労働衛生保護具 2017年 労働衛生一般 問25

労働衛生保護具




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合格

 このページは、2017年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2017年度(平成29年度) 問25 難易度 労働衛生保護具に関するごく初歩的な知識問題である。確実に正答できなければならない。
労働衛生保護具

問25 労働衛生保護具に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)化学防護服、化学防護手袋及び化学防護長靴は、労働衛生保護衣類である。

(2)第一種耳栓は主に高音を遮断するため、装着しても会話が可能である。

(3)一般に防毒マスクの吸収缶の破過時間は、30℃程度の高温環境下では長くなる。

(4)防じんマスクなどのろ過式の呼吸用保護具は、酸素濃度15%の環境下では注意して使用する。

(5)電動ファン付き呼吸用保護具は、給気式の保護具である。

※ JIS T 8161:1983 が JIS T 8161:2020に改訂されたため、(2)は意味のない肢となっている。

正答(1)

【解説】

(1)正しい。労働衛生保護衣類という用語はあまり一般的ではなく、出題意図が不明であるが、誤っているとまでは言えないだろう。また、ほかの選択肢が明らかに誤っているので、本肢が正答ということのようである。

(2)意味のない肢である。出題当時のJIS T 8161:1983には、表1に耳栓の分類として「低音から高音までを遮音するもの」(1種EP-1)と「主として高音を遮音するもので、会話域程度の低音を比較的通すもの」(2種EP-2)の2種類が定められていた。このため、出題当時は誤りの肢であった。

その後、JIS T 8161:1983 がJIS T 8161:2020に改訂され、耳栓の製品ごとの性能の測定方法が規定されるようになり、それぞれの現場の騒音の状況に応じた製品が選択できるようになった。このため、現在では意味のない肢となっているが、現実には1種、2種の表示のある製品の販売も行われており、現在でも必ずしも誤りとはいえない。

表 防音保護具(JIS T 8161:1983(廃止された規格))
種類 記号 周波数(Hz)
125 250 500 1000 2000 4000 8000
耳栓 1種 Ep-1 10dB以上 15dB以上 15dB以上 20dB以上 25dB以上 25dB以上 20dB以上
耳栓 2種 Ep-2 10dB以上 10dB以上 10dB以上 20dB以上 20dB以上 25dB以上 20dB以上
耳覆い EM 5dB以上 10dB以上 10dB以上 25dB以上 35dB以上 35dB以上 20dB以上

(3)誤り。令和5年5月25日基発0525第3号「防じんマスク、防毒マスク及び電動ファン付き呼吸用保護具の選択、使用等について」(以下「保護マスク通達」という。)の第3の2の(1)に「使用する環境の温度又は湿度によっては、吸収缶の破過時間が短くなる場合があること。例えば、有機ガス用防毒マスクの吸収缶及び有機ガス用G-PAPRの吸収缶は、使用する環境の温度又は湿度が高いほど破過時間が短くなる傾向があり、沸点の低い物質ほど、その傾向が顕著であること」とされている(※)

※ 本問出題当時は、平成17年2月7日基発第0207007号「防毒マスクの選択、使用等について」が有効であり、本文に示した「保護マスク通達」によって廃止されたが、この通達にも、有機ガス用防毒マスクの吸収缶は、使用する環境の温度又は湿度が高いほど破過時間が短くなる傾向があり、沸点の低い物質ほど、その傾向が顕著であるとの記述があった。

(4)誤り。防じんマスクなどのろ過式の呼吸用保護具は、酸素を供給できるものではなく酸欠状態を改善できるわけではない。酸素濃度18%未満の環境下では、給気式の呼吸用保護具を使用しなければならず、ろ過式の呼吸用保護具を使用してはならないことは当然である。

(5)誤り。電動ファン付き呼吸用保護具は、ろ過式の保護具である。給気式とは、フレッシュエアを給気する呼吸用保護具のことである。電動ファン付き呼吸用保護具は、たんに電動ファンがついているだけで、作業場の空気をろ過していることに変わりはなく「給気式」となるわけではない。

2019年12月01日執筆 2023年12月20日最終改訂