労働衛生コンサルタント試験 2015年 労働衛生一般 問06

酸素欠乏と硫化水素




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合格

 このページは、2015年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2015年度(平成27年度) 問06 難易度 酸素欠乏と硫化水素に関する基本的な知識問題。確実に正答できなければならない。
酸素欠乏と硫化水素

問06 酸素欠乏と硫化水素に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

(1)酸素欠乏とは、空気中の酸素濃度が18 %未満の状態のことをいう。

(2)肺に吸入された酸素は、肺胞膜と毛細血管壁を通過して血中のヘモグロビンと結合する。

(3)硫化水素は、空気より重いので、暗きょ、ピットなどに溜まりやすい。

(4)硫化水素は、眼や気道の粘膜の水分に溶けて炎症を起こす。

(5)硫化水素の不快臭は、濃度が高いほど強く感じる。

正答(5)

【解説】

(1)適切である。酸素欠乏症等防止規則第2条第1号によれば、酸素欠乏とは「空気中の酸素の濃度が18パーセント未満である状態をいう」とされている。従って本肢は正しい。

【酸素欠乏症等防止規則】

(定義)

第2条 この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

 酸素欠乏 空気中の酸素の濃度が十八パーセント未満である状態をいう。

 (以下略)

(2)適切である。これは特に解説するまでもないであろう。

肺門から気道を通って肺胞に入った入った空気は、肺胞の周囲を取りまく肺動脈や肺静脈につながる毛細血管との間で酸素と二酸化炭素のガス交換が行われる。

肺動脈中の静脈血の酸素分圧は40mmHg、二酸化炭素分圧は46mmHg程度である。一方、肺胞内の酸素分圧は100mmHg、二酸化炭素分圧は40mmHgである。血管内と比べると、肺胞内は酸素が多く、二酸化炭素が少ない。そのため、拡散の法則によって、肺から血液へと酸素が移動し、血液から肺へと二酸化炭素が移動する。そして、血液内へ移動した酸素は赤血球中のヘモグロビンと結合するのである。

ここまで細かい理論は覚える必要はないが、本肢に書かれていることは基本的な衛生管理者のテキストには必ず書かれている。

(3)適切である。硫化水素の分子量は約34.1g/molであり、空気の分子量は約28.8g/molである。正確な分子量まで覚えておく必要はないが、硫化水素の方が重いことは知っておく必要がある。

そのため、硫化水素は暗きょ、ピットなどに溜まりやすい。温泉地にあるスキー場でスキーヤーが窪地に入って硫化水素中毒になる事故(※)がときどき発生するのもこのためである。

※ 田所作太郎「火山性硫化水素の毒性をめぐって」(化学と生物 Vol.11,No.11 2009年)など参照

(4)適切である。硫化水素は水に溶けやすいため粘膜の水分に溶け、比較的低濃度で眼、気道、皮膚粘膜を刺激する。

(5)適切ではない。硫化水素は、ある程度の高濃度になると嗅覚がマヒしてかえって臭いが感じられなくなる。濃度0.3ppm程度では不快な臭いを感じるが、20~30ppm程度で臭細胞が疲労して臭覚がマヒし始める。100ppmでは臭細胞がマヒして不快臭がかえって緩和される。

2019年12月01日執筆 2020年05月04日修正