問7 常時50人以上の労働者を使用する事業場において実施する心理的な負担の程度を把握するための検査(以下「ストレスチェック」という。)及びその結果に基づく医師による面接指導等に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、正しいものはどれか。
(1)ストレスチェックは、医師、保健師又は厚生労働大臣が定める研修を受けた看護師若しくは衛生管理者が行わなければならない。
(2)事業者は、ストレスチェックを受けた労働者に対し、当該ストレスチェックを行った医師等から、遅滞なく、当該ストレスチェックの結果が通知されるようにしなければならない。
(3)事業者は、ストレスチェックを受けたすべての労働者に対し、医師による面接指導を実施しなければならない。
(4)事業者は、面接指導の結果に基づき、当該面接指導の結果の記録を作成して、これを3年間保存しなければならない。
(5)事業者は、ストレスチェック及び面接指導を実施した後、遅滞なく、心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書を所轄都道府県労働局長に提出しなければならない。
このページは、2016年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2016年度(平成28年度) | 問07 | 難易度 | ストレスチェックに関する基本的な知識問題である。確実に正答できなければならない。 |
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ストレスチェック | 3 |
問7 常時50人以上の労働者を使用する事業場において実施する心理的な負担の程度を把握するための検査(以下「ストレスチェック」という。)及びその結果に基づく医師による面接指導等に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、正しいものはどれか。
(1)ストレスチェックは、医師、保健師又は厚生労働大臣が定める研修を受けた看護師若しくは衛生管理者が行わなければならない。
(2)事業者は、ストレスチェックを受けた労働者に対し、当該ストレスチェックを行った医師等から、遅滞なく、当該ストレスチェックの結果が通知されるようにしなければならない。
(3)事業者は、ストレスチェックを受けたすべての労働者に対し、医師による面接指導を実施しなければならない。
(4)事業者は、面接指導の結果に基づき、当該面接指導の結果の記録を作成して、これを3年間保存しなければならない。
(5)事業者は、ストレスチェック及び面接指導を実施した後、遅滞なく、心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書を所轄都道府県労働局長に提出しなければならない。
正答(2)
【解説】
(1)誤り。安衛法第66条の10第1項は、「事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師、保健師その他の厚生労働省令で定める者(以下この条において「医師等」という。)による心理的な負担の程度を把握するための検査を行わなければならない」とする。
これを受けた安衛則第52条の10の規定は次のようになっている。ここには、衛生管理者は含まれていないので誤りである。そもそも、衛生管理者は“管理”を行うべき者であり、医療職ではない。衛生管理者がストレスチェックを行うことなどあり得ないことである。
【労働安全衛生法】
(心理的な負担の程度を把握するための検査等)
第66条の10 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師、保健師その他の厚生労働省令で定める者(以下この条において「医師等」という。)による心理的な負担の程度を把握するための検査を行わなければならない。
2 (以下略)
【労働安全衛生規則】
(検査の実施者等)
第52条の10 法第六十六条の十第一項の厚生労働省令で定める者は、次に掲げる者(以下この節において「医師等」という。)とする。
一 医師
二 保健師
三 検査を行うために必要な知識についての研修であつて厚生労働大臣が定めるものを修了した歯科医師、看護師、精神保健福祉士又は公認心理師
2 検査を受ける労働者について解雇、昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者は、検査の実施の事務に従事してはならない。
(2)正しい。同じく安衛則第52条の12は、この検査について「検査を受けた労働者に対し、当該検査を行った医師等から、遅滞なく、当該検査の結果が通知されるようにしなければならない」と定める。
【労働安全衛生規則】
(検査の実施者等)
第52条の12 事業者は、検査を受けた労働者に対し、当該検査を行つた医師等から、遅滞なく、当該検査の結果が通知されるようにしなければならない。
(3)誤り。安衛法第66条の10第3項は、「事業者は、前項の規定による通知を受けた労働者であって、心理的な負担の程度が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当するものが医師による面接指導を受けることを希望する旨を申し出たときは、当該申出をした労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導を行わなければならない」としている。医師による面接指導を行う対象は、「心理的な負担の程度が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当するもの」であって、「ストレスチェックを受けたすべての労働者」ではない。
なお、ここにいう「厚生労働省令で定める要件」とは、安衛則第52条の15に「法第66条の10第3項の厚生労働省令で定める要件は、検査の結果、心理的な負担の程度が高い者であって、同項に規定する面接指導(中略)を受ける必要があると当該検査を行った医師等が認めたもの」とされている。
【労働安全衛生法】
(心理的な負担の程度を把握するための検査等)
第66条の10 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師、保健師その他の厚生労働省令で定める者(以下この条において「医師等」という。)による心理的な負担の程度を把握するための検査を行わなければならない。
2 (略)
3 事業者は、前項の規定による通知を受けた労働者であつて、心理的な負担の程度が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当するものが医師による面接指導を受けることを希望する旨を申し出たときは、当該申出をした労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導を行わなければならない。この場合において、事業者は、労働者が当該申出をしたことを理由として、当該労働者に対し、不利益な取扱いをしてはならない。
4 (以下略)
【労働安全衛生規則】
(面接指導の対象となる労働者の要件)
第52条の15 法第六十六条の十第三項の厚生労働省令で定める要件は、検査の結果、心理的な負担の程度が高い者であつて、同項に規定する面接指導(以下この節において「面接指導」という。)を受ける必要があると当該検査を行つた医師等が認めたものであることとする。
(4)誤り。安衛法第66条の10第4項は、「事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、前項の規定による面接指導の結果を記録しておかなければならない」とし、これを受けた安衛則第52条の18は「事業者は、面接指導の結果に基づき、当該面接指導の結果の記録を作成して、これを五年間保存しなければならない」としている。保存すべき期間は3年ではなく5年である。
【労働安全衛生法】
(心理的な負担の程度を把握するための検査等)
第66条の10 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師、保健師その他の厚生労働省令で定める者(以下この条において「医師等」という。)による心理的な負担の程度を把握するための検査を行わなければならない。
2及び3 (略)
4 事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、前項の規定による面接指導の結果を記録しておかなければならない。
5 (以下略)
【労働安全衛生規則】
(面接指導結果の記録の作成)
第52条の18 事業者は、面接指導の結果に基づき、当該面接指導の結果の記録を作成して、これを五年間保存しなければならない。
2 (略)
(5)誤り。安衛則第52条の21は「常時50人以上の労働者を使用する事業者は、1年以内ごとに1回、定期に、心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書(様式第六号の二)を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない」としている。
報告をしなければならない事業者は「常時50人以上の労働者を使用する事業者」のみであり、報告は「1年以内ごとに1回、定期に」行えばよく「遅滞なく」行う必要はない。また、報告先は、所轄労働基準監督署長であって所轄都道府県労働局長ではない。
【労働安全衛生規則】
(検査及び面接指導結果の報告)
第52条の21 常時五十人以上の労働者を使用する事業者は、一年以内ごとに一回、定期に、心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書(様式第六号の二)を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。