労働衛生コンサルタント試験 2017年 労働衛生一般 問14

加齢による生理機能などの一般的な変化




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 このページは、2017年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2017年度(平成29年度) 問14 難易度 加齢による生理機能などの変化を問う問題である。ほぼ常識問題レベル。正答できなければならない。
加齢と生理機能の変化

問14 加齢による生理機能などの一般的な変化に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)身体の総水分量は、減少する。

(2)平衡機能は、低下する。

(3)基礎代謝は、低下する。

(4)短期の記憶力及び長期の記憶力は、ともに著しく低下する。

(5)最大酸素摂取量は、運動習慣の有無にかかわらず低下する。

正答(4)

【解説】

(1)正しい。ヒトの体内で水分を多く含む機関は筋肉である。加齢とともに一般的には筋肉の量が減少するので、体内の総水分量も減少することになる。

(2)正しい。加齢により、視覚の機能として距離の把握能力が低下する、前庭神経数が減少する、筋力が低下する、足関節の振動感覚が低下するなどの現象が現れる。このため、平衡機能は、一般的に加齢とともに低下する。

(3)正しい。基礎代謝とは安静時におけるエネルギーの消費量であるが、加齢とともに一般的には骨格筋の量が減少するため、骨格筋による代謝の量が減少することとなる。

(4)誤り(やや疑問)。一般には、健常な加齢によって短期記憶力は低下するが、長期記憶力はそれほど低下しないと思われている。従って、本肢が誤りであり正答となるのであろう。

しかしながら、これには多くの異論もある。例えば、東京都老人総合研究所の石原治他「短期・長期記憶に及ぼす加齢の影響について」によれば、「短期・長期記憶いずれにおいても加齢が符号化、貯蔵、検索すべての段階に影響することが推察された」などとする。また、そもそも加齢に伴う脳の病理的変化によって記憶力及び長期の記憶力がともに著しく低下することもあろう。そのような意味で、やや疑問の残る設問であった。

(5)正しい。最大酸素摂取量は、運動習慣の有無によって減少量は変わるものの、一般的にということであれば低下するといえる。従って、本肢は誤っているとまでは言えない。

なお、厚生労働省の「健康づくりのための運動基準2006~身体活動・運動・体力~」によれば、最大酸素摂取量の基準値は、男性で20歳代が40[ml/kg/min]、60歳代で33[ml/kg/min]、女性では20歳代が33[ml/kg/min]、60歳代で28[ml/kg/min]とされている。

2019年12月01日執筆 2020年03月15日修正