労働衛生コンサルタント試験 健康管理 2016年 問3

ストレスチェック




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 このページは、2016年の労働安全衛生コンサルタント試験の「健康管理(記述式)」問題の解説と解答例を示しています。

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 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2016年度(平成28年度) 問 3 ストレスチェック指針に関する基本的な知識を問う問題である。時事問題といえるだろう。
ストレスチェック
2018年10月21日執筆 2020年04月22日修正

問3 厚生労働省の「心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」におけるストレスチェック制度に関し、以下の設問に答えよ。

  • (1)ストレスチェック制度の目的を簡潔に述べよ。

    • 【解説】
      本問は「心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」(以下、本問の解説中で「指針」という。)についての問題である。以下の解答例は、すべて同指針からの引用である。
      なお、この指針は頻繁に改正されている。学習するときは最新のものを参照すること。なお、厚生労働省の「ストレスチェック制度関係法令等」から参照すると間違いがないだろう。
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    • 【解答例】
      ストレスチェック制度は、メンタルヘルスケアの取組のうち、特にメンタルヘルス不調の未然防止の段階である一次予防を強化するため、定期的に労働者のストレスの状況について検査を行い、本人にその結果を通知して自らのストレスの状況について気付きを促し、個々の労働者のストレスを低減させるとともに、検査結果を集団ごとに集計・分析し、職場におけるストレス要因を評価し、職場環境の改善につなげることで、ストレスの要因そのものを低減するよう努めることを事業者に求めるものである。
      その中で、ストレスの高い者を早期に発見し、医師による面接指導につなげることで、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止することを目的としている。
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  • (2)ストレスチェック制度の実施に当たって、実施体制及び実施方法に関し、衛生委員会において審議すべき事項について、箇条書きで八つ述べよ。

    • 【解説】
      指針の5(2)に記されていることを挙げればよい。
      なお、この他、指針11の(4)のアに「集計・分析の単位が 10 人を下回る場合に」「個々の労働者 が特定されるおそれのない方法で集計・分析を実施」するときは「集計・分析の手法及び対象とする集団の規模について、あらかじめ衛生委員会等で 調査審議を行わせる必要がある」とされているが、そこまで記す必要はないだろう。
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    • 【解答例】(以下のうち8件を挙げればよい)
      (1)ストレスチェック制度の目的についての事業場内への周知の方法
      (2)ストレスチェック制度の実施体制
      (3)ストレスチェック制度の実施方法
      (4)ストレスチェック結果に基づく集団ごとの集計・分析の方法
      (5)ストレスチェックの受検の有無の情報の取扱い
      (6)ストレスチェック結果の記録の保存方法
      (7)ストレスチェック、面接指導及び集団ごとの集計・分析の結果の利用目的及び利用方法
      (8)ストレスチェック、面接指導及び集団ごとの集計・分析に関する情報の開示、訂正、追加及び削除の方法
      (9)ストレスチェック、面接指導及び集団ごとの集計・分析に関する情報の取扱いに関する苦情の処理方法
      (10)労働者はストレスチェックを受検しないことを選択できるが、受検することが望ましいという制度の趣旨を事業場内周知する方法
      (11)労働者に対する不利益な取扱いの防止
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  • (3)ストレスチェックの調査票に含まれるべき検査項目として、三つの領域を挙げよ。

    • 【解説】
      ストレスチェックの調査票には、安衛則第52条の9第1項第1号から第3号までに規定する3つの領域に関する項目が含まれていなければならない。
      この条文の項目を挙げておけばよい。なお、指針には7(9)に記されている。
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    • 【解答例】
      (1)職場における当該労働者の心理的な負担の原因に関する項目
      (2)当該労働者の心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目
      (3)職場における他の労働者による当該労働者への支援に関する項目
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  • (4)労働者の健康情報を保護する上で、ストレスチェック結果の事業者への提供に当たって、関係者が留意すべき事項を述べよ。

