労働衛生コンサルタント試験 2016年 労働衛生一般 問28

安全管理における経営トップの姿勢




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合格

 このページは、2016年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2016年度(平成28年度) 問28 難易度 経営トップの姿勢についての思考問題。無難に考えれば「正答」できるだろう。
経営トップの姿勢

問28 職場の安全管理における経営トップの姿勢に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

(1)企業の安全衛生方針は、全労働者に提案を呼びかけ、投票で決定した。

(2)ライン各級監督者及びスタッフの安全に関する権限と責任を明確にした。

(3)生産と安全を一体的に進めるよう、関係者を一堂に集めて指示をした。

(4)随時に職場の巡視を行い、巡視中に現場の労働者の意見を聴いた。

(5)安全管理計画は安全担当者に作成させ、計画に盛り込む到達目標を自ら確認した。

正答(1)

【解説】

経営トップの「姿勢」のような優れて経営方針にかかわるような事項について、国家試験で適切か適切でないかを問うことには、やや違和感を感じるが試験合格のためと割り切って回答しておけばよい。

(1)試験対策上、「不適切である」と考えられる。「労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針」(平成11年4月30日労働省告示第53号(最終改正:令和元年7月1日厚生労働省告示第54号))(以下本問で「マネジメントシステム指針」という。)第6条は「労働者の意見の反映」について定めている。ところが、ここには「安全衛生目標の設定並びに安全衛生計画の作成、実施、評価及び改善に当たり、・・・(中略)・・・活用等労働者の意見を反映する手順を定めるとともに、この手順に基づき、労働者の意見を反映するものとする」とされている。すなわち、安全衛生方針については労働者の意見を反映させる対象とはされていないのである。

これは、企業の安全衛生方針は、事業者(ここでは企業のトップを指す)が自ら決定すべきものという考えに基づいている。すなわち、事業場の問題点や課題を把握し、自らの責任において、必要と考えることを方針として定めることが重要だとされているのである。従って、本肢は不適切ということになる。

もし分かりにくければ、受験テクニックとして、「目標」には労働者の意見を反映させなければならないが、「方針」には反映させないと覚えておけばよい。もちろん、現実の問題として本肢のように「方針」を投票で決定することが不適切だという科学的な根拠があるのかといわれれば、そのような根拠はないとしかいいようがない。むしろ「方針」をどのように定めるかは経営判断であって、適切とか不適切とかの問題ではないとも言い得るだろう。あくまでもコンサルタント試験に合格するためのテクニックと割り切る必要がある。

(2)適切である。権限と責任の明確化は、安全に関することのみならず、企業運営においてのあらゆる事項について必要なことであろう。不適切なはずはあるまい。

なお、マネジメントシステム指針第7条第1号には、「システム各級管理者(事業場においてその事業の実施を統括管理する者及び生産・製造部門、安全衛生部門等における部長、課長、係長、職長等の管理者又は監督者であって、労働安全衛生マネジメントシステムを担当するものをいう。以下同じ。)の役割、責任及び権限を定める」とされている。

(3)不適切とは言えない。マネジメントシステム指針第3条第1号には労働安全衛生マネジメントシステムの定義として、「事業場において、次に掲げる事項を体系的かつ継続的に実施する安全衛生管理に係る一連の自主的活動に関する仕組みであって、生産管理等事業実施に係る管理と一体となって運用されるもの」とされている。

これは、安全衛生管理全般についてもいえることである。従って本肢は適切だと言える。

(4)必ずしも不適切とは言えない。経営トップが自ら、現場を知ろうとすることは重要である。また、現場の労働者が、企業の安全衛生管理についてどのように感じているかを知ることは、安全衛生管理を実質的に役に立つものとするためにも、きわめて重要なことである。従って不適切とは言えない。

しかし、経営トップがいきなり職場巡視で労働者の意見を聞いても、労働者から本音が聞けるものではない。職場巡視で労働者の意見を聞いて、単純にそれが本音だと信じてしまうと弊害が出ることさえある。そのことは実務では認識しておくべきことである。ただ、試験ではそこまで考える必要はない。

(5)不適切とは言えない。安全衛生管理計画は、実務上の細かな事項を定めるものであるから、経営トップ自らが文章を執筆する必要はない。ただ、トップとして責任を持つべき重要な事項については、内容を確認して責任を持つ必要がある。その意味で不適切とは言えない。

2019年12月01日執筆 2020年04月20日修正