問7 労働安全衛生法令に基づく健康診断に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)タンク等の内部以外の屋内作業場において、第3種有機溶剤等を用いて行う洗浄の作業に常時従事する労働者に対し、雇入れの際、配置換えの際及びその後6か月以内ごとに1回、定期に、有機溶剤等健康診断を行わなければならない。
(2)深夜業に従事する労働者が、事業者に実施義務がある定期健康診断以外に自発的に受けた健康診断について、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、事業者は6か月以内に行う次回の定期健康診断において、自発的健康診断で受けた項目を省略することができる。
(3)塩素化ビフェニル(PCB)を取り扱う業務に常時従事させたことのある労働者で、現に使用している労働者に対し、6か月以内ごとに1回、定期に、特定化学物質健康診断を実施しなければならない。
(4)身体に著しい振動を与える業務に常時従事する労働者に対し、特定業務従事者の健康診断として、6か月以内ごとに1回、定期に行う健康診断の項目のうち、胸部エックス線検査及び心電図検査については、1年以内ごとに1回、定期に行えば足りる。
(5)事業者が定期健康診断又は自発的健康診断の結果に基づいて行う医師からの意見聴取は、定期健康診断については、当該健康診断が行われた日から3か月以内に、自発的健康診断については、その結果を証明する書面が提出された日から2か月以内に行わなければならない。
このページは、2015年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2015年度(平成27年度) | 問07 | 難易度 | 健康診断に関するごく基本的な知識問題である。確実に正答できなければならない。 |
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健康診断 | 3 |
問7 労働安全衛生法令に基づく健康診断に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)タンク等の内部以外の屋内作業場において、第3種有機溶剤等を用いて行う洗浄の作業に常時従事する労働者に対し、雇入れの際、配置換えの際及びその後6か月以内ごとに1回、定期に、有機溶剤等健康診断を行わなければならない。
(2)深夜業に従事する労働者が、事業者に実施義務がある定期健康診断以外に自発的に受けた健康診断について、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、事業者は6か月以内に行う次回の定期健康診断において、自発的健康診断で受けた項目を省略することができる。
(3)塩素化ビフェニル(PCB)を取り扱う業務に常時従事させたことのある労働者で、現に使用している労働者に対し、6か月以内ごとに1回、定期に、特定化学物質健康診断を実施しなければならない。
(4)身体に著しい振動を与える業務に常時従事する労働者に対し、特定業務従事者の健康診断として、6か月以内ごとに1回、定期に行う健康診断の項目のうち、胸部エックス線検査及び心電図検査については、1年以内ごとに1回、定期に行えば足りる。
(5)事業者が定期健康診断又は自発的健康診断の結果に基づいて行う医師からの意見聴取は、定期健康診断については、当該健康診断が行われた日から3か月以内に、自発的健康診断については、その結果を証明する書面が提出された日から2か月以内に行わなければならない。
正答(5)
【解説】
(1)誤り。有機則第29条第1項のカッコ内の規定により、第三種有機溶剤を取り扱う業務については、タンク等の内部に限られている。従って、本肢は誤っている。第三種有機溶剤は、大量漏洩を念頭に置いた規制が中心であり、健康診断になじまないのである。
【労働安全衛生法】
(健康診断)
第66条 (略)
2 事業者は、有害な業務で、政令で定めるものに従事する労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による特別の項目についての健康診断を行なわなければならない。有害な業務で、政令で定めるものに従事させたことのある労働者で、現に使用しているものについても、同様とする。
3 (略)
【労働安全衛生法施行令】
(健康診断を行うべき有害な業務)
第22条 法第六十六条第二項前段の政令で定める有害な業務は、次のとおりとする。
一~五 (略)
六屋内作業場又はタンク、船倉若しくは坑の内部その他の厚生労働省令で定める場所において別表第六の二に掲げる有機溶剤を製造し、又は取り扱う業務で、厚生労働省令で定めるもの
2 (以下略)
【有機溶剤中毒予防規則】
(健康診断)
第29条 令第22条第1項第6号の厚生労働省令で定める業務は、屋内作業場等(第三種有機溶剤等にあっては、タンク等の内部に限る。)における有機溶剤業務のうち、第3条第一項の場合における同項の業務以外の業務とする。
2 事業者は、前項の業務に常時従事する労働者に対し、雇入れの際、当該業務への配置替えの際及びその後6月以内ごとに1回、定期に、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。
(2)誤り。このような規定はない。自発的健診の結果を提出したことで、次回の健診項目を省略できるのなら、自発的健診を受ける意味がないであろう。
なお、安衛則第45条第3項は6月以内ごとに1回定期に行わなければならない特定業務従事者の健康診断について、第44条第2項及び第3項の規定を準用している。そして、第44条第3項は、「前条、第45条の2又は法第66条第2項前段の健康診断を受けた者」について「当該健康診断の実施の日から1年間に限り、その者が受けた当該健康診断の項目に相当する項目を省略して行うことができる」としている。しかし、「前条」(第43条)は雇入れ時の健診、第45条の2は海外派遣労働者の健康診断、安衛法第66条第2項前段は特殊健康診断である。自発的健診を受診してその結果を提出したからと言って、健診項目が省略できるとする規定はない。
【労働安全衛生法】
(健康診断)
第66条 (略)
