労働衛生コンサルタント試験 2016年 労働衛生関係法令 問13

危険物及び有害物の規制




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 このページは、2016年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2016年度(平成28年度) 問13 難易度 危険物及び有害物の規制に関するごく基本的な知識問題である。確実に正答できなければならない。
危険物及び有害物の規制

問13 危険物及び有害物の規制に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、正しいものはどれか。

(1)新規化学物質を製造し、又は輸入しようとする事業者は、あらかじめ、有害性の調査を行わなければならないが、その有害性の調査は、実験動物を用いて吸入投与、経口投与等の方法により行うがん原性の調査でなければならない。

(2)塩素化ビフェニル(別名PCB)は、試験研究のために製造する場合を除き、製造してはならない。

(3)石綿を試験研究以外の用途のために輸入しようとする者は、あらかじめ所轄都道府県労働局長の許可を受けなければならない。

(4)ベンゼン等法令に基づき名称等を表示すべき有害物を容器(主として一般消費者の生活の用に供するための容器を除く。)に入れ提供する場合、その容器に表示しなければならない事項には、「名称」、「人体に及ぼす作用」及び「貯蔵又は取扱い上の注意」が含まれている。

(5)法令に基づいて、通知対象物を提供する相手方に文書の交付等により通知すべき事項には、「名称」、「成分及びその含有量」及び「物理的及び化学的性質」が含まれ、通知対象物として、104 物質が定められている。

正答(4)

【解説】

(1)誤り。安衛法第57条の4は、新規化学物質を製造し、又は輸入しようとする事業者は厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣の定める基準に従って有害性の調査を行い、当該新規化学物質の名称、有害性の調査の結果その他の事項を厚生労働大臣に届け出なければならないとしている。従って本肢の前段は正しい。

しかし、安衛則第34条の3第1項第1号は、この試験は「変異原性試験、化学物質のがん原性に関し変異原性試験と同等以上の知見を得ることができる試験又はがん原性試験のうちいずれかの試験」としている。従って、「実験動物を用いて吸入投与、経口投与等の方法により行うがん原性の調査でなければならない」とする本肢は誤りである。

そもそも「実験動物を用いて吸入投与、経口投与等の方法により行うがん原性の調査」は、日本でも実施できる試験機関は限られており、長い期間と多額の費用を必要とする。このような試験をすべての新規化学物質の製造等に当たって義務付けることなど、あり得ないことである。

【労働安全衛生法】

(化学物質の有害性の調査)

第57条の4 化学物質による労働者の健康障害を防止するため、既存の化学物質として政令で定める化学物質(第三項の規定によりその名称が公表された化学物質を含む。)以外の化学物質(以下この条において「新規化学物質」という。)を製造し、又は輸入しようとする事業者は、あらかじめ、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣の定める基準に従って有害性の調査(当該新規化学物質が労働者の健康に与える影響についての調査をいう。以下この条において同じ。)を行い、当該新規化学物質の名称、有害性の調査の結果その他の事項を厚生労働大臣に届け出なければならない。(以下略)

【労働安全衛生規則】

(有害性の調査)

第34条の3 法第57条の4第一項の規定による有害性の調査は、次に定めるところにより行わなければならない。

 変異原性試験、化学物質のがん原性に関し変異原性試験と同等以上の知見を得ることができる試験又はがん原性試験のうちいずれかの試験を行うこと。

 組織、設備等に関し有害性の調査を適正に行うため必要な技術的基礎を有すると認められる試験施設等において行うこと。

(2)誤り。塩素化ビフェニル(ポリ塩化ビフェニル)は、化学物質について、製造等を禁止する安衛法第55条(安衛令第16条)の対象となっていない。本問は、労働安全衛生法上の規制を問うているので、本肢は誤りとなる。

なお、化審法では第一種特定化学物質とされており、製造又は輸入の許可(原則禁止)、使用の制限、政令指定製品の輸入制限や第一種取扱事業者に対する基準適合義務及び表示義務等が規定されている。

【労働安全衛生法】

(製造等の禁止)

第55条 黄りんマツチ、ベンジジン、ベンジジンを含有する製剤その他の労働者に重度の健康障害を生ずる物で、政令で定めるものは、製造し、輸入し、譲渡し、提供し、又は使用してはならない。ただし、試験研究のため製造し、輸入し、又は使用する場合で、政令で定める要件に該当するときは、この限りでない。

【労働安全衛生法施行令】

(製造等が禁止される有害物等)

第16条 法第五十五条の政令で定める物は、次のとおりとする。

 黄りんマツチ

 ベンジジン及びその塩

 四―アミノジフエニル及びその塩

 石綿(次に掲げる物で厚生労働省令で定めるものを除く。)

