問14 鉛中毒予防のため事業者が講ずべき措置に関する次の記述のうち、鉛中毒予防規則上、正しいものはどれか。ただし、同規則による適用の除外及び設備の特例はないものとする。
(1)鉛蓄電池を解体する工程において鉛等を溶融する業務に労働者を従事させるときは、当該業務を行う屋内作業場に、全体換気装置を設けなければならない。
(2)局所排気装置又は排気筒については、そのフードの外側における鉛の濃度を、空気1立方メートル当たり 0.5 ミリグラムを超えないものとする能力を有するものを使用しなければならない。
(3)鉛作業主任者には、労働者の指揮、局所排気装置の点検、労働衛生保護具の使用状況の監視、作業環境測定などを行わせなければならない。
(4)鉛業務を行う屋内作業場の床等を、毎週1回以上、真空掃除機を用いて、又は水洗によって掃除しなければならない。
(5)鉛ライニングの業務(遠隔操作によって行う隔離室におけるものを除く。)を行う屋内作業場について、1年以内ごとに1回、定期に、空気中における鉛の濃度を測定し、所定の事項を記録し、これを3年間保存しなければならない。
このページは、2016年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2016年度(平成28年度) | 問14 | 難易度 | 鉛中毒予防規則に関するかなり細かな知識問題である。難問だったのではないか。 |
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鉛中毒予防規則 | 5 |
問14 鉛中毒予防のため事業者が講ずべき措置に関する次の記述のうち、鉛中毒予防規則上、正しいものはどれか。ただし、同規則による適用の除外及び設備の特例はないものとする。
(1)鉛蓄電池を解体する工程において鉛等を溶融する業務に労働者を従事させるときは、当該業務を行う屋内作業場に、全体換気装置を設けなければならない。
(2)局所排気装置又は排気筒については、そのフードの外側における鉛の濃度を、空気1立方メートル当たり 0.5 ミリグラムを超えないものとする能力を有するものを使用しなければならない。
(3)鉛作業主任者には、労働者の指揮、局所排気装置の点検、労働衛生保護具の使用状況の監視、作業環境測定などを行わせなければならない。
(4)鉛業務を行う屋内作業場の床等を、毎週1回以上、真空掃除機を用いて、又は水洗によって掃除しなければならない。
(5)鉛ライニングの業務(遠隔操作によって行う隔離室におけるものを除く。)を行う屋内作業場について、1年以内ごとに1回、定期に、空気中における鉛の濃度を測定し、所定の事項を記録し、これを3年間保存しなければならない。
正答(5)
【解説】
(1)誤り。鉛中毒予防規則(以下、本問の解説中において「鉛則」という。)第7条は、「事業者は、第1条第五号ハに掲げる鉛業務に労働者を従事させるときは、次の措置を講じなければならない」として第1号に「鉛等の溶融、鋳造、加工、組立て、溶接若しくは溶断又は極板の切断を行なう屋内の作業場所に、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設けること」を挙げる。
そして、この第1条第五号ハに掲げる鉛業務には、鉛蓄電池を解体する工程が含まれる。従って、本肢の場合、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設けなければならない。全体換気装置を設けなければならないとする本肢は誤りである。
【鉛中毒予防規則】
(定義)
第1条 この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一~四 (略)
五 鉛業務 次に掲げる業務並びに令別表第四第八号から第十一号まで及び第十七号に掲げる業務をいう。
イ及びロ (略)
ハ 鉛蓄電池又は鉛蓄電池の部品を製造し、修理し、又は解体する工程において鉛等の溶融、鋳造、粉砕、混合、ふるい分け、練粉、充てん、乾燥、加工、組立て、溶接、溶断、切断、若しくは運搬をし、又は粉状の鉛等をホツパー、容器等に入れ、若しくはこれらから取り出す業務
ニ~ワ (略)
(鉛蓄電池の製造等に係る設備)
第7条 事業者は、第1条第五号ハに掲げる鉛業務に労働者を従事させるときは、次の措置を講じなければならない。
一 鉛等の溶融、鋳造、加工、組立て、溶接若しくは溶断又は極板の切断を行なう屋内の作業場所に、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設けること。
