労働衛生コンサルタント試験 2015年 労働衛生関係法令 問01

事業場の安全衛生管理体制




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 このページは、2015年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2015年度(平成27年度) 問01 難易度 労働安全衛生管理体制に関するごく基本的な知識問題である。本問は正答できる必要がある。
労働安全衛生管理体制

問1 事業場の安全衛生管理体制に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、正しいものはどれか。

(1)事業者は、常時使用する労働者数が2000 人の製造業の事業場では、第1種衛生管理者免許若しくは衛生工学衛生管理者免許を有する者又は医師、歯科医師若しくは労働衛生コンサルタントのうちから、衛生管理者を4人以上選任し、そのうち医師、歯科医師又は労働衛生コンサルタント以外の衛生管理者については、当該事業場に専属の者としなければならない。

(2)事業者は、常時使用する労働者数が1000人以上又は化学物質の製造、取扱い等の有害業務に従事する労働者数が500人以上の事業場では、当該事業場に専属の産業医を2人以上選任しなければならない。

(3)事業者は、作業環境測定法に規定する指定作業場を有する事業場では、衛生委員会の委員として、当該事業場において作業環境測定を実施している作業環境測定機関の作業環境測定士を指名することができる。

(4)産業医は、少なくとも毎月1回作業場等を巡視し、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、総括安全衛生管理者に勧告し、当該総括安全衛生管理者の指示に基づいて労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。

(5)事業者は、産業医の選任を要しない事業場では、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識を有する医師又は労働者の健康管理等を行うのに必要な知識を有する保健師に、労働者の健康管理等の全部又は一部を行わせるように努めなければならない。

正答(5)

【解説】

(1)誤り。本肢の事業者は、常時使用する労働者数が2,000人の製造業であるから安衛則第7条第1項(第4号)の規定により、4人の衛生管理者を選任しなければならない。この点は正しい。

しかし、同項(第2号)の規定により、この4人のうち1人の労働衛生コンサルタント以外の衛生管理者については、当該事業場に専属の者としなければならない。医師又は歯科医師については専属の者としなければならず、労働衛生コンサルタントも1人を除いては専属の者としなければならない。従って、本肢は誤りとなる。

なお、安衛則第10条は、衛生管理者の資格として「前三号に掲げる者のほか、厚生労働大臣の定める者」を定めるが、本肢にはその記述もなく、その意味でも誤りとなる。

【労働安全衛生法】

(衛生管理者)

第12条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、都道府県労働局長の免許を受けた者その他厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該事業場の業務の区分に応じて、衛生管理者を選任し、その者に第十条第一項各号の業務(第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第一項各号の措置に該当するものを除く。)のうち衛生に係る技術的事項を管理させなければならない。

 (略)

【労働安全衛生法施行令】

(衛生管理者を選任すべき事業場)

第4条 法第12条第1項の政令で定める規模の事業場は、常時50人以上の労働者を使用する事業場とする。

【労働安全衛生規則】

(衛生管理者の選任)

第7条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、都道府県労働局長の免許を受けた者その他厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該事業場の業務の区分に応じて、衛生管理者を選任し、その者に第十条第一項各号の業務(第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第一項各号の措置に該当するものを除く。)のうち衛生に係る技術的事項を管理させなければならない。

 (略)

 その事業場に専属の者を選任すること。ただし、2人以上の衛生管理者を選任する場合において、当該衛生管理者の中に第10条第三号に掲げる者がいるときは、当該者のうち1人については、この限りでない。

 次に掲げる業種の区分に応じ、それぞれに掲げる者のうちから選任すること。

 農林畜水産業、鉱業、建設業、製造業(物の加工業を含む。)、電気業、ガス業、水道業、熱供給業、運送業、自動車整備業、機械修理業、医療業及び清掃業 第一種衛生管理者免許若しくは衛生工学衛生管理者免許を有する者又は第十条各号に掲げる者

 その他の業種 第一種衛生管理者免許、第二種衛生管理者免許若しくは衛生工学衛生管理者免許を有する者又は第十条各号に掲げる者

 次の表の上欄に掲げる事業場の規模に応じて、同表の下欄に掲げる数以上の衛生管理者を選任すること。

事業場の規模
(常時使用する労働者数)
衛生管理者数
五十人以上二百人以下 一人
二百人を超え五百人以下 二人
五百人を超え千人以下 三人
千人を超え二千人以下 四人
二千人を超え三千人以下 五人
三千人を超える場合 六人

五及び六 (略)

 (略)

(衛生管理者の資格)

