問2 粉じん作業を行う事業場における設備、作業の管理等に関する次の記述のうち、粉じん障害防止規則上、正しいものはどれか。
(1)屋内作業場において、岩石を可搬式動力工具により彫る作業の粉じん発生源については、局所排気装置若しくはプッシュプル型換気装置の設置又はこれと同等以上の措置を講じなければならない。
(2)特定粉じん発生源に係る局所排気装置及びプッシュプル型換気装置については、フード、ダクト及びファンの摩耗、腐食等の有無その他性能を保持するため必要な事項について、1年以内ごとに1回、定期に、自主検査を行い、検査結果の記録を作成して、これを5年間保存しなければならない。
(3)屋内作業場において、鉱物等を手持式動力工具以外の動力により破砕又は粉砕する作業の粉じん発生源については、密閉する設備、局所排気装置若しくは湿潤な状態に保つための設備の設置又はこれと同等以上の措置を講じなければならない。
(4)局所排気装置の設置等の措置を講じていない屋外作業場において、研磨材の吹き付けにより金属を研磨する作業に常時従事させる労働者には、全面形防じんマスク、送気マスク又は空気呼吸器を使用させなければならない。
(5)全体換気装置により換気を行う屋内作業場において、特定粉じん作業以外の粉じん作業に労働者を従事させている場合は、休憩設備を当該作業を行う作業場内に設けてもよい。
このページは、2017年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2017年度(平成29年度) | 問02 | 難易度 | 粉じん関連の問題は例年難問が多い。本年もかなり細かいことを問うている。 |
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粉じん作業の設備等 | 5 |
問2 粉じん作業を行う事業場における設備、作業の管理等に関する次の記述のうち、粉じん障害防止規則上、正しいものはどれか。
(1)屋内作業場において、岩石を可搬式動力工具により彫る作業の粉じん発生源については、局所排気装置若しくはプッシュプル型換気装置の設置又はこれと同等以上の措置を講じなければならない。
(2)特定粉じん発生源に係る局所排気装置及びプッシュプル型換気装置については、フード、ダクト及びファンの摩耗、腐食等の有無その他性能を保持するため必要な事項について、1年以内ごとに1回、定期に、自主検査を行い、検査結果の記録を作成して、これを5年間保存しなければならない。
(3)屋内作業場において、鉱物等を手持式動力工具以外の動力により破砕又は粉砕する作業の粉じん発生源については、密閉する設備、局所排気装置若しくは湿潤な状態に保つための設備の設置又はこれと同等以上の措置を講じなければならない。
(4)局所排気装置の設置等の措置を講じていない屋外作業場において、研磨材の吹き付けにより金属を研磨する作業に常時従事させる労働者には、全面形防じんマスク、送気マスク又は空気呼吸器を使用させなければならない。
(5)全体換気装置により換気を行う屋内作業場において、特定粉じん作業以外の粉じん作業に労働者を従事させている場合は、休憩設備を当該作業を行う作業場内に設けてもよい。
正答(3)
【解説】
粉じん則には、別表として別表第一、別表第二及び別表第三が定められており、それらの意味は次のようになっている。
意味 | 必要な対策 | |
---|---|---|
別表第一 |
粉じん作業の範囲。 ※ 別表第二の発散源の作業と別表第三の作業の双方を包含する。 |
|
別表第二 |
特定粉じん発生源の範囲。 ※ 粉じん作業のうち、その粉じん発生源が特定粉じん発生源であるものを特定粉じん作業という。 |
特定粉じん発生源については、粉じん則第4条に定めるところにより、一定の工学的対策が必要となる。 |
別表第三 | 特定粉じん作業よりも有害性の低い作業 | 原則として有効な呼吸用保護具を使用させなければならない。 |
