労働衛生コンサルタント試験 2016年 労働衛生一般 問04

電離放射線の被ばくの単位




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合格

 このページは、2016年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2016年度(平成28年度) 問04 難易度 電離放射線の被ばく量に関する基本的な知識問題である。やや難問だが確実に正答したい問題である。
電離放射線被ばく量

問04 電離放射線に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)放射線に関する量には、吸収線量などの物理量、実効線量などの防護量及び1cm線量当量などの実用量がある。

(2)吸収線量は、電離放射線の照射により、単位質量の物質に付与されたエネルギーをいい、単位としては㏉(グレイ)が用いられる。

(3)カーマは、間接電離放射線の照射により、単位質量の物質中に生成された荷電粒子の電荷の総和であり、単位としては㏉(グレイ)が用いられる。

(4)等価線量は、人体の特定の組織・臓器が受けた吸収線量に、放射線の種類及びエネルギーに応じて定められた放射線加重係数を乗じたもので、単位としてはSv(シーベルト)が用いられる。

(5)実効線量は、人体の各組織・臓器が受けた等価線量に、当該組織・臓器の組織加重係数を乗じ、これらを合計したもので、単位としてはSv (シーベルト)が用いられる。

正答(3)

【解説】

(1)正しい。放射線に関する量には以下のようなものがある。なお、1cm線量当量とは、個人線量当量では、人体表面上の1cmの深さにおけるICRU人体等価物質中の線量当量である。

名称 意味 具体例 単位
物理量 直接計測できる量 放射能の強さ Bq
吸収線量 Gy
防護量 人体の被ばく線量であり、直接計測できない。放射線健康リスクに関する量 実効線量 Sv
等価線量 Sv
臓器吸収線量 Gy
実用量 防護量と同様な考え方だが、物理量から定義される 周辺線量当量 Sv
方向性線量当量 Sv
個人線量当量 Sv

(2)正しい。本肢は吸収線量の定義である。

(3)誤り。カーマ(Kerma:kinetic energy released per unit mass)とは、間接電離放射線(電荷を持たない放射線)によって単位質量の物質中で生成された2次荷電粒子の初期運動エネルギーの総和である。電荷の総和ではない。なお、単位に㏉が用いられることは正しい。

カーマについて知らなくとも、電荷の総和であれば、単位はQ(クーロン)になるはずで、容易に本肢が誤り(従って正答)だと分かるのではなかろうか。

(4)正しい。本肢は等価線量の定義である。

(5)正しい。本肢は実効線量の定義である。

要は、吸収線量とは、物質に吸収された放射線のエネルギーの量のことであって、物理的な概念である。等価線量とは、放射線の種類ごとに人体が影響を受ける程度を表し、実効線量とは、さらに人体の臓器ごとの影響を考慮したものと考えておけばよい。

吸収線量は測定可能であるから、これらの量を吸収線量で表すと次のようになる。

吸収線量 = 吸収線量

※ 本式は自明であるが、厳密に言えば、人体の吸収線量は、体内の気体の吸収線量を測定し、気体に対する体内組織の阻止能比を乗ずることによって算定する。

等価線量 = 吸収線量 × 放射線加重係数

実効線量 = ∑ 吸収線量 × 放射線加重係数 × 組織加重係数

放射線の種類 放射線加重係数
ガンマ線、エックス線、ベータ線
陽子線
アルファ線、重イオン 20
中性子線 2.5~20
組織 組織加重係数
骨髄(赤色)、結腸、肺、胃、乳房、残りの組織 0.12
生殖腺 0.08
膀胱、食道、肝臓、甲状腺 0.04
骨表面、脳、唾液腺、皮膚 0.01

※ 組織の数に組織加重係数を乗じて、合計すると1.0になる。

2019年12月01日執筆 2020年04月18日修正