第10条 法第十二条第一項の厚生労働省令で定める資格を有する者は、次のとおりとする。

 医師

 歯科医師

 労働衛生コンサルタント

 前三号に掲げる者のほか、厚生労働大臣の定める者

(2)誤り。事業者は、常時使用する労働者数が1000人以上又は一定の有害な化学物質の製造、取扱い等の有害業務に従事する労働者数が500人以上の事業場では、当該事業場に専属の産業医をしなければならない。すべての化学物質の製造、取扱い等の有害業務に従事する労働者が500人以上の事業場ではない。

また、産業医を2人以上選任しなければならないのは、安衛則第13条第1項(第3号)の規定により、常時3,000人をこえる労働者を使用する事業場である。従って、本肢は誤りとなる。

【労働安全衛生規則】

第13条 法第13条第1項の規定による産業医の選任は、次に定めるところにより行わなければならない。

一及び二 (略)

 常時1,000人以上の労働者を使用する事業場又は次に掲げる業務に常時500人以上の労働者を従事させる事業場にあっては、その事業場に専属の者を選任すること。

 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務

 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務

 ラジウム放射線、エックス線その他の有害放射線にさらされる業務

 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務

 異常気圧下における業務

 さく岩機、鋲打機等の使用によって、身体に著しい振動を与える業務

 重量物の取扱い等重激な業務

 ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務

 坑内における業務

 深夜業を含む業務

 水銀、砒素、黄りん、弗化化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務

 鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務

 病原体によって汚染のおそれが著しい業務

 その他厚生労働大臣が定める業務

 常時三千人をこえる労働者を使用する事業場にあつては、二人以上の産業医を選任すること。

(3)誤り。事業者は、作業環境測定法に規定する指定作業場を有する事業場では、安衛法第18条第3項の規定により衛生委員会の委員として、当該事業場において作業環境測定を実施しているその事業場の作業環境測定士を指名することができる。しかしながら作業環境測定機関の作業環境測定士を指名することはできない。従って、本肢は誤りとなる。

なお、衛生委員会の構成員は同条第2項によって限定されているが、トップと産業医の他は、すべてその事業場の労働者である。作業環境測定機関の測定士を衛生委員会に参加させたければオブザーバとするしかない。

また、衛生委員会の構成員は同条第2項の第一号から第三号の者は、各号から少なくとも1名(第一号は1名のみ)は指名しなければならない。

【労働安全衛生法】

(衛生委員会)

第18条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、次の事項を調査審議させ、事業者に対し意見を述べさせるため、衛生委員会を設けなければならない。

一~四 (略)

 衛生委員会の委員は、次の者をもつて構成する。ただし、第一号の者である委員は、一人とする。

 総括安全衛生管理者又は総括安全衛生管理者以外の者で当該事業場においてその事業の実施を統括管理するもの若しくはこれに準ずる者のうちから事業者が指名した者

 衛生管理者のうちから事業者が指名した者

 産業医のうちから事業者が指名した者

 当該事業場の労働者で、衛生に関し経験を有するもののうちから事業者が指名した者

 事業者は、当該事業場の労働者で、作業環境測定を実施している作業環境測定士であるものを衛生委員会の委員として指名することができる。

 (略)

(4)誤り。産業医は、原則として毎月1回作業場等を巡視し、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。総括安全衛生管理者に勧告し、当該総括安全衛生管理者の指示に基づいて措置を講じるのではない。従って、本肢は誤りとなる。

なお、この問題は2015年のものであるが、現在は、産業医の月1回の巡視は一定の要件のもとに2月に1回に緩和されており、現時点では、その意味でも誤りとなる。

【労働安全衛生規則】

(産業医の定期巡視及び権限の付与)

第15条 産業医は、少なくとも毎月1回(産業医が、事業者から、毎月一回以上、次に掲げる情報の提供を受けている場合であって、事業者の同意を得ているときは、少なくとも2月に1回)作業場等を巡視し、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。

 第11条第1項の規定により衛生管理者が行う巡視の結果

 前号に掲げるもののほか、労働者の健康障害を防止し、又は労働者の健康を保持するために必要な情報であって、衛生委員会又は安全衛生委員会における調査審議を経て事業者が産業医に提供することとしたもの

 (略)

(5)正しい。安衛法第13条の2及び安衛則第15条の2第1項の規定により、正しい。

【労働安全衛生法】

第13条の2 事業者は、前条第1項の事業場(産業医を選任すべき事業場:引用者)以外の事業場については、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識を有する医師その他厚生労働省令で定める者に労働者の健康管理等の全部又は一部を行わせるように努めなければならない。

【労働安全衛生規則】

第15条の2 法第十三条の二第一項の厚生労働省令で定める者は、労働者の健康管理等を行うのに必要な知識を有する保健師とする。

2及び3 (略)

2017年11月03日執筆 2020年05月01日修正