(1)誤り。本肢の「屋内作業場において、岩石を可搬式動力工具により彫る作業」は粉じん則別表第一第六号及び別表第三第四号に該当する。一方、局所排気装置等の設置は、粉じん則においては第4条によって義務付けられているが、その対象は別表第二に定める特定粉じん発生源の一部であり、別表第三の作業は対象外である。
【粉じん障害防止規則】
(定義等)
第2条 この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 (略)
二 特定粉じん発生源 別表第二に掲げる箇所をいう。
三 (略)
2~6 (略)
(特定粉じん発生源に係る措置)
第4条 事業者は、特定粉じん発生源における粉じんの発散を防止するため、次の表の上欄に掲げる特定粉じん発生源について、それぞれ同表の下欄に掲げるいずれかの措置又はこれと同等以上の措置を講じなければならない。
(表略)
別表第一 (第二条、第三条関係)
一~五の三 (略)
六 岩石又は鉱物を裁断し、彫り、又は仕上げする場所における作業(第十三号に掲げる作業を除く。)。ただし、火炎を用いて裁断し、又は仕上げする場所における作業を除く。
七~二十三 (略)
別表第三 (第七条、第二十七条関係)
一~三の三 (略)
四 別表第一第六号に掲げる作業のうち、手持式又は可搬式動力工具を用いて岩石又は鉱物を裁断し、彫り、又は仕上げする作業
五~十七 (略)
(2)誤り。「フード、ダクト及びファンの摩耗、腐食、くぼみその他損傷の有無及びその程度」は粉じん則第17条第2項(第1号イ)の規定により、一年以内ごとに一回、定期に、自主検査を行わなければならない。しかしながら、その記録の保存は同第18条により3年とされている。従って5年間記録を保存しなければならないとする本肢は誤りである。
【労働安全衛生法】
(定期自主検査)
第45条 事業者は、ボイラーその他の機械等で、政令で定めるものについて、厚生労働省令で定めるところにより、定期に自主検査を行ない、及びその結果を記録しておかなければならない。
2~4 (略)
【労働安全衛生法施行令】
(定期に自主検査を行うべき機械等)
第15条 法第45条第1項の政令で定める機械等は、次のとおりとする。
一~八 (略)
九 局所排気装置、プッシュプル型換気装置、除じん装置、排ガス処理装置及び排液処理装置で、厚生労働省令で定めるもの
十及び十一 (略)
2 (略)
【粉じん障害防止規則】
(局所排気装置等の定期自主検査)
第17条 労働安全衛生法施行令(以下「令」という。)第15条第1項第九号の厚生労働省令で定める局所排気装置、プッシュプル型換気装置及び除じん装置(粉じん作業に係るものに限る。)は、第4条及び第27条第1項ただし書の規定により設ける局所排気装置及びプッシュプル型換気装置並びに第10条の規定により設ける除じん装置とする。
2 事業者は、前項の局所排気装置、プッシュプル型換気装置及び除じん装置については、1年以内ごとに1回、定期に、次の各号に掲げる装置の種類に応じ、当該各号に掲げる事項について自主検査を行わなければならない。ただし、1年を超える期間使用しない同項の装置の当該使用しない期間においては、この限りでない。
一 局所排気装置
イ フード、ダクト及びファンの摩耗、腐食、くぼみその他損傷の有無及びその程度
ロ~ヘ (略)
二及び三 (略)
3 (略)
(定期自主検査の記録)
第18条 事業者は、前条第2項又は第3項の自主検査を行つたときは、次の事項を記録して、これを3年間保存しなければならない。
一~六 (略)
(3)正しい。本肢の「屋内作業場において、鉱物等を手持式動力工具以外の動力により破砕又は粉砕する作業」は粉じん則別表第一第八号及び別表第二第八号に該当する。そして、別表第二第八号の作業は、粉じん則第4条(第七号)の規定により、密閉する設備、局所排気装置若しくは湿潤な状態に保つための設備の設置又はこれと同等以上の措置を講じなければならない。従って、本肢は正しい。
【粉じん障害防止規則】
