労働衛生コンサルタント試験 2017年 労働衛生一般 問18

局所排気装置など




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合格

 このページは、2017年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2017年度(平成29年度) 問18 難易度 局所排気装置等に関する基本的な知識問題である。確実に正答できなければならない。
局所排気装置等

問18 局所排気装置などに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)粉じんの種類によっては、気中にある場合には危険性が小さいが、集じん装置の中で堆積状態になったときに発火・爆発する可能性がある。

(2)囲い式フードの一種であるブース式フードは、開口面の周りの壁が、フランジやバッフル板として働くため、外部の乱れ気流の影響を受けにくく、一般に外付け式フードに比べてより少ない風量で効果が得られる。

(3)管理濃度は、作業者の呼吸域の濃度を安全な範囲にとどめるための局所排気装置などに求められる性能要件として定められた値である。

(4)制御風速とは、有害物質の拡散の限界点又は拡散範囲の特定点において、当該有害物質又はこれにより汚染された空気を捕捉し、これらをフードの開口部に入れるために必要な最小風速をいう。

(5)プッシュプル型換気装置は、有害なガス、蒸気などの発散面が広いときには、局所排気装置よりも有効である場合が多い。

正答(3)

【解説】

(1)正しい。一般に粉じんの爆発の危険性は、堆積しているときよりも何らかの原因で空気中にあるときの方が危険性は高い。しかし、マグネシウム粉じんが堆積しているときに、なんらかの原因で水分を吸収すると発火・爆発するおそれがある。2001年8月に、マグネシウム合金の製品の製造工場で、集じん機の鋼製ダクト内に堆積したマグネシウム合金粉が、水と反応して発火し、これが着火源となって鋼管内の浮遊粉じんが爆発した例がある。従って、本肢は誤っているとは言えない。

なお、空気中の粉じんが爆発し、爆風で堆積していた粉じんが舞い上がって二次爆発を起こすケースがある(2003年1月米国ノースカロライナ州ポリエチレン粉末爆発、1999年2月米国マサチューセッツ州フェノール樹脂を混ぜたレジンサンド爆発など)。

(2)正しい。ブース式フードは、発散源の周囲が囲まれているため、外付け式フードに比べて少ない風量で効果が得られる。

(3)誤り。管理濃度とは、作業環境管理を進める上で、有害物質に関する作業環境の状態を評価するために、作業環境測定基準に従って実施した作業環境測定の結果から作業環境管理の良否を判断する際の管理区分を決定するための指標である。問題文の「作業者の呼吸域の濃度を安全な範囲にとどめるための局所排気装置などに求められる性能要件として定められた値」が何を意味しているかは不明だが、出題者は「制御風速」をイメージしていたのかもしれない。

なお、局所排気装置の性能を表す指標に、抑制濃度と制御風速がある。以下に、簡単な定義と定められている省令を示す。

定義 対象
抑制濃度 発散源付近における有害物質の濃度をその値以下に抑えることによって、作業者のばく露濃度を安全水準に保つよう意図して定めた濃度 有機則、特化則(一部)、粉じん則
制御風速 有害物質を吸引するために必要となる風速。フードの型式に応じて測定位置が定められている。 特化則(一部)、鉛則、石綿則

(4)正しい。制御風速とは、厚生労働省では「局所排気装置が有害物の発生源の周辺に自然にある不規則な気流に打ち勝つ大きさの定常的な気流を作るための風速」と定義している。有機則第16条では、フードに応じて異なる「制御風速」を定めている。有機則では、囲い式フードではフードの開口面における最小風速をいい、外付け式フードでは有機溶剤を吸引しようとする範囲でフードの開口面から最も離れた作業位置の風速をいうとしている。従って、本肢は誤っているとは言えない。

(5)正しい。プッシュプル型換気装置では、一定の補足気流を形成させるため、有害なガス、蒸気などの発散面が広いときには、局所排気装置よりも有効である場合が多い。

2019年12月01日執筆 2020年03月15日修正