問9 安全衛生教育に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、正しいものはどれか。
(1)有機溶剤業務及び鉛業務は、特別教育を必要とする業務とされていない。
(2)自動車整備業の事業者は、作業中の労働者を直接指導し、監督する職務に新たに就くこととなった職長及び作業主任者に対し、職長等の教育を実施しなければならない。
(3)事業者は、潜水業務に労働者を就かせるときは、当該労働者に対し、特別教育を行わなければならない。
(4)各種商品卸売業の事業者は、雇入れ時の安全衛生教育の実施に当たり、教育事項のうち作業手順及び作業開始時の点検に関する事項については省略することができる。
(5)事業者は、第1種酸素欠乏危険作業に従事する労働者に対し特別教育を実施するときは、救急そ生及び酸素濃度の測定についての実技教育を行わなければならない。
このページは、2015年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2015年度(平成27年度) | 問09 | 難易度 | 安全衛生教育に関するかなり高度な知識問題である。正答したいところではあるが、難問と言えるだろう。 |
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安全衛生教育 | 5 |
問9 安全衛生教育に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、正しいものはどれか。
(1)有機溶剤業務及び鉛業務は、特別教育を必要とする業務とされていない。
(2)自動車整備業の事業者は、作業中の労働者を直接指導し、監督する職務に新たに就くこととなった職長及び作業主任者に対し、職長等の教育を実施しなければならない。
(3)事業者は、潜水業務に労働者を就かせるときは、当該労働者に対し、特別教育を行わなければならない。
(4)各種商品卸売業の事業者は、雇入れ時の安全衛生教育の実施に当たり、教育事項のうち作業手順及び作業開始時の点検に関する事項については省略することができる。
(5)事業者は、第1種酸素欠乏危険作業に従事する労働者に対し特別教育を実施するときは、救急そ生及び酸素濃度の測定についての実技教育を行わなければならない。
正答(1)
【解説】
(1)正しい。当別教育が必要な業務は安衛則第36条に列挙されているが、有機溶剤業務及び鉛業務は、特別教育を必要とする業務とされていない。
有機則、特化則、鉛則関連で、「特別教育」と言われたら「誤り」と考えてよい。なお、安衛則第36条の規定は、比較的頻繁に変更されるので、注意すること。
【労働安全衛生法】
(安全衛生教育)
第59条 (第1項及び第2項 略)
3 事業者は、危険又は有害な業務で、厚生労働省令で定めるものに労働者をつかせるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育を行なわなければならない。
【労働安全衛生規則】
(特別教育を必要とする業務)
第36条 法第59条第三項の厚生労働省令で定める危険又は有害な業務は、次のとおりとする。
一~四十 (有機溶剤業務及び鉛業務は含まれていない。)
(2)誤り。自動車整備業は、安衛令第19条により職長等の教育を実施しなければならない業種である。しかし、そもそも作業主任者は、安衛法第60条によって職長教育の対象から除かれている。
【労働安全衛生法】
第60条 事業者は、その事業場の業種が政令で定めるものに該当するときは、新たに職務につくこととなった職長その他の作業中の労働者を直接指導又は監督する者(作業主任者を除く。)に対し、次の事項について、厚生労働省令で定めるところにより、安全又は衛生のための教育を行なわなければならない。
【労働安全衛生法施行令】
(職長等の教育を行うべき業種)
第19条 法第60条の政令で定める業種は、次のとおりとする。
一~四 (略)
五自動車整備業
六 (以下略)
(3)誤り。安衛則第36条によって、潜水業務は特別教育の対象とはされていない。
(4)誤り。安衛則第35条は、安衛令第2条第三号に掲げる業種の事業場の労働者については「作業手順及び作業開始時の点検に関する事項については省略することができる」とする。しかし、各種商品卸売業は、安衛令第2条第三号に掲げる業種に該当しない。
【労働安全衛生法】
(安全衛生教育)
第59条 事業者は、労働者を雇い入れたときは、当該労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、その従事する業務に関する安全又は衛生のための教育を行なわなければならない。
2 (以下略)
【労働安全衛生法施行令】
(総括安全衛生管理者を選任すべき事業場)
第2条 (略)
一 (略)
二製造業(物の加工業を含む。)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゆう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゆう器小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業及び機械修理業 (略)
三 (略)
【労働安全衛生規則】
(雇入れ時等の教育)
第35条 事業者は、労働者を雇い入れ、又は労働者の作業内容を変更したときは、当該労働者に対し、遅滞なく、次の事項のうち当該労働者が従事する業務に関する安全又は衛生のため必要な事項について、教育を行なわなければならない。ただし、令第2条第三号に掲げる業種の事業場の労働者については、第一号から第四号までの事項についての教育を省略することができる。
一及び二 (略)
三 作業手順に関すること。
四 作業開始時の点検に関すること。
五 (以下略)
2 (略)
※ 安衛則第35条第1項は、2024年(令和6年)4月1日より、次のように但書が削除される。
(雇入れ時等の教育)
第35条 事業者は、労働者を雇い入れ、又は労働者の作業内容を変更したときは、当該労働者に対し、遅滞なく、次の事項のうち当該労働者が従事する業務に関する安全又は衛生のため必要な事項について、教育を行なわなければならない。
一~八 (略)
2 (略)
(5)誤り。第1種酸素欠乏危険作業に従事する労働者に対する特別教育の科目は酸欠則第12条に定められている。同条において「救急そ生」については定められているが「酸素濃度の測定」については定められていない。そもそも、特別教育は作業者に対する教育なので、測定のような専門家か作業指揮者などがやるべきことの教育はなじまないのである。
そして、酸素欠乏危険作業特別教育規程は、この特別教育は学科教育によって行うとしている。従って「救急そ生及び酸素濃度の測定についての実技教育」は行う必要がないのである。
【酸素欠乏症等防止規則】
(特別の教育)
第12条 事業者は、第一種酸素欠乏危険作業に係る業務に労働者を就かせるときは、当該労働者に対し、次の科目について特別の教育を行わなければならない。
一 酸素欠乏の発生の原因
二 酸素欠乏症の症状
三 空気呼吸器等の使用の方法
四 事故の場合の退避及び救急そ生の方法
五 前各号に掲げるもののほか、酸素欠乏症の防止に関し必要な事項
2 (略)
【酸素欠乏危険作業特別教育規程】
(第一種酸素欠乏危険作業に係る特別教育)
第1条 酸素欠乏症等防止規則第12条第1項の規定による特別の教育は、学科教育により、次の表の上欄に掲げる科目に応じ、それぞれ、同表の中欄に掲げる範囲について同表の下欄に掲げる時間以上行うものとする。
(表は略)