(定義等)
第2条 この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 (略)
二 特定粉じん発生源 別表第二に掲げる箇所をいう。
三 (略)
2~6 (略)
(特定粉じん発生源に係る措置)
第4条 事業者は、特定粉じん発生源における粉じんの発散を防止するため、次の表の上欄に掲げる特定粉じん発生源について、それぞれ同表の下欄に掲げるいずれかの措置又はこれと同等以上の措置を講じなければならない。
特定粉じん発生源 | 措置 |
---|---|
(略) | (略) |
七 別表第二第八号に掲げる箇所(アルミニウムはくを破砕し、粉砕し、又はふるい分ける箇所を除く。) |
一 密閉する設備を設置すること。 二 局所排気装置を設置すること。 三 湿潤な状態に保つための設備を設置すること。 |
(略) | (略) |
別表第一 (第二条、第三条関係)
一~七 (略)
八 鉱物等、炭素原料又はアルミニウムはくを動力により破砕し、粉砕し、又はふるい分ける場所における作業(第三号、第十五号又は第十九号に掲げる作業を除く。)。ただし、水又は油の中で動力により破砕し、粉砕し、又はふるい分ける場所における作業を除く。
九~二十三 (略)
別表第二 (第二条、第四条、第十条、第十一条関係)
一~七 (略)
八 別表第一第八号に掲げる作業に係る粉じん発生源のうち、屋内の、鉱物等、炭素原料又はアルミニウムはくを動力(手持式動力工具によるものを除く。)により破砕し、粉砕し、又はふるい分ける箇所
九~十五 (略)
(4)誤り。本肢の「屋外作業場において、研磨材の吹き付けにより金属を研磨する作業」は、粉じん則別表第三第五号に該当する。そして、呼吸用保護具について定めた粉じん則第 27 条第1項本文のカッコ書きに「別表第三第五号に掲げる作業に労働者を従事させる場合にあっては、送気マスク又は空気呼吸器に限る」とある。従って、本肢は「全面形防じんマスク」を挙げているので適切ではない。
なお、本肢では「常時従事させる労働者」とされているため、臨時の粉じん作業を行う場合等の適用除外を定める「第7条第1項各号又は第2項各号に」該当しない。また「局所排気装置の設置等の措置を講じていない」のであるから、第 27 条第1項の但し書きにも該当しない。
【粉じん障害防止規則】
(臨時の粉じん作業を行う場合等の適用除外)
第7条 第4条及び前3条の規定は、次の各号のいずれかに該当する場合であつて、事業者が、当該特定粉じん作業に従事する労働者に対し、有効な呼吸用保護具(別表第三第一号の二又は第二号の二に掲げる作業を行う場合にあつては、防じん機能を有する電動ファン付き呼吸用保護具又は防毒機能を有する電動ファン付き呼吸用保護具であつて防じん機能を有するものに限る。以下この項において同じ。)を使用させたとき(当該特定粉じん作業の一部を請負人に請け負わせる場合にあつては、当該特定粉じん作業に従事する労働者に対し、有効な呼吸用保護具を使用させ、かつ、当該請負人に対し、有効な呼吸用保護具を使用する必要がある旨を周知させたとき)は、適用しない。
一 臨時の特定粉じん作業を行う場合
二 同一の特定粉じん発生源に係る特定粉じん作業を行う期間が短い場合
三 同一の特定粉じん発生源に係る特定粉じん作業を行う時間が短い場合
2 第5条から前条までの規定は、次の各号のいずれかに該当する場合であつて、事業者が、当該粉じん作業に従事する労働者に対し、有効な呼吸用保護具(別表第三第三号の二に掲げる作業を行う場合にあつては、防じん機能を有する電動ファン付き呼吸用保護具又は防毒機能を有する電動ファン付き呼吸用保護具であつて防じん機能を有するものに限る。以下この項において同じ。)を使用させたとき(当該粉じん作業の一部を請負人に請け負わせる場合にあつては、当該粉じん作業に従事する労働者に対し、有効な呼吸用保護具を使用させ、かつ、当該請負人に対し、有効な呼吸用保護具を使用する必要がある旨を周知させたとき)は、適用しない。
