問30 厚生労働省の「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針」に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)化学物質等により生ずるおそれのある負傷又は疾病の重篤度及び発生する可能性の度合の組合せにより、ハザードの見積りを実施する。
(2)この指針による調査等には、リスク低減措置の内容の検討と実施が含まれる。
(3)「化学品の分類および表示に関する世界調和システム(GHS)」による分類等に則して、各作業の危険性又は有害性を特定する。
(4)化学物質等への労働者のばく露濃度等を測定し、測定結果を当該化学物質のばく露限界(日本産業衛生学会の「許容濃度」等)と比較することにより、リスクの見積りを行うことができる。
(5)リスクの見積りを実施する際には、作業手順の逸脱、操作ミスなどの予見可能な誤使用又は危険行動の可能性を考慮する。
このページは、2015年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2015年度(平成27年度) | 問30 | 難易度 | 化学物質RA指針に関するごく基本的な知識問題である。確実に正答できなければならない。 |
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化学物質RA指針 | 1 |
問30 厚生労働省の「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針」に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)化学物質等により生ずるおそれのある負傷又は疾病の重篤度及び発生する可能性の度合の組合せにより、ハザードの見積りを実施する。
(2)この指針による調査等には、リスク低減措置の内容の検討と実施が含まれる。
(3)「化学品の分類および表示に関する世界調和システム(GHS)」による分類等に則して、各作業の危険性又は有害性を特定する。
(4)化学物質等への労働者のばく露濃度等を測定し、測定結果を当該化学物質のばく露限界(日本産業衛生学会の「許容濃度」等)と比較することにより、リスクの見積りを行うことができる。
(5)リスクの見積りを実施する際には、作業手順の逸脱、操作ミスなどの予見可能な誤使用又は危険行動の可能性を考慮する。
正答(1)
【解説】
(1)誤り。ハザードとは「危険性又は有害性」のことである。化学物質等により生ずるおそれのある負傷又は疾病の重篤度及び発生する可能性の度合の組合せによって評価するのはリスクであってハザードではない。
これは、ケアレスミスをしなければ正答できる問題といえよう。逆に言えば、このような問題を落としてはいけない。
(2)正しい。「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針(通達)」には冒頭の「1 趣旨等」に「危険性又は有害性等の調査(以下「リスクアセスメント」という。)」とある。また、「4 実施体制等」にリスクアセスメント及びリスク低減措置(以下「リスクアセスメント等」という。)とされている。
すなわち
危険性又は有害性 = ハザード
危険性又は有害性等 = リスク
危険性又は有害性等の調査 = リスクアセスメント
危険性又は有害性等の調査 + リスク低減措置 =リスクアセスメント等
となっている。つまり、“リスク低減措置の内容の検討”は「リスクアセスメント」に含まれ、“リスク低減措置の実施”は「等」の方に含まれるわけである。
言葉遊びのように思われるかもしれないが、「リスクアセスメント」は安衛法第57条の2第1項に基づく法的な義務であり「等」の方は(他に法的な義務として規定されている措置は別として)同条第2項による努力義務になるので、コンサルタントとしては知っておくべきことである。
(3)正しい。「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針」の「8 危険性又は有害性の特定」により、本肢は正しい。
【化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針】
8 危険性又は有害性の特定
事業者は、化学物質等について、リスクアセスメント等の対象となる業務を洗い出した上で、原則としてア及びイに即して危険性又は有害性を特定すること。また、必要に応じ、ウに掲げるものについても特定することが望ましいこと。
ア 国際連合から勧告として公表された「化学品の分類及び表示に関する世界調和システム(GHS)」(以下「GHS」という。)又は日本工業規格Z7252に基づき分類された化学物質等の危険性又は有害性(SDSを入手した場合には、当該SDSに記載されているGHS分類結果)
イ 日本産業衛生学会の許容濃度又は米国産業衛生専門家会議(ACGIH)のTLV-TWA等の化学物質等のばく露限界(以下「ばく露限界」という。)が設定されている場合にはその値(SDSを入手した場合には、当該SDSに記載されているばく露限界)
ウ ア又はイによって特定される危険性又は有害性以外の、負傷又は疾病の原因となるおそれのある危険性又は有害性。この場合、過去に化学物質等による労働災害が発生した作業、化学物質等による危険又は健康障害のおそれがある事象が発生した作業等により事業者が把握している情報があるときには、当該情報に基づく危険性又は有害性が必ず含まれるよう留意すること。
(4)正しい。これは、「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針」の「9 リスクの見積り」の(1)のイに示された方法である。
(5)正しい。これは、「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針」の「9 リスクの見積り」の(4)のウに示されている。
【化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針】
9 リスクの見積り
(4)事業者は、一定の安全衛生対策が講じられた状態でリスクを見積もる場合には、用いるリスクの見積り方法における必要性に応じて、次に掲げる事項等を考慮すること。
ア 安全装置の設置、立入禁止措置、排気・換気装置の設置その他の労働災害防止のための機能又は方策(以下「安全衛生機能等」という。)の信頼性及び維持能力
イ 安全衛生機能等を無効化する又は無視する可能性
ウ 作業手順の逸脱、操作ミスその他の予見可能な意図的・非意図的な誤使用又は危険行動の可能性
エ 有害性が立証されていないが、一定の根拠がある場合における当該根拠に基づく有害性