労働衛生コンサルタント試験 2016年 労働衛生一般 問27

安全衛生統計




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合格

 このページは、2016年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2016年度(平成28年度) 問27 難易度 安全衛生統計は毎年出題される。その意味で効率よく学習できる範囲であろう。確実に正答したい。
安全衛生統計

問27 厚生労働省の安全衛生統計に関する次のイ~ニの記述について、正しいもののみをすべて挙げたものは(1)~(5)のうちどれか。

イ 事業場における平成27年の定期健康診断の結果によると、血圧検査、血中脂質検査及び尿中の糖の検査の中では、血圧検査の有所見率が最も高い。

ロ 休業4日以上の業務上疾病は、平成16 年以降は、7,000 人から9,000 人の間で推移し、平成27 年は約7,400 人であり、そのうち約60 %は災害性腰痛である。

ハ じん肺管理区分の決定状況(随時申請によるものを除く。)では、じん肺の有所見者数は、過去20年間、若干の増減を繰り返しながら一定水準で推移し、平成27年は約19,000人である。

ニ 休業4日以上の死傷者数は、平成23年から平成27年は年間11万人台で推移している。

(1)イ ロ ハ ニ

(2)イ ハ

(3)イ ハ ニ

(4)ロ

(5)ロ ニ

正答(5)

【解説】

以下により(5)が正答となる。

なお、労働衛生統計については、本サイトの「最新の労働衛生の統計情報」の他、本問に関する具体的な数値は「表で見る労働災害の発生と労働衛生の状況」も参照されたい。

一般の定期健康診断の有所見率

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イ 誤り。定期健康診断結果報告による平成27年(カッコ内令和2年)の一般の定期健康診断の有所見率は、血圧が15.2%(17.9%)、血中資質が32.6%(33.3%)、尿中の糖が2.5%(3.2%)となっている。

なお、「一般の定期健康診断」はたんに「定期健康診断」と呼ばれ、「特殊(定期)健康診断」はたんに「特殊健康診断」と呼ばれることが多い。厳密な言い方ではないが、本問でもそのように表記されている。

業務上疾病の発生件数推移

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ロ 当時は正しい肢であった。業務上疾病発生状況等調査によると、平成16年以降令和元年までの休業4日以上の業務上疾病の発生件数は以下の表のようになっており、7,000人と9,000人の間で推移していた。そして、平成27年(カッコ内令和2年)における災害性腰痛の件数は4,521件(5,582件)であり、全体の61.4%(37.1%)を占めていた。

※ グラフでは令和2年(2020年)以降の新型コロナへの感染は除いている。新型コロナへの感染を含めたグラフは「労働衛生(産業保健)最新統計」を参照して頂きたい。

ところが、令和2年に保健衛生業を中心に新型コロナにより職業性疾病が激増したため、現時点では正しいとはいえなくなっている。

業務上疾病の発生件数推移

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ハ 誤り。じん肺管理区分の決定状況によるとじん肺の有所見者数は、過去20年程でみると一貫して減少しており、平成27年では1,935人となっている。

ほぼ本肢の数値よりも1桁少ない数字である。試験協会(出題者)としては、だいたいの傾向を知っていれば良く、細かな数値まで知っておく必要はないという考えなのであろう。

労働災害の推移

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ニ 正しい。休業4日以上の死傷者数は、平成23年から平成27年は年間11万人台で推移している。

※ グラフでは令和2年(2020年)以降の新型コロナへの感染による死亡災害は除いている。新型コロナへの感染を含めたグラフは「労働衛生(産業保健)最新統計」を参照して頂きたい。

労働災害の発生件数は労働衛生コンサルタント試験でも知っておかなければならない。なお、死亡災害は増減はあるもののこの間も減少傾向がみられるが、休業4日以上の災害はむしろ増加している。増加の原因は「墜落・転落」「転倒」「無理な動作・動作の反動」が増加していることによるもので、高齢化が一因である。

2019年12月01日執筆 2021年09月20日修正