    • 【解説】
      指針の11(3)に従って記せばよい。参考までに指針のまま記しているが、現実には適当に省略して書くこととなろう。
      労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度に関する検討会報告書(平成26年12月)」の15頁の「イ 面接指導の結果の事業者への提供」記述も参考となろう。
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    • 【解答例】
      (1)労働者の同意の取得方法
         ストレスチェック結果が当該労働者に知らされていない時点でストレスチェック結果の事業者への提供についての労働者の同意を取得することは不適当であるため、事業者は、ストレスチェックの実施前又は実施時に労働者の同意を取得してはならないこととし、同意を取得する場合は次に掲げるいずれかの方法によらなければならないものとする。ただし、事業者は、労働者に対して同意を強要する行為又は強要しているとみなされるような行為を行ってはならないことに留意すること。
      ① ストレスチェックを受けた労働者に対して当該ストレスチェックの結果を通知した後に、事業者、実施者又はその他の実施事務従事者が、ストレスチェックを受けた労働者に対して、個別に同意の有無を確認する方法。
      ② ストレスチェックを受けた労働者に対して当該ストレスチェックの結果を通知した後に、実施者又はその他の実施事務従事者が、高ストレス者として選定され、面接指導を受ける必要があると実施者が認めた労働者に対して、当該労働者が面接指導の対象であることを他の労働者に把握されないような方法で、個別に同意の有無を確認する方法。
         なお、ストレスチェックを受けた労働者が、事業者に対して面接指導の申出を行った場合には、その申出をもってストレスチェック結果の事業者への提供に同意がなされたものとみなして差し支えない。
      (2)事業者に提供する情報の範囲
         事業者へのストレスチェック結果の提供について労働者の同意が得られた場合には、実施者は、事業者に対して当該労働者に通知する情報と同じ範囲内の情報についてストレスチェック結果を提供することができるものとする。
         なお、衛生委員会等で調査審議した上で、当該事業場における事業者へのストレスチェック結果の提供方法として、ストレスチェック結果そのものではなく、当該労働者が高ストレス者として選定され、面接指導を受ける必要があると実施者が認めた旨の情報のみを事業者に提供する方法も考えられる。ただし、この方法による場合も、実施者が事業者に当該情報を提供するに当たっては、上記の①又は②のいずれかの方法により、労働者の同意を取得しなければならないことに留意する。
      (3)外部機関との情報共有
         事業者が外部機関にストレスチェックの実施の全部を委託する場合(当該事業場の産業医等が共同実施者とならない場合に限る。)には、当該外部機関の実施者及びその他の実施事務従事者以外の者は、当該労働者の同意なく、ストレスチェック結果を把握してはならない。なお、当該外部機関の実施者が、ストレスチェック結果を委託元の事業者の事業場の産業医等に限定して提供することも考えられるが、この場合にも、緊急に対応を要する場合等特別の事情がない限り、当該労働者の同意を取得しなければならない。
      (4)事業場におけるストレスチェック結果の共有範囲の制限
         事業者は、本人の同意により事業者に提供されたストレスチェック結果を、当該労働者の健康確保のための就業上の措置に必要な範囲を超えて、当該労働者の上司又は同僚等に共有してはならない。
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  • (5)集団ごとの集計・分析における対応に関し、次の①及び②について述べよ。
    ① 集団ごとの集計・分析の結果の活用方法

    • 【解説】
      解答例の通り。
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    • 【解答例】
      ストレスチェック結果を一定規模の集団ごとに集計・分析し、その結果を勘案して、必要に応じて、当該集団の労働者の実情を考慮して、当該集団の労働者の心理的な負担を軽減するための適切な措置を講じるようにする。このほか、集団ごとの集計・分析の結果は、当該集団の管理者等に不利益が生じないようその取扱いに留意しつつ、管理監督者向け研修の実施又は衛生委員会等における職場環境の改善方法の検討等に活用する。
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  •   ② 少人数集団を対象とする際の留意点

    • 【解説】
      解答例の通り。
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    • 【解答例】
      集計・分析の単位が少人数である場合には、当該集団の個々の労働者が特定され、当該労働者個人のストレスチェック結果を把握することが可能となるおそれがあることから、集計・分析の単位が10 人を下回る場合には、集団ごとの集計・分析を実施した実施者は、集計・分析の対象となる全ての労働者の同意を取得しない限り、事業者に集計・分析の結果を提供してはならない。
      なお、個々の労働者が特定されるおそれのない方法で集計・分析を実施した場合はこの限りでないが、集計・分析の手法及び対象とする集団の規模について、あらかじめ衛生委員会等で調査審議を行わせる必要がある。
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