一 臨時の粉じん作業であつて、特定粉じん作業以外のものを行う場合
二 同一の作業場において特定粉じん作業以外の粉じん作業を行う期間が短い場合
三 同一の作業場において特定粉じん作業以外の粉じん作業を行う時間が短い場合
(呼吸用保護具の使用)
第27条 事業者は、別表第三に掲げる作業(次項に規定する作業を除く。)に労働者を従事させる場合(第七条第一項各号又は第二項各号に該当する場合を除く。)にあつては、当該作業に従事する労働者に有効な呼吸用保護具(別表第三第五号に掲げる作業に労働者を従事させる場合にあつては、送気マスク又は空気呼吸器に限る。)を使用させなければならない。ただし、粉じんの発生源を密閉する設備、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置の設置、粉じんの発生源を湿潤な状態に保つための設備の設置等の措置であつて、当該作業に係る粉じんの発散を防止するために有効なものを講じたときは、この限りでない。
2及び3 (略)
別表第一 (第二条、第三条関係)
一~五の三 (略)
六 岩石又は鉱物を裁断し、彫り、又は仕上げする場所における作業(第十三号に掲げる作業を除く。)。ただし、火炎を用いて裁断し、又は仕上げする場所における作業を除く。
七~二十三 (略)
別表第三 (第七条、第二十七条関係)
一~四 (略)
五 別表第一第六号又は第七号に掲げる作業のうち、屋外の、研磨材の吹き付けにより、研磨し、又は岩石若しくは鉱物を彫る場所における作業
六~十七 (略)
※ 粉じん則第7条は、本問出題当時は以下のようになっていた。その後の改正により現在は上記のようになっているが、本肢の正誤には影響がない。
(臨時の粉じん作業を行う場合等の適用除外)
第7条 第4条及び前3条の規定は、次の各号のいずれかに該当する場合であつて、当該特定粉じん作業に従事する労働者に有効な呼吸用保護具(別表第三第一号の二又は第二号の二に掲げる作業に労働者を従事させる場合にあつては、電動ファン付き呼吸用保護具に限る。)を使用させたときは、適用しない。
一~三 (修正なし)
2 第五条から前条までの規定は、次の各号のいずれかに該当する場合であつて、当該粉じん作業に従事する労働者に有効な呼吸用保護具(別表第三第三号の二に掲げる作業に労働者を従事させる場合にあつては、電動ファン付き呼吸用保護具に限る。)を使用させたときは、適用しない。
一~三 (修正なし)
(5)誤り。粉じん則第 23 条第1項には「粉じん作業に労働者を従事させるときは、粉じん作業を行う作業場以外の場所に休憩設備を設けなければならない。ただし、坑内等特殊な作業場で、これによることができないやむを得ない事由があるときは、この限りでない」とされている。本肢の「全体換気装置により換気を行う屋内作業場」が特殊な作業場に該当するとは考えにくい。
なお、本条は「粉じん作業を行う作業場以外の場所に休憩設備を設け」ておきさえすれば、粉じん作業を行う作業場にも休憩設備を(併せて)設けたとしても違反にはならないようにも読める。そうだとすれば、本肢は正しいということになるが、休憩設備を作業場所の内外に設ければ労働者は作業場所内に設置された休憩設備を利用することになろう。休憩時間には粉じんにばく露させることがないようにするという本条の趣旨から考えれば、粉じん作業を行う作業場に休憩設備に設けることは許されないと考えるべきである。
【粉じん障害防止規則】
(休憩設備)
第23条 事業者は、粉じん作業に労働者を従事させるときは、粉じん作業を行う作業場以外の場所に休憩設備を設けなければならない。ただし、坑内等特殊な作業場で、これによることができないやむを得ない事由があるときは、この限りでない。
2及び3 (略)
本問はやや細かいことを出題している。しかし、定期自主検査の記録の保存義務が3年であること、有害業務の休憩場所は作業場外に設けるべきことを知っていれば、(2)と(5)は誤っているとまでは判る。