問28 安全衛生管理体制に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。
(1)ライン型は、安全衛生管理活動を生産ラインにおいて完結させようとするものである。
(2)ライン型は、スタッフ型に比べて、日常の業務に追われて安全衛生知識や安全衛生情報を自ら身に付けることが難しく、それぞれのラインの管理・監督者の安全衛生指導能力で格差が生じやすい。
(3)スタッフ型は、ライン型に比べて、生産ラインにおける安全衛生活動についての指導が難しい場合がある。
(4)スタッフ型は、安全衛生管理活動を、安全衛生管理を担当している部署に所属するスタッフが中心となって行うものである。
(5)スタッフ型は、ライン型に比べ、一般に、事業場の生産活動の中で生じる不安全状態を把握しやすい利点がある。
このページは、2015年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2015年度(平成27年度) | 問28 | 難易度 | 安全衛生管理体制に関する基本的な知識問題である。確実に正答できなければならない。 |
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安全衛生管理体制 | 2 |
問28 安全衛生管理体制に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。
(1)ライン型は、安全衛生管理活動を生産ラインにおいて完結させようとするものである。
(2)ライン型は、スタッフ型に比べて、日常の業務に追われて安全衛生知識や安全衛生情報を自ら身に付けることが難しく、それぞれのラインの管理・監督者の安全衛生指導能力で格差が生じやすい。
(3)スタッフ型は、ライン型に比べて、生産ラインにおける安全衛生活動についての指導が難しい場合がある。
(4)スタッフ型は、安全衛生管理活動を、安全衛生管理を担当している部署に所属するスタッフが中心となって行うものである。
(5)スタッフ型は、ライン型に比べ、一般に、事業場の生産活動の中で生じる不安全状態を把握しやすい利点がある。
正答(5)
【解説】
本問は、第43回(2015年度)労働安全コンサルタント試験(産業安全一般)の問1と全く同じ問題である。
1 ライン型安全管理とスタッフ型安全管理
ライン型安全管理とスタッフ型安全管理については、その定義・意味とそれぞれのメリット、デメリットを把握しておく必要がある。
ここにいうライン(※)とは、それぞれの企業の本来業務=製造業であれば製造業務=に関する、トップから製造現場までの指揮系統の流れのことである。すなわち、トップ⇒製造部長⇒●●製造課長⇒○○製造係長⇒△△組長⇒◇◇班長⇒工員などの流れがラインであり、その中の各級管理者がライン管理者である。ラインを“製造ライン”のことだと誤解しそうな解説をしているテキストを見かけることがあるが適切ではない。
※ 元々の「ライン」という用語は、戦闘部隊を意味する軍事用語である。軍の本来の目的である「戦闘」を直接行う部隊がラインだったのである。
一方、スタッフ(※)とは、業務ラインから独立した専門スタッフのことである。すなわち、総務部や安全部などに配置されている専門スタッフである。安全衛生の専任でなくても、その事業場の本来の事業に直接かかわる業務以外の業務(人事や経理などの間接業務)を主に行っていて、仕事の一部に安全衛生が含まれていればスタッフとなる。
※ 「スタッフ」という用語も軍事用語であり、架橋や地雷の除去などを行う工兵部隊、通信ラインの敷設などを行う通信部隊、補給に携わる輜重部隊など、ラインを支援する部隊(サービススタッフ)を指す言葉であった。後に、指揮官に対して、専門的な助言を行う参謀もスタッフ(管理スタッフ)と呼ばれるようになった。
企業の安全衛生管理体制分野においては、かつては「スタッフ」は間接部門、「ライン」は直接部門を指す言葉であったが、現在では、本文に示したような理解をされていることが多い。
2 ライン型安全管理とスタッフ型安全管理の特徴
ライン型安全管理は、ライン管理者によって安全管理を行おうとするものである。ライン管理者は現場の状況を把握して安全管理を行うことができ、また指示・命令も伝わりやすい。しかし、その反面、個々の管理者の熱意や知識、指導能力などによって実際の効果が左右されることがある。
一方、スタッフ型安全管理では、スタッフはライン管理者と比較すれば専門知識を有していることが多いものの、現場の実態と遊離するおそれがあり、また指示・命令が効果的に伝わりにくいという面がある。
3 参考となる文献
なお、本問は、日本労働安全衛生コンサルタント会の機関誌「安全衛生コンサルタント」に、2000年に連載された、野原石松「安全管理基礎講座(Ⅲ)労働衛生コンサルタントのための『安全管理』」(以下本問の解説において「野原」と記す。)からの出題のようだ。
(1)適切である。野原によると、ライン型について「安全管理の計画から実施に至るまですべてを生産ラインを通して行うものである」とされている。従って本肢は適切でないとはいえないだろう。
(2)適切である。野原によると、「ライン各級の管理、監督者は、日常、生産業務に追われがちであり、安全についての新しい情報や知識を吸収することができない」とされている。また、各級管理者の指導能力によって効果が左右されやすいことも事実である。従って本肢は適切でないとはいえない。
(3)適切である。スタッフ型は、ライン型と異なり通常業務の命令系統とは異なるところから指示が発せられるため、現場の受け取り方によってはおざなりに扱われるおそれがある。
(4)適切である。スタッフ型安全管理は、本肢のように行われるものである。従って本肢は適切でないとはいえない。
(5)適切ではない。スタッフはライン各級管理者に比較すれば、現場と直結しているわけではないので、生産活動の中で生じている個々の具体的な不安全状態を把握しにくい面がある。