労働衛生コンサルタント試験 2015年 労働衛生一般 問04

電離放射線による被ばく




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 このページは、2015年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2015年度(平成27年度) 問04 難易度 電離放射線への被ばくに関するやや高度な知識問題。頻出事項であり、確実に正答したい。
電離放射線への被ばく

問04 電離放射線に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)実効線量は、人体の各組織・臓器が受けた等価線量に係数(組織加重係数)を乗じたものを加算することにより求められる。

(2)放射線による白内障は、確定的影響である。

(3)吸収線量の単位はグレイ(Gy)で、カーマの単位はシーベルト(Sv)である。

(4)皮膚の等価線量は、中性子線の場合を除き、70μm線量当量で算定される。

(5)放射線による白血病は、確率的影響である。

正答(3)

【解説】

(1)正しい。実効線量とは、人体の受ける放射線量を健康影響によって評価したものと考えることができる。以下に示すように、本肢は正しい。

すなわち、

① 吸収線量とは、物質に吸収された放射線のエネルギーの量のことであって、物理的な概念である。

② 等価線量とは、放射線の種類ごとに人体が影響を受ける程度を表したものである。

③ 実効線量とは、さらに人体の臓器ごとの影響を考慮したものと考えておけばよい。

吸収線量は測定可能であるから、これらの量を吸収線量で表すと次のようになる。

吸収線量 = 吸収線量

※ 本式は自明であるが、厳密に言えば、人体の吸収線量は、体内の気体の吸収線量を測定し、気体に対する体内組織の阻止能比を乗ずることによって算定する。

等価線量 = 吸収線量 × 放射線加重係数

実効線量 = ∑ 吸収線量 × 放射線加重係数 × 組織加重係数

放射線の種類 放射線加重係数
ガンマ線、エックス線、ベータ線
陽子線
アルファ線、重イオン 20
中性子線 2.5~20
組織 組織加重係数
骨髄(赤色)、結腸、肺、胃、乳房、残りの組織 0.12
生殖腺 0.08
膀胱、食道、肝臓、甲状腺 0.04
骨表面、脳、唾液腺、皮膚 0.01

※ 組織の数に組織加重係数を乗じて、合計すると1.0になる。

(2)正しい。確定的影響では、受けた放射線の量によって、影響の重篤度が変わる。また、閾値が存在し、閾値よりも受けた射線の量が少ないと影響がないと考えられている。

放射線によって、組織維持の要である細胞集団が傷つくことによって生じる。嘔吐、脱毛、造血機能の低下、不妊などの急性障害と白内障が確定的影響である。

なお、白内障は晩発的影響であるが、確定的影響であることに留意すること。

(3)誤り。吸収線量とは(1)の解説に述べたように、放射線の照射によって物質の単位質量あたりに吸収されるエネルギー量であり、単位はグレイ(Gy = J/Kg)で表される。一方、カーマとは非荷電の放射線照射の一次効果によって物質の単位質量あたりに発生する荷電粒子の運動エネルギーの総量であり、単位は(Gy)である。

(4)正しい。「放射線を放出する同位元素の数量等を定める件」(平成12年科学技術庁告示第5号)第20条第2項第1号によれば「皮膚の等価線量は、七十マイクロメートル線量当量とすること」とされている。

要は、等価線量を実際に求めることは困難なため、皮膚の表面からの距離が70µmの部位の線量当量を、皮膚の等価線量とみなすわけである。

(5)正しい。確率的影響では、受けた放射線の量によって、影響を受ける確率が変わる。放射線の量によって重篤度が変わるわけではない。閾値は存在しないと考えており、微量でも影響が出ると考えられている。

白内障以外の晩発性障害(白血病やがん)と遺伝障害が確率的影響である。

2019年12月01日執筆 2020年05月03日修正