問14 有害物の吸収、代謝、蓄積などに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)一酸化炭素は、赤血球中のヘモグロビンと親和性が高く、血液の酸素運搬障害を生じさせる。
(2)金属水銀は経口的に摂取されると、消化管から速やかに吸収される。
(3)ノルマルヘキサンは、肺や皮膚から吸収され、代謝されて2 , 5 − ヘキサンジオンとなる。
(4)鉛の粉じんやヒュームを吸入すると、鉛は骨に蓄積される。
(5)有機溶剤の経気道吸収は、作業者の呼吸量や肺血流量が多いほど多くなる。
このページは、2016年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
他の問題の解説をご覧になる場合は、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」か「パンくずリスト」をご利用ください。
柳川に著作権があることにご留意ください。
2016年度(平成28年度) | 問14 | 難易度 | 有害物の吸収、代謝、蓄積等に関する高度な知識問題である。医師以外の受験生には難問かもしれない。 |
---|---|---|---|
有害物の吸収、代謝、蓄積 | 5 |
問14 有害物の吸収、代謝、蓄積などに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)一酸化炭素は、赤血球中のヘモグロビンと親和性が高く、血液の酸素運搬障害を生じさせる。
(2)金属水銀は経口的に摂取されると、消化管から速やかに吸収される。
(3)ノルマルヘキサンは、肺や皮膚から吸収され、代謝されて2 , 5 − ヘキサンジオンとなる。
(4)鉛の粉じんやヒュームを吸入すると、鉛は骨に蓄積される。
(5)有機溶剤の経気道吸収は、作業者の呼吸量や肺血流量が多いほど多くなる。
正答(2)
【解説】
(1)正しい。一酸化炭素は、赤血球中のヘモグロビンと結合しやすいため、一酸化炭素を吸入すると血液の酸素運搬能力が下がる。これにより、様々な症状が発生する。軽度な場合は、頭痛、吐き気等であり、重篤になると、昏倒になり死亡することもある。一酸化炭素中毒は、無意識のうちに被災することもあるので注意が必要である。
(2)誤り。金属水銀は、経口ばく露しても、消化管(小腸)からはあまり吸収されない。
ただし、金属水銀は気化しやすい性質があり、経気道ばく露すると、肺から80%近くが吸収されるので注意を要する。
また、自然界に存在する水銀化合物で環境問題となっているメチル水銀は、100%近くが消化管から吸収される。なお、無機水銀塩は、消化管で吸収されるのは数パーセント程度である。
(3)正しい。ノルマルヘキサンは、肺や皮膚から吸収され、代謝されて2 , 5 − ヘキサンジオンとなる。そのため、ノルマルヘキサンにばく露したことを調べるための生物学的モニタリングにおいては、尿中の2 , 5 − ヘキサンジオンの検査を行う。
(4)正しい。鉛の体内動態は性差によってやや異なるが、歯及び骨に80~90%が蓄積される。
(5)正しい。有機溶剤は、気中の濃度とばく露時間だけでなく、作業者の呼吸量によっても肺内に入る化学物質の量は異なる。また、吸収された化学物質は血流によって全身の組織に分布するから、肺血流量及び各組織の血流分布が体内動態に影響を与える。
作業環境測定だけでなく生物学的モニタリングを併せて行うのはこの理由による。