労働衛生コンサルタント試験 2016年 労働衛生一般 問01

労働衛生管理に用いられる統計指標




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合格

 このページは、2016年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2016年度(平成28年度) 問01 難易度 労働衛生統計に用いられる各種指標に関する基本的な知識問題。確実に正答しなければならない。
労働衛生の統計指標

問01 労働衛生管理に用いられる統計に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)健康管理統計において、一定期間に有所見が発生した人の割合を発生率といい、このデータを動態データという。

(2)正規分布に従う集団のばらつきの程度は、分散やその平方根である標準偏差で表される。

(3)集団を比較する場合、平均値が等しくても分散が明らかに異なっていると、異なった特徴を有する集団と評価される。

(4)二つの事象の間に常に相関がみられても、因果関係がないこともある。

(5)ある検査を行った場合、正常と有所見をふるい分ける判定値をスクリーニングレベルといい、スクリーニングレベルが低いと偽陽性率は低くなる。

正答(5)

【解説】

(1)正しい。最初から面食らうような選択肢である。しかし、「一定期間に有所見が発生した人の割合を発生率」というのは、「有所見が発生」という部分に日本語としてやや違和感があるが、とくに問題はないだろう。

次に、“動態データ”だが、この用語は様々な統計を見ていても、あまり目にしない言葉かもしれない。発生率や出生率、死亡率など、ある期間における変化を示すデータのことである。逆に、“静態データ”とは、有所見率や疾病率などの、ある時点における状態を示すデータのことを指す用語である。従って、本肢は正しい。

(2)正しい。正規分布に従う集団のばらつきの程度は、分散やその平方根である標準偏差で表される。

なお、標準偏差とは、正規分布曲線で、「平均値」から「曲線が上に凸から下に凸に変化する点」までの距離のことである。

(3)正しい。これも当然であろう。仮に、健康診断のある項目について、10以上が有所見になるとしよう。AとBの2つの10人の集団があり、Aは全員がその項目について8だったとする。一方、Bは、3人が2、4人は8、3人が14だったとしよう。双方とも平均値は8だが、A群には一応問題のない者のみであるが、B群の方は問題がある者が3人いる。

(4)正しい。これは当然である。本肢は正しい。よく言われるジョークで、「大勢の子供たちの足の大きさと算数の試験の結果を調べると、この2つの間には強い相関がある」というのがある。だからといって、足の大きさと算数の成績の間に因果関係はあるまい。種明かしをすれば、この「子供たち」の中には年齢の異なる子供がいるのである。年齢の高い子供は、一般に、足が大きいし、算数の問題もよく解けるから相関があるわけだ。

ニコラス・ケイジの映画出演数とプールでおぼれた人数の相関

図をクリックすると拡大します

ちなみに、相関関係はあるが因果関係があるとは思えないものを集めたtylervigen.comというサイトがある。その中で「Number of people drowned by falling into a pool(プールに落ちておぼれた人の数)」と「Films Nicolas Cage appeared in(ニコラス・ケイジが出演した映画の数」の相関関係が紹介されている。この2つの間には、かなり強い正の相関関係がある。だからといって、このことは、映画でニコラス・ケイジを見るとプールに飛び込みたくなるという証拠にはならない。

※ 図はtylervigen.com “Spurious correlations” より

(5)誤り。スクリーニングレベルが高いと、本来は陰性になるべきであるにも拘わらず陽性となるもの(偽陽性)の割合は低いが、陽性になるべきものを陰性としてしまうリスクが高くなる。一方、スクリーニングレベルが低いと、偽陽性の割合は高くなるが、陽性になるべきものを逃す割合は低くなる。従って、本肢は誤っている。

これは、本来、覚えておくべきことだが、忘れていたとしても図を書いてみれば正答できる。

スクリーニングと偽陽性
2019年12月01日執筆 2020年04月17日修正