問12 有機溶剤業務に関する次の記述のうち、有機溶剤中毒予防規則上、違反となるものはどれか。ただし、同規則に定める適用除外及び設備の特例はないものとする。
(1)通風が不十分な屋内作業場で第一種有機溶剤等を用いて洗浄の業務を行わせるとき、その作業場所に局所排気装置を設け稼働させているが、労働者に送気マスク、有機ガス用防毒マスク又は有機ガス用の防毒機能を有する電動ファン付き呼吸用保護具のいずれも使用させていない。
(2)通風が不十分な屋内作業場で第二種有機溶剤等を用いて塗装の業務を行わせるとき、その作業場所にプッシュプル型換気装置を設けブース内の気流の乱れもなく稼働させているが、労働者に送気マスク、有機ガス用防毒マスク又は有機ガス用の防毒機能を有する電動ファン付き呼吸用保護具のいずれも使用させていない。
(3)地下室の内部で第三種有機溶剤等を用いて吹付けによる塗装の業務を行わせるとき、その作業場所に全体換気装置を設けて稼働させるとともに、労働者に有機ガス用防毒マスクを使用させている。
(4)地下室の内部で第三種有機溶剤等を用いて払しょくの業務を行わせるとき、その作業場所に全体換気装置を設けて稼働させるとともに、労働者に送気マスクを使用させている。
(5)有機溶剤等を入れたことのあるタンクで有機溶剤の蒸気を発散するおそれがあるものの内部において、洗浄の業務に従事する労働者に送気マスクを使用させている。
※ 本問は、出題後の有機則改正の条文に合わせるため、一部修正した。
このページは、2016年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2016年度(平成28年度) | 問12 | 難易度 | 有機則に関する基本的な知識問題である。合格のためには確実に正答できなければならない。 |
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有機溶剤中毒予防規則 | 3 |
問12 有機溶剤業務に関する次の記述のうち、有機溶剤中毒予防規則上、違反となるものはどれか。ただし、同規則に定める適用除外及び設備の特例はないものとする。
(1)通風が不十分な屋内作業場で第一種有機溶剤等を用いて洗浄の業務を行わせるとき、その作業場所に局所排気装置を設け稼働させているが、労働者に送気マスク、有機ガス用防毒マスク又は有機ガス用の防毒機能を有する電動ファン付き呼吸用保護具のいずれも使用させていない。
(2)通風が不十分な屋内作業場で第二種有機溶剤等を用いて塗装の業務を行わせるとき、その作業場所にプッシュプル型換気装置を設けブース内の気流の乱れもなく稼働させているが、労働者に送気マスク、有機ガス用防毒マスク又は有機ガス用の防毒機能を有する電動ファン付き呼吸用保護具のいずれも使用させていない。
(3)地下室の内部で第三種有機溶剤等を用いて吹付けによる塗装の業務を行わせるとき、その作業場所に全体換気装置を設けて稼働させるとともに、労働者に有機ガス用防毒マスクを使用させている。
(4)地下室の内部で第三種有機溶剤等を用いて払しょくの業務を行わせるとき、その作業場所に全体換気装置を設けて稼働させるとともに、労働者に送気マスクを使用させている。
(5)有機溶剤等を入れたことのあるタンクで有機溶剤の蒸気を発散するおそれがあるものの内部において、洗浄の業務に従事する労働者に送気マスクを使用させている。
※ 本問は、出題後の有機則改正の条文に合わせるため、一部修正した。
正答(3)
【解説】
有機溶剤中毒予防規則(以下、本問の解説中で「有機則」という。)において、労働者に対して「送気マスク、有機ガス用防毒マスク又は有機ガス用の防毒機能を有する電動ファン付き呼吸用保護具」(※)が必要となるのは、以下の場合のみである。
※ 本問の(1)及び(2)は、出題当時は「送気マスクも有機ガス用防毒マスクも使用させていなかった」とされていたが、有機則の改正に合わせて「有機ガス用の防毒機能を有する電動ファン付き呼吸用保護具」を問題文に追記している。
