問3 粉じん作業に従事する労働者のじん肺健康診断等に関する次の記述のうち、じん肺法令上、正しいものはどれか。
(1)事業者は、新たに常時粉じん作業に従事することとなった労働者で、当該作業に従事することとなった日前1年以内にじん肺健康診断を受けて、じん肺管理区分が管理2と決定されているものについては、就業時のじん肺健康診断を行わなくてもよい。
(2)事業者は、常時粉じん作業に従事する労働者で、じん肺管理区分が管理1又は管理2であるものについては、3年以内ごとに1回、定期的に、じん肺健康診断を行わなければならない。
(3)事業者は、常時粉じん作業に従事してきた労働者で、離職の日の6か月前のじん肺健康診断によるじん肺管理区分が管理2のものが、離職時のじん肺健康診断を行うように求めたときは、離職の日までの使用期間が3年未満である労働者を除き、離職の際にじん肺健康診断を行わなければならない。
(4)粉じん作業に従事する労働者のじん肺健康診断の結果、エックス線写真像における大陰影が肺野の3分の1以下で、じん肺による著しい肺機能の障害があると認められる者は管理3イに区分され、当該労働者については粉じん作業に従事する時間の短縮等適切な措置を講ずる必要がある。
(5)事業者は、現に常時粉じん作業に従事している管理3ロの労働者が、都道府県労働局長の作業転換の指示により、粉じん作業以外の作業に常時従事することとなったときは、労働基準法に規定する平均賃金の30日分の転換手当を支払わなければならない。
このページは、2017年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。
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2017年度(平成29年度) | 問03 | 難易度 | じん肺健康診断等に関する基本的知識問題。合否を分けるレベルだろう。正答できなければならない。 |
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じん肺健康診断等 | 3 |
問3 粉じん作業に従事する労働者のじん肺健康診断等に関する次の記述のうち、じん肺法令上、正しいものはどれか。
(1)事業者は、新たに常時粉じん作業に従事することとなった労働者で、当該作業に従事することとなった日前1年以内にじん肺健康診断を受けて、じん肺管理区分が管理2と決定されているものについては、就業時のじん肺健康診断を行わなくてもよい。
(2)事業者は、常時粉じん作業に従事する労働者で、じん肺管理区分が管理1又は管理2であるものについては、3年以内ごとに1回、定期的に、じん肺健康診断を行わなければならない。
(3)事業者は、常時粉じん作業に従事してきた労働者で、離職の日の6か月前のじん肺健康診断によるじん肺管理区分が管理2のものが、離職時のじん肺健康診断を行うように求めたときは、離職の日までの使用期間が3年未満である労働者を除き、離職の際にじん肺健康診断を行わなければならない。
(4)粉じん作業に従事する労働者のじん肺健康診断の結果、エックス線写真像における大陰影が肺野の3分の1以下で、じん肺による著しい肺機能の障害があると認められる者は管理3イに区分され、当該労働者については粉じん作業に従事する時間の短縮等適切な措置を講ずる必要がある。
(5)事業者は、現に常時粉じん作業に従事している管理3ロの労働者が、都道府県労働局長の作業転換の指示により、粉じん作業以外の作業に常時従事することとなったときは、労働基準法に規定する平均賃金の30日分の転換手当を支払わなければならない。
正答(1)
【解説】
本問は、(5)を除けば、いずれも衛生管理者のテキストに載っているレベルの問題である。知識として覚えておかなければならない。
(1)正しい。じん肺法第7条は、「事業者は、新たに常時粉じん作業に従事することとなった労働者(当該作業に従事することとなった日前1年以内にじん肺健康診断を受けて、じん肺管理区分が管理2又は管理3イと決定された労働者その他厚生労働省令で定める労働者を除く。)に対して、その就業の際、じん肺健康診断を行わなければならない」と定めている。