二~九 (略)
(2)誤り。鉛則第 30 条は、「局所排気装置又は排気筒については、そのフードの外側における鉛の濃度を、空気1立方メートル当たり 0.05 ミリグラムを超えないものとする能力を有するものを使用しなければならない」としている。「空気1立方メートル当たり 0.5 ミリグラムを超えない」とする本肢は誤りである。
なお、鉛の管理濃度は 0.05 mg/m3(鉛及びその化合物、Pb として)である。なお、ACGIH は TLV-TWA を 0.05 mg/m3(A3;BEI 鉛及びその無機化合物、Pb として)としている。
【鉛中毒予防規則】
(局所排気装置等の性能)
第30条 事業者は、局所排気装置又は排気筒については、そのフードの外側における鉛の濃度を、空気1立方メートル当たり0.05ミリグラムを超えないものとする能力を有するものを使用しなければならない。
(3)誤り。作業主任者に行わせるべき職務は、鉛則第 34 条に定められている。本肢に挙げられた事項のうち、労働者の指揮、局所排気装置の点検、労働衛生保護具の使用状況の監視は作業主任者の職務とされているが、作業環境測定は職務とされていない。従って、本肢は誤りである。
作業主任者の職務は、基本的に作業者に対する安全衛生上の指揮と、作業環境や保護具等に関するあまり技術的でない事項の確認が主なものである。鉛作業環境測定のような専門的事項が、作業主任者の職務のわけがあるまい。
【鉛中毒予防規則】
(作業主任者の職務)
第34条 事業者は、鉛作業主任者に次の事項を行なわせなければならない。
一 鉛業務に従事する労働者の身体ができるだけ鉛等又は焼結鉱等により汚染されないように労働者を指揮すること。
二 鉛業務に従事する労働者の身体が鉛等又は焼結鉱等によって著しく汚染されたことを発見したときは、すみやかに、汚染を除去させること。
三 局所排気装置、プッシュプル型換気装置、全体換気装置、排気筒及び除じん装置を毎週1回以上点検すること。
四 労働衛生保護具等の使用状況を監視すること。
五 令別表第4第九号に掲げる鉛業務に労働者が従事するときは、第42条各号に定める措置が講じられていることを確認すること。
(4)誤り。鉛則第 48 条は、鉛業務を行なう屋内作業場について、毎日1回以上、床等を、真空そうじ機を用いて、又は水洗によってそうじしなければならないと定めている。「毎週1回以上」とする本肢は誤りである。
【鉛中毒予防規則】
(そうじ)
第48条 事業者は、鉛業務を行なう屋内作業場並びに鉛業務に従事する労働者が利用する休憩室及び食堂の床等の鉛等又は焼結鉱等による汚染を除去するため、毎日1回以上、当該床等を、真空そうじ機を用いて、又は水洗によってそうじしなければならない。
(5)正しい。鉛則第 52 条は、「令第 21 条第8号に掲げる屋内作業場について、1年以内ごとに1回、定期に、空気中における鉛の濃度を測定しなければならない」とし、その結果を「3年間保存しなければならない」とする。これは学習を始めたばかりでもない限り覚えているだろう。
問題は本肢の作業場が、令第 21 条第8号に掲げる屋内作業場に含まれるかである。遠隔操作によって行う隔離室におけるものを除き、鉛ライニングの業務が含まれている。従って本肢は正しい。
なお、遠隔操作によって行う隔離室におけるものが作業環境の対象から除かれるのは当然であろう。
【労働安全衛生法】
(作業環境測定)
第65条 事業者は、有害な業務を行う屋内作業場その他の作業場で、政令で定めるものについて、厚生労働省令で定めるところにより、必要な作業環境測定を行い、及びその結果を記録しておかなければならない。
2~5 (略)
【労働安全衛生法施行令】
(作業環境測定を行うべき作業場)
第21条 法第65条第1項の政令で定める作業場は、次のとおりとする。
一~七 (略)
八 別表第四第一号から第八号まで、第十号又は第十六号に掲げる鉛業務(遠隔操作によって行う隔離室におけるものを除く。)を行う屋内作業場
九及び十 (略)
別表第四 鉛業務(第六条、第二十一条、第二十二条関係)
一~六 (略)
七 鉛ライニングの業務(仕上げの業務を含む。)
八~十八 (略)
備考 (略)
【鉛中毒予防規則】
(測定)
第52条 事業者は、令第21条第八号に掲げる屋内作業場について、1年以内ごとに1回、定期に、空気中における鉛の濃度を測定しなければならない。
2 事業者は、前項の規定による測定を行なつたときは、そのつど次の事項を記録して、これを3年間保存しなければならない。
一~七 (略)