
四 女性用便所の便房の数は、次の表の上欄に掲げる同時に就業する女性労働者の数に応じて、同表の下欄に掲げる数以上とすること。
同時に就業する女性労働者の数 | 箇所数 |
---|---|
設ける独立個室型の便所の数に十を乗じて得た数以下 | 一 |
設ける独立個室型の便所の数に十を乗じて得た数を超える数 | 一に、設ける独立個室型の便所の数に十を乗じて得た数を同時に就業する女性労働者の数が二十人を超える二十人又はその端数を増すごとに一を加えた数 |
五及び六 (略)
2 (略)
(3)正しい。安衛則583条は「事業者は、坑内の作業場における炭酸ガス濃度を、1.5%以下としなければならない。ただし、空気呼吸器、酸素呼吸器又はホースマスクを使用して、人命救助又は危害防止に関する作業をさせるときは、この限りでない」と定める。従って本肢は正しい。
【労働安全衛生規則】
(坑内の炭酸ガス濃度の基準)
第583条 事業者は、坑内の作業場における炭酸ガス濃度を、一・五パーセント以下としなければならない。ただし、空気呼吸器、酸素呼吸器又はホースマスクを使用して、人命救助又は危害防止に関する作業をさせるときは、この限りでない。
(4)正しい。安衛則第611条は「事業者は、坑内における気温を三十七度以下としなければならない。ただし、高温による健康障害を防止するため必要な措置を講じて人命救助又は危害防止に関する作業をさせるときは、この限りでない」とする。
【労働安全衛生規則】
(坑内の気温)
第611条 事業者は、坑内における気温を三十七度以下としなければならない。ただし、高温による健康障害を防止するため必要な措置を講じて人命救助又は危害防止に関する作業をさせるときは、この限りでない。
(5)正しい。安衛則第626条は「事業者は、労働者の被服が著しく湿潤する作業場においては、被服の乾燥設備を設けなければならない」とする。
【労働安全衛生規則】
(被服の乾燥設備)
第626条 事業者は、労働者の被服が著しく湿潤する作業場においては、被服の乾燥設備を設けなければならない。