【送気マスク又は有機ガス用防毒マスクが必要となる作業】
① 第9条第2項(送気マスクに限る。)
タンク等の内部において有機溶剤業務に労働者を従事させる場合であって、有機溶剤業務に要する時間が短時間であり、発散源を密閉する設備、局所排気装置及びプッシュプル型換気装置を設けないとき。
② 第13条の2(送気マスク、有機ガス用防毒マスク又は有機ガス用の防毒機能を有する電動ファン付き呼吸用保護具)
発散防止抑制措置特例実施許可を受けようとする発散防止抑制措置(有機溶剤の蒸気の発散を防止し、又は抑制する設備又は装置を設置することその他の措置)に係る許可を受けるために有機溶剤の濃度の測定を行う場合であって、発散源を密閉する設備、局所排気装置及びプッシュプル型換気装置を設けないとき。
③ 第18条の2(送気マスク、有機ガス用防毒マスク又は有機ガス用の防毒機能を有する電動ファン付き呼吸用保護具)
局所排気装置の稼働の特例を受けるために有機溶剤の濃度の測定を行う場合であって、局所排気装置を制御風速未満の制御風速で稼働させるとき。
④ 第32条(送気マスクに限る。)
有機溶剤等を入れたことのあるタンク(有機溶剤の蒸気の発散するおそれがないものを除く。)の内部における業務
⑤ 第33条(有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置及びプッシュプル型換気装置を設けない場合=送気マスク、有機ガス用防毒マスク又は有機ガス用の防毒機能を有する電動ファン付き呼吸用保護具)
ア タンク等の内部において、第三種有機溶剤等に係る有機溶剤業務(前記③の作業及び吹付けによる有機溶剤業務を除く。)に労働者を従事させるときであって、全体換気装置を設けたとき。
イ 臨時に有機溶剤業務を行う事業者がタンク等の内部における当該有機溶剤業務に労働者を従事させる場合において、全体換気装置を設けたとき。
ウ タンク等の内部以外の屋内作業場等において有機溶剤業務に労働者を従事させる場合であって、当該場所における有機溶剤業務に要する時間が短時間であり、かつ、全体換気装置を設けたとき。
エ 屋内作業場等の壁、床又は天井について行う有機溶剤業務に労働者を従事させる場合において、有機溶剤の蒸気の発散面が広いため、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置及びプッシュプル型換気装置の設置が困難であり、かつ、全体換気装置を設けたとき
オ 反応槽その他の有機溶剤業務を行うための設備が常置されており、他の屋内作業場から隔離され、かつ、労働者が常時立ち入る必要がない屋内作業場において、その設備による有機溶剤業務に労働者を従事させる場合であって全体換気装置を設けたとき
カ プッシュプル型換気装置を設け、荷台にあおりのある貨物自動車等当該プッシュプル型換気装置のブース内の気流を乱すおそれのある形状を有する物について有機溶剤業務を行う屋内作業場等における業務
キ 屋内作業場等において有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備(当該設備中の有機溶剤等が清掃等により除去されているものを除く。)を開く業務
※ タンク等の内部
地下室の内部その他通風が不十分な屋内作業場、船倉の内部その他通風が不十分な船舶の内部、保冷貨車の内部その他通風が不十分な車両の内部又は以下の場所(有機則第2条第1項第1号)
① タンクの内部
② ピツトの内部
③ 坑の内部
④ ずい道の内部
⑤ 暗きよ又はマンホールの内部
⑥ 箱桁の内部
⑦ ダクトの内部
⑧ 水管の内部
⑨ 屋内作業場及び前各号に掲げる場所のほか、通風が不十分な場所
※ ここで、「通風が不十分な屋内作業場」とは、天井、床及び周壁の総表面積に対する窓その他の直接外気に向って開放しうる開口部の面積の比率が3%以下の屋内作業場をいうこと(昭和35年10月31日基発第929号)