【じん肺法】
(就業時健康診断)
第7条 事業者は、新たに常時粉じん作業に従事することとなつた労働者(当該作業に従事することとなつた日前一年以内にじん肺健康診断を受けて、じん肺管理区分が管理二又は管理三イと決定された労働者その他厚生労働省令で定める労働者を除く。)に対して、その就業の際、じん肺健康診断を行わなければならない。この場合において、当該じん肺健康診断は、厚生労働省令で定めるところにより、その一部を省略することができる。
(2)誤り。じん肺法第8条は管理2であるものに対しては、1年以内ごとに1回健康診断を実施することとされている。
【じん肺法】
(定期健康診断)
第8条 事業者は、次の各号に掲げる労働者に対して、それぞれ当該各号に掲げる期間以内ごとに一回、定期的に、じん肺健康診断を行わなければならない。
一 常時粉じん作業に従事する労働者(次号に掲げる者を除く。) 三年
二 常時粉じん作業に従事する労働者でじん肺管理区分が管理二又は管理三であるもの 一年
三 常時粉じん作業に従事させたことのある労働者で、現に粉じん作業以外の作業に常時従事しているもののうち、じん肺管理区分が管理二である労働者(厚生労働省令で定める労働者を除く。) 三年
四 常時粉じん作業に従事させたことのある労働者で、現に粉じん作業以外の作業に常時従事しているもののうち、じん肺管理区分が管理三である労働者(厚生労働省令で定める労働者を除く。) 一年
2 前条後段の規定は、前項の規定によるじん肺健康診断を行う場合に準用する。
(3)誤り。じん肺法第9条の2第1項本文は、事業者に対し、「次の各号に掲げる労働者で、離職の日まで引き続き厚生労働省令で定める期間を超えて使用していたもの」が、離職の際にじん肺健康診断を行うように求めたときは、じん肺健康診断を行わなければならないと定めている。そして、この厚生労働省令で定める期間について、じん肺則第 12 条は1年としている。本肢は「離職の日までの使用期間が3年未満である労働者を除き」としているところが誤りである。
なお。本条の但し書きは、「当該労働者が直前にじん肺健康診断を受けた日から当該離職の日までの期間が、次の各号に掲げる労働者ごとに、それぞれ当該各号に掲げる期間に満たないときは」その限りではないと定めている。
しかし、本肢の労働者は、「常時粉じん作業に従事してきた」というのであるから、第9条の2第1項の第二号に該当する。そして、離職の日の6か月前にじん肺健康診断を受けているのであるから、この但し書きの要件にはギリギリで該当しないこととなる。
【じん肺法】
(離職時健康診断)
第9条の2 事業者は、次の各号に掲げる労働者で、離職の日まで引き続き厚生労働省令で定める期間を超えて使用していたものが、当該離職の際にじん肺健康診断を行うように求めたときは、当該労働者に対して、じん肺健康診断を行わなければならない。ただし、当該労働者が直前にじん肺健康診断を受けた日から当該離職の日までの期間が、次の各号に掲げる労働者ごとに、それぞれ当該各号に掲げる期間に満たないときは、この限りでない。
一 常時粉じん作業に従事する労働者(次号に掲げる者を除く。) 1年6月
二 常時粉じん作業に従事する労働者でじん肺管理区分が管理二又は管理三であるもの 6月
三 常時粉じん作業に従事させたことのある労働者で、現に粉じん作業以外の作業に常時従事しているもののうち、じん肺管理区分が管理二又は管理三である労働者(厚生労働省令で定める労働者を除く。) 6月
2 (略)
【じん肺法施行規則】
(離職時健康診断)
第12条 法第9条の2第1項の厚生労働省令で定める期間は、1年とする。
(4)誤り。管理3イとは、じん肺法第4条第2項によれば「エックス線写真の像が第二型で、じん肺による著しい肺機能の障害がないと認められるもの」をいうとされている。そして、「エックス線写真の像が第二型」とは、同条第1項により「両肺野にじん肺による粒状影又は不整形陰影が多数あり、かつ、大陰影がないと認められるもの」である。