2 事業者は、有害な業務で、政令で定めるものに従事する労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による特別の項目についての健康診断を行なわなければならない。有害な業務で、政令で定めるものに従事させたことのある労働者で、現に使用しているものについても、同様とする。
3 (略)
【労働安全衛生規則】
(雇入時の健康診断)
第43条 (略)
(定期健康診断)
第44条 事業者は、常時使用する労働者(第45条第1項に規定する労働者を除く。)に対し、1年以内ごとに1回、定期に、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。
一~十一 (略)
2 第1項第3号、第4号、第6号から第9号まで及び第11号に掲げる項目については、厚生労働大臣が定める基準に基づき、医師が必要でないと認めるときは、省略することができる。
3 第1項の健康診断は、前条、第45条の2又は法第66条第2項前段の健康診断を受けた者(前条ただし書に規定する書面を提出した者を含む。)については、当該健康診断の実施の日から1年間に限り、その者が受けた当該健康診断の項目に相当する項目を省略して行うことができる。
4 (以下略)
(特定業務従事者の健康診断)
第45条 事業者は、第13条第1項第三号に掲げる業務に常時従事する労働者に対し、当該業務への配置替えの際及び6月以内ごとに1回、定期に、第44条第1項各号に掲げる項目について医師による健康診断を行わなければならない。この場合において、同項第四号の項目については、1年以内ごとに1回、定期に、行えば足りるものとする。
2 前項の健康診断(定期のものに限る。)は、前回の健康診断において第44条第1項第六号から第九号まで及び第11号に掲げる項目について健康診断を受けた者については、前項の規定にかかわらず、医師が必要でないと認めるときは、当該項目の全部又は一部を省略して行うことができる。
3 第44条第2項及び第3項の規定は、第1項の健康診断について準用する。この場合において、同条第3項中「1年間」とあるのは、「6月間」と読み替えるものとする。
4 (以下略)
(海外派遣労働者の健康診断)
第45条の2 (略)
(3)誤り。過去に常時従事させたことのある労働者で、現に使用している労働者に対して、6か月以内ごとに1回、定期に、特定化学物質健康診断を実施しなければならない業務は安衛令第22条第2項に定められている。塩素化ビフェニル(PCB)を取り扱う業務は、ここに定められていない。
【労働安全衛生法】
(健康診断)
第66条 (略)
2 事業者は、有害な業務で、政令で定めるものに従事する労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による特別の項目についての健康診断を行なわなければならない。有害な業務で、政令で定めるものに従事させたことのある労働者で、現に使用しているものについても、同様とする。
3 (略)
【労働安全衛生法施行令】
(健康診断を行うべき有害な業務)
第22条 (略)
2 法第六十六条第二項後段の政令で定める有害な業務は、次の物を製造し、若しくは取り扱う業務(略)又は石綿等の製造若しくは取扱いに伴い石綿の粉じんを発散する場所における業務とする。
一~二十四 (これらには塩素化ビフェニルは定められていない)
3 (略)
(4)誤り。身体に著しい振動を与える業務に常時従事する労働者に対する特定業務従事者の健康診断は、安衛則第45条に規定されている。本条において、「胸部エックス線検査及び喀痰検査」は1年以内ごとに1回、定期に行えば足りることとされているが、心電図検査についてはそのような規定はなく、6月以内ごとに1回、定期に行わなければならない。
なお、本条の安衛法上の根拠条文は第66条第1項であり、第2項ではないので念のため。
【労働安全衛生規則】
(産業医の選任)
第13条 (略)
一及び二 (略)
三 (略)
イ~ホ (略)
ヘ さく岩機、鋲打機等の使用によって、身体に著しい振動を与える業務
ト~カ (略)
四 (略)
2 (以下略)
(定期健康診断)
第44条 (略)
一~三 (略)
四 胸部エックス線検査及び喀痰検査
五~十 (略)
十一 心電図検査
2 (以下略)
(特定業務従事者の健康診断)
第45条 事業者は、第13条第1項第三号に掲げる業務に常時従事する労働者に対し、当該業務への配置替えの際及び6月以内ごとに1回、定期に、第44条第1項各号に掲げる項目について医師による健康診断を行わなければならない。この場合において、同項第四号の項目については、1年以内ごとに1回、定期に、行えば足りるものとする。
2 (以下略)
(5)正しい。安衛則第51条の2は、安衛法第66条の健康診断の結果については3月以内に医師からの意見聴取をすることとされており、労働安全衛生法第66条の2の自発的健康診断については、その結果を証明する書面が提出された日から2か月以内に行わなければならないとする。
【労働安全衛生法】
(健康診断)
第66条 (条文略)
(自発的健康診断の結果の提出)
第66条の2 (条文略)
(健康診断の結果についての医師等からの意見聴取)
第66条の4 事業者は、第66条第1項から第4項まで若しくは第5項ただし書又は第66条の2の規定による健康診断の結果(当該健康診断の項目に異常の所見があると診断された労働者に係るものに限る。)に基づき、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、厚生労働省令で定めるところにより、医師又は歯科医師の意見を聴かなければならない。
【労働安全衛生規則】
(健康診断の結果についての医師等からの意見聴取)
第43条 (略)
(定期健康診断)
第51条の2 第43条等の健康診断の結果に基づく法第66条の4の規定による医師又は歯科医師からの意見聴取は、次に定めるところにより行わなければならない。
一 第43条等の健康診断が行われた日(法第66条第5項ただし書の場合にあっては、当該労働者が健康診断の結果を証明する書面を事業者に提出した日)から3月以内に行うこと。
二 (略)
2 法第66条の2の自ら受けた健康診断の結果に基づく法第六十六条の四の規定による医師からの意見聴取は、次に定めるところにより行わなければならない。
一 当該健康診断の結果を証明する書面が事業者に提出された日から2月以内に行うこと。
二 (略)
3 (略)