労働衛生コンサルタント試験 2016年 労働衛生一般 問25

防じんマスクの性能など




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 このページは、2016年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2016年度(平成28年度) 問25 難易度 個人用保護具の基本的な問題である。確実に正答できなければならない。
防じんマスクの性能など

問25 防じんマスク(電動ファン付き呼吸用保護具を除く。)の性能などに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)マスクの捕集効率試験は、粒子の捕集効率が粒径により異なるため、捕集効率の低いとされる粒径の粒子を用いて行われる。

(2)マスクの捕集効率は、フィルタへの粉じんの堆積による変化が考慮されている。

(3)許容される粒子捕集効率の最低値は80 %であり、マスク使用時に着用者の吸入ばく露濃度を、環境濃度の20 %以下に低減できる。

(4)吸気抵抗及び排気抵抗の上限値は、等級ごとに定められており、捕集効率の高いマスクほど高い値まで許容されている。

(5)吸気抵抗及び排気抵抗の上限値は、排気弁の無い使い捨て式防じんマスクでは等しい。

正答(3)

【解説】

(1)正しい。粒子の捕集効率は粒径により異なる。粒径の大きな粒子は慣性効果やさえぎり効果など物理的な効果によって捕集するが、小さな粒子はブラウン運動をしながらフィルタを通過するときにファン・デア・ワールス力によって捕集する。

そのため、小さな粒子ほど通過しやすいというわけではなく、ある径の粒子が最も通過しやすく、それより大きくても小さくても捕集効率は上がることとなる。

かつては防塵マスクの捕集効率の試験には、2µm以下のシリカ粒子が用いられていたが、現在は最も捕集効率の悪いと言われる0.06~0.10µmのNaCl粒子又は0.15~0.25µmのDOP粒子が用いられる。

(2)正しい。マスクの捕集効率は、バグフィルタではヴァージンよりもある程度使用したものの方がよくなる。これはある程度使用したものは、すでに捕集された粒子によって、通過しようとする粒子が捕集されるからである。

そのため、マスクの捕集効率は、フィルタへの粉じんの堆積による変化が考慮されている。

(3)誤り。許容される粒子捕集効率の最低値が80%であることは正しい。しかし、マスクには必ず漏れがあるので、マスクの内側の濃度が外側の濃度の20%以下になるわけではない。

なお、保護具については本サイトの「保護具の基本(ECETOC TRAの入力項目APF を含めて)」を解説する」を参照して頂きたい。

(4)正しい。JIS T 8152には、防じんマスクの吸気抵抗、排気抵抗の上限が下記のように定められている。吸気抵抗、排気抵抗は低いほどよいのだが、捕集効率の高いマスクは、フィルターが細かくなるため、抵抗も高くならざるを得ない。

種類 等級別記号 吸気抵抗 排気抵抗 吸気抵抗
ピーク値
排気抵抗
ピーク値
取替え式 RL3,RS3 160以下 80以下 380以下 190以下
RL2,RS2 80以下 70以下 190以下 165以下
RL1,RS1 70以下 70以下 165以下 165以下
使い捨て式 排気弁
付き
DL3,DS3 150以下 80以下 355以下 190以下
DL2,DS2 70以下 70以下 165以下 165以下
DL1,DS1 60以下 60以下 145以下 145以下
排気弁
なし
DL3,DS3 100以下 100以下 240以下 240以下
DL2,DS2 50以下 50以下 120以下 120以下
DL1,DS1 45以下 45以下 110以下 110以下

(5)正しい。上表から、排気弁のない使い捨て式防じんマスクでは、吸気抵抗及び排気抵抗の上限値は等しい。排気弁のない使い捨て式防じんマスクは、吸気と排気が同じフィルタを通して行われ、排気時に開く弁がないので同じにならざるを得ない。

2019年12月01日執筆 2020年04月19日修正