労働衛生コンサルタント試験 2016年 労働衛生一般 問09

視覚




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合格

 このページは、2016年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2016年度(平成28年度) 問09 難易度 あまり出題されない範囲だがごく基礎的な知識問題である。常識で正答できるのではなかろうか。
視覚

問09 視覚に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)どの方向に視線を向けても物が明瞭に見えるのは、視細胞が網膜上に一様に並んでいるからである。

(2)乱視は、一般に、角膜のゆがみにより網膜上に正しく結像しないことにより起こる。

(3)老視(老眼)は、加齢により焦点調節機能が低下することにより起こる。

(4)視力検査には、5m視力検査のほか、30cm程度の距離で実施する近見視力検査がある。

(5)眼をカメラに例えると、水晶体はレンズ、網膜はフィルム、虹彩は絞りに相当する。

正答(1)

【解説】

本肢は、(3)と(5)は、基本的な問題である。他の肢はやや専門的な知識を問うているが、実際には常識で(1)がおかしいと気付くであろう。

(1)誤り。ありえない話である。顔の向きを変えずに視線を様々な方向に視線を向けたとしても、網膜を含めた眼球そのものが回転する。仮に、視細胞が網膜上に一様に並んでいたとしても、そのことは、様々な方向でも物が明瞭に見えることとは関係がない。

なお、網膜とはカメラでいえばフィルムの役割を果たす器官である。網膜の視細胞には、暗いところで働く捍体(杆体)細胞と、明るいところで働く錐体細胞の2種類がある。

【視細胞の個数と分布】

  • 捍体細胞は、約1億2000万個あり、網膜全体に分布しているが、黄斑部にはあまり存在していない。
  • 錐体細胞は、約600万個存在しており、黄斑部に密集して存在しており、周辺部にいくにつれてまばらとなる。

視細胞は、網膜上に一様に存在しているわけではない。そのため、周辺視野にあるものは中心部にあるものほど明瞭には見えない。

(2)正しい。乱視には正乱視と不正乱視があるが、一般に乱視といえば、正乱視のことをいう。正乱視とは、角膜または水晶体(レンズ)が、正確な球面ではないため、見ようとしている外界の物体から出た光が、眼の角膜で正確に結像しないために起きる現象である。必ずしも角膜のゆがみによるわけではないが、本肢は誤っているとまではいえないであろう。

(3)正しい。老眼とは、老化によって水晶体を調節する機能が低下し、調節できる範囲が少なくなる現象である。遠くがよく見える人は近くが見えにくくなり、近くが見える人は遠くが見えにくくなる。

(4)正しい。視力検査には、遠見視力検査と近見視力検査がある。遠見視力検査では遠見視力不良は発見できても近見視力不良の発見はできない。通常、健康診断で行われている視力検査は遠見視力検査である。しかし、近見視力不良の発見には近見視力検査を導入する必要がある。

(5)正しい。選択肢に書かれているとおりである。

2019年12月01日執筆 2020年04月18日修正