労働衛生コンサルタント試験 2016年 労働衛生関係法令 問03

じん肺健康診断の実施、記録の保存




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合格

 このページは、2016年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2016年度(平成28年度) 問03 難易度 じん肺に関する基本的な知識問題である。確実に正答できるようにしておきたい。
局所排気装置の要件

問3 じん肺健康診断の実施、記録の保存などに関する次の文中の A  E に入る語句などの組合せとして、じん肺法令上、正しいものは(1)~(5)のうちどれか。

① 事業者は、粉じん作業に従事する労働者及び粉じん作業に従事する労働者であった者に対して、じん肺健康診断を行ったときは、 A があると診断された労働者について、所定の提出書に B 及びじん肺健康診断の結果を証明する書面を添えて、所轄都道府県労働局長に提出しなければならない。

② 事業者は、じん肺健康診断を行ったときは、遅滞なく、じん肺健康診断に関する記録を作成し、当該記録及びじん肺健康診断に係る B  C 年間保存しなければならない。

③ 事業者は、都道府県労働局長から労働者のじん肺管理区分の決定について通知を受けたときは、遅滞なく、当該労働者に対して、その者について決定されたじん肺管理区分及び D 事項を通知しなければならない。

また、事業者は、労働者に対してじん肺管理区分及び D 事項を通知したときは、当該通知を受けた労働者が E を受けた旨を記入し、かつ、署名又は記名押印をした書面を作成し、これを3年間保存しなければならない。

(1) 肺機能の障害 エックス線写真 その者の保健指導に係る じん肺管理区分に基づく措置
(2) 肺機能の障害 肺機能のスパイログラム その者が留意すべき じん肺管理区分に基づく措置
(3) じん肺の所見 エックス線写真 その者の保健指導に係る じん肺管理区分に基づく措置
(4) じん肺の所見 エックス線写真 その者が留意すべき 当該通知
(5) じん肺の所見 肺機能のスパイログラム その者の保健指導に係る 当該通知

正答(4)

【解説】

まず、粉じんによる障害対策の法令には、(作業環境測定法を別にして)

 安衛法 ⇒ 安衛令 ⇒ 粉じん則

 じん肺法 ⇒ じん肺法施行規則

の2つの系統があることを押さえておこう。Ⅰは粉じんによる障害の予防のための法令であり、Ⅱは、じん肺に関する健康管理のための法令であると考えておけばよい。

前問の問2はⅠに関するもので、本問はⅡに関するものである。

そして、①はじん肺法第 12 条に関するものである。第 12 条の条文から明らかなように、 A には「じん肺の所見」が入り、 B には「エックス線写真」が入る。

仮に法条文を覚えていなかったとしても、これはじん肺の管理のためのものであるから、 A に入るのが「肺機能の障害」のわけがないと分からなければならない。じん肺によらない、例えば新型コロナ肺炎による「肺機能の障害」があったとしても、じん肺対策のための管理のフローに含める必要はない。従って、ここには「じん肺の所見」が入ることが分かるだろう。

次に、 B であるが、ここに入るものは、じん肺の管理区分の決定のために必要な情報でなければならない。スパイログラムは肺の換気能力の検査であるから、それだけではじん肺の管理区分の決定には使えない。著しい肺機能の障害が認められたとしても、慢性閉塞性肺疾患や気管支喘息によるものかもしれないからである。従って、ここには「エックス線写真」が入ると分かるだろう。

なお、やや蛇足ではあるが、厳密に言えば本条の都道府県労働局長への書面の提出義務は、じん肺法第7条から9条の2までの規定によるじん肺健康診断を行ったときに関するものである。本肢の「粉じん作業に従事する労働者及び粉じん作業に従事する労働者であった者に対して、じん肺健康診断を行ったとき」であっても、それがじん肺法の第7条から9条の2までの規定によるものでなければ(事業者が法定のじん肺健康診断とは別に任意に健康診断を行ったような場合)義務はないこととなるが、受験テクニックとしてそこまで考える必要はない。

【じん肺法】

(事業者によるエックス線写真等の提出)

第12条 事業者は、第7条から第9条の2までの規定によりじん肺健康診断を行ったとき、又は前条ただし書の規定によりエックス線写真及びじん肺健康診断の結果を証明する書面その他の書面が提出されたときは、遅滞なく、厚生労働省令で定めるところにより、じん肺の所見があると診断された労働者について、当該エックス線写真及びじん肺健康診断の結果を証明する書面その他厚生労働省令で定める書面を都道府県労働局長に提出しなければならない。

次に、②はじん肺法第 17 条にかかるものである。第 17 条の条文から明らかなように、 C には「7年」が入る。これは、覚えておかなければならない。もっとも、 A  B が分かれば、正答候補は(1)と(4)に限られ、 C に入るのは「7年」しかない。

なお、②からも、 B には「エックス線写真」が入ることが分かる。

【じん肺法】

(記録の作成及び保存等)

第17条 事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、その行ったじん肺健康診断及び第11条ただし書の規定によるじん肺健康診断に関する記録を作成しなければならない。

 事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、前項の記録及びじん肺健康診断に係るエックス線写真を7年間保存しなければならない。

また、③はじん肺法第 14 条第2項及び3項にかかるものである。ここで、第 14 条第1項にいう前条第2項の決定とは「じん肺管理区分の決定」のことである。第 14 条第2項の条文から明らかなように、 D には「その者が留意すべき事項」が入る。また、同第3項にいう「その旨」とは、前項の通知をしたということであるから、 E には「当該通知」が入る。

ここで条文を覚えていなかったとしても、 D に入るものとして、「その者の保健指導に係る」では奇妙だと感じられるのではないだろうか。「その者の保健指導に係る」事項が必要なのは、保健指導を実施する側であり受ける側ではないだろう。

さらに、 E については、本人にじん肺管理区分を通知した時点では、まだ「じん肺管理区分に基づく措置」が行われているとは考えにくい。そもそも「じん肺管理区分に基づく措置」を実施せよという規定を飛び越えて、その措置を記録せよという規定があるのは、法令の条文として奇妙である。

仮に、条文を全く知らなかったとしても正答は可能な問題である。

【じん肺法】

(通知)

第14条 都道府県労働局長は、前条第2項の決定をしたときは、厚生労働省令で定めるところにより、その旨を当該事業者に通知するとともに、遅滞なく、第12条又は前条第3項若しくは第4項の規定により提出されたエックス線写真その他の物件を返還しなければならない。

 事業者は、前項の規定による通知を受けたときは、遅滞なく、厚生労働省令で定めるところにより、当該労働者(厚生労働省令で定める労働者であつた者を含む。)に対して、その者について決定されたじん肺管理区分及びその者が留意すべき事項を通知しなければならない。

 事業者は、前項の規定による通知をしたときは、厚生労働省令で定めるところにより、その旨を記載した書面を作成し、これを3年間保存しなければならない。

以上より、本問の正答は4となる。