本肢のように、肺野の3分の1以下の大陰影があり、かつ著しい肺機能障害がなければ管理3ロになる。なお、合併症がない場合で「著しい肺機能障害がある」ときは、エックス線写真の像によらず管理4となる。
なお、管理3イの者に対してであれば、「粉じん作業に従事する時間の短縮等適切な措置を講ずる必要がある」というのは正しい(じん肺法第20条の3)。
【じん肺法】
(エックス線写真の像及びじん肺管理区分)
第4条 じん肺のエックス線写真の像は、次の表の下欄に掲げるところにより、第一型から第四型までに区分するものとする。
型 | エックス線写真の像 |
---|---|
第一型 | 両肺野にじん肺による粒状影又は不整形陰影が少数あり、かつ、大陰影がないと認められるもの |
第二型 | 両肺野にじん肺による粒状影又は不整形陰影が多数あり、かつ、大陰影がないと認められるもの |
第三型 | 両肺野にじん肺による粒状影又は不整形陰影が極めて多数あり、かつ、大陰影がないと認められるもの |
第四型 | 大陰影があると認められるもの |
2 粉じん作業に従事する労働者及び粉じん作業に従事する労働者であつた者は、じん肺健康診断の結果に基づき、次の表の下欄に掲げるところにより、管理一から管理四までに区分して、この法律の規定により、健康管理を行うものとする。
じん肺管理区分 | じん肺健康診断の結果 | |
---|---|---|
管理一 | じん肺の所見がないと認められるもの | |
管理二 | エックス線写真の像が第一型で、じん肺による著しい肺機能の障害がないと認められるもの | |
管理三 | イ | エックス線写真の像が第二型で、じん肺による著しい肺機能の障害がないと認められるもの |
ロ | エックス線写真の像が第三型又は第四型(大陰影の大きさが一側の肺野の3分の1以下のものに限る。)で、じん肺による著しい肺機能の障害がないと認められるもの | |
管理四 | (1)エックス線写真の像が第四型(大陰影の大きさが一側の肺野の3分の1を超えるものに限る。)と認められるもの (2)エックス線写真の像が第一型、第二型、第三型又は第四型(大陰影の大きさが一側の肺野の三分の一以下のものに限る。)で、じん肺による著しい肺機能の障害があると認められるもの |
(粉じんにさらされる程度を低減させるための措置)
第20条の3 事業者は、じん肺管理区分が管理二又は管理三イである労働者について、粉じんにさらされる程度を低減させるため、就業場所の変更、粉じん作業に従事する作業時間の短縮その他の適切な措置を講ずるように努めなければならない。
(5)誤り。じん肺法第 22 条第2号の規定により、都道府県労働局長から作業転換指示を受けたときの転換手当は 60 日分である。「勧奨は 30 日、指示は 60 日」と覚えておけばよい。
【じん肺法】
(作業の転換)
第21条 (第1項~第3項 略)
4 都道府県労働局長は、じん肺管理区分が管理三ロである労働者が現に常時粉じん作業に従事している場合において、地方じん肺診査医の意見により、当該労働者の健康を保持するため必要があると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、事業者に対して、その者を粉じん作業以外の作業に常時従事させるべきことを指示することができる。
(転換手当)
第22条 事業者は、次の各号に掲げる労働者が常時粉じん作業に従事しなくなったとき(労働契約の期間が満了したことにより離職したときその他厚生労働省令で定める場合を除く。)は、その日から7日以内に、その者に対して、次の各号に掲げる労働者ごとに、それぞれ労働基準法第12条に規定する平均賃金の当該各号に掲げる日数分に相当する額の転換手当を支払わなければならない。ただし、厚生労働大臣が必要があると認めるときは、転換手当の額について、厚生労働省令で別段の定めをすることができる。
一 前条第1項の規定による勧奨を受けた労働者又はじん肺管理区分が管理3ロである労働者(次号に掲げる労働者を除く。) 30日分
二 前条第4項の規定による指示を受けた労働者 60日分