すなわち、「有機溶剤等を入れたことのあるタンク(有機溶剤の蒸気の発散するおそれがないものを除く。)の内部における業務」を別とすれば、なんらかの理由で発散源を密閉する設備、局所排気装置及びプッシュプル型換気装置を設けない場合に、送気マスク又は有機ガス用防毒マスクが必要となるのである。
そして、「有機溶剤等を入れたことのあるタンク(有機溶剤の蒸気の発散するおそれがないものを除く。)の内部における業務」で、第1種又は第2種の有機溶剤を用いる場合については、送気マスクに限られることとなる。上記の「送気マスク又は有機ガス用防毒マスクが必要となる作業」は試験までに記憶しておく必要がある。
(1)違反とはならない。本肢は局所排気装置を設けているので、送気マスク又は有機ガス用防毒マスクを使用させなくても違反とはならない。
(2)違反とはならない。本肢では「プッシュプル型換気装置を設けブース内の気流の乱れもなく稼働させている」ので、送気マスク及び有機ガス用防毒マスクを使用させなくとも違反とはならない。
(3)違反となる。本肢の「地下室の内部」は有機則第2条第1項第一号の定義により、タンク等の内部に該当する。従って、本肢の第三種有機溶剤等を用いて吹付けによる塗装の業務は、有機則第6条第2項に該当する。
従って、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設けなければならない。全体換気装置では違反となる。
【有機溶剤中毒予防規則】
(適用の除外)
第2条 (柱書 略)
一 (前略)タンク等の内部(地下室の内部その他通風が不十分な屋内作業場、船倉の内部その他通風が不十分な船舶の内部、保冷貨車の内部その他通風が不十分な車両の内部又は前条第二項第三号から第十一号までに掲げる場所をいう。以下同じ。)(後略)。
二 (略)
2 (略)
(第三種有機溶剤等に係る設備)
第6条 事業者は、タンク等の内部において、第三種有機溶剤等に係る有機溶剤業務(第一条第一項第六号ヲに掲げる業務及び吹付けによる有機溶剤業務を除く。)に労働者を従事させるときは、当該有機溶剤業務を行う作業場所に、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置、プッシュプル型換気装置又は全体換気装置を設けなければならない。
2 事業者は、タンク等の内部において、吹付けによる第三種有機溶剤等に係る有機溶剤業務に労働者を従事させるときは、当該有機溶剤業務を行う作業場所に、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設けなければならない。
(4)違反とはならない。地下室の内部は、(3)の解説に示したように「タンク等の内部」に該当する。従って、本肢は上記④のアに該当することとなり、労働者に送気マスクを使用させているので違反とはならない。
【有機溶剤中毒予防規則】
(呼吸用保護具の使用)
第33条 事業者は、次の各号のいずれかに掲げる業務に労働者を従事させるときは、当該業務に従事する労働者に送気マスク、有機ガス用防毒マスク又は有機ガス用の防毒機能を有する電動ファン付き呼吸用保護具を使用させなければならない。
一 第六条第一項の規定により全体換気装置を設けたタンク等の内部における業務
二~七 (略)
2 (略)
(5)違反とはならない。本肢は、上記の有機則第32条に該当する。そして、労働者に送気マスクを使用させているので違反とはならない。
【有機溶剤中毒予防規則】
(定義等)
第1条 この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一~五 (略)
六 有機溶剤業務 次の各号に掲げる業務をいう。
イ~ル (略)
ヲ 有機溶剤等を入れたことのあるタンク(有機溶剤の蒸気の発散するおそれがないものを除く。以下同じ。)の内部における業務
2 (略)
(送気マスクの使用)
第32条 事業者は、次の各号のいずれかに掲げる業務に労働者を従事させるときは、当該業務に従事する労働者に送気マスクを使用させなければならない。
一 第一条第一項第六号ヲに掲げる業務
二 (略)
2 (略)