 石綿の分析のための試料の用に供される石綿

 石綿の使用状況の調査に関する知識又は技能の習得のための教育の用に供される石綿

 イ又はロに掲げる物の原料又は材料として使用される石綿

 四―ニトロジフエニル及びその塩

 ビス(クロロメチル)エーテル

 ベータ―ナフチルアミン及びその塩

 ベンゼンを含有するゴムのりで、その含有するベンゼンの容量が当該ゴムのりの溶剤(希釈剤を含む。)の五パーセントを超えるもの

 第二号、第三号若しくは第五号から第七号までに掲げる物をその重量の一パーセントを超えて含有し、又は第四号に掲げる物をその重量の〇・一パーセントを超えて含有する製剤その他の物

 (略)

(3)誤り。石綿は、化学物質について、製造等を禁止する安衛法第55条(安衛令第16条)の対象となっている。石綿を試験研究等以外の用途のために輸入することはできない。

なお、試験研究のために輸入しようとするときは、あらかじめ都道府県労働局長の許可を得なければならない。

(4)正しい。安衛法第57条第1項は、ベンゼン等について、容器(主として一般消費者の生活の用に供するための容器を除く。)に入れて提供する場合、その容器に「名称」、「人体に及ぼす作用」及び「貯蔵又は取扱い上の注意」等を表示しなければならないとしている。従って本肢は正しい。

【労働安全衛生法】

(表示等)

第57条 爆発性の物、発火性の物、引火性の物その他の労働者に危険を生ずるおそれのある物若しくはベンゼン、ベンゼンを含有する製剤その他の労働者に健康障害を生ずるおそれのある物で政令で定めるもの又は前条第一項の物を容器に入れ、又は包装して、譲渡し、又は提供する者は、厚生労働省令で定めるところにより、その容器又は包装(容器に入れ、かつ、包装して、譲渡し、又は提供するときにあっては、その容器)に次に掲げるものを表示しなければならない。ただし、その容器又は包装のうち、主として一般消費者の生活の用に供するためのものについては、この限りでない。

 次に掲げる事項

 名称

 人体に及ぼす作用

 貯蔵又は取扱い上の注意

 イからハまでに掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項

 当該物を取り扱う労働者に注意を喚起するための標章で厚生労働大臣が定めるもの

(5)誤り。安衛法第57条第1項は、労働者に危険若しくは健康障害を生ずるおそれのある物で政令で定めるもの又は第56条第1項の物(通知対象物)について、譲渡し、又は提供する者は、文書の交付その他厚生労働省令で定める方法により、「名称」、「人体に及ぼす作用」及び「貯蔵又は取扱い上の注意」等を通知しなければならないとしている。従って本肢の前段は正しい。

しかし、「政令で定めるもの又は第56条第1項の物」の数は、数え方にもよるが、次のようになる。

① 第56条第1項のものは、安衛令第17条によって定められており、具体的には安衛令別表第三第1号の第1類物質7物質(及びこれらを一定割合で含む製剤その他の物)である。

② 政令で定める物は安衛令第18条の2に定めてあり、別表第9に定める物667物質(並びにこれら及び①の7物質を含む製剤その他の物)である(数値は2023年9月時点のもの)。

従って、674物質となる。なお、その後の省令改正により、今後約2,900物質まで増加することとされている。因みに104物質というのは、かつて表示対象だったものの数である。いずれにせよ本肢は誤っている。

【労働安全衛生法】

(文書の交付等)

第57条の2 労働者に危険若しくは健康障害を生ずるおそれのある物で政令で定めるもの又は第56条第1項の物(以下この条及び次条第1項において「通知対象物」という。)を譲渡し、又は提供する者は、文書の交付その他厚生労働省令で定める方法により通知対象物に関する次の事項(前条第2項に規定する者にあっては、同項に規定する事項を除く。)を、譲渡し、又は提供する相手方に通知しなければならない。ただし、主として一般消費者の生活の用に供される製品として通知対象物を譲渡し、又は提供する場合については、この限りでない。

 名称

 成分及びその含有量

 物理的及び化学的性質

 人体に及ぼす作用

 貯蔵又は取扱い上の注意

 流出その他の事故が発生した場合において講ずべき応急の措置

 前各号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項

 (以下略)

【労働安全衛生法施行令】

(名称等を通知すべき危険物及び有害物)

第18条の2 法第57条の2第1項の政令で定める物は、次のとおりとする。

 別表第九に掲げる物

 別表第九に掲げる物を含有する製剤その他の物で、厚生労働省令で定めるもの

 別表第三第一号1から7までに掲げる物を含有する製剤その他の物(同号8に掲げる物を除く。)で、厚生労働省令で定めるもの

2017年11月03日執筆 2023年09月05日改定