問15 石綿障害予防のため事業者が講ずべき措置等に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、誤っているものはどれか。
(1)建設業の事業者は、耐火建築物又は準耐火建築物に吹き付けられた石綿等の除去作業の仕事を行うときは、その仕事の開始の日の14日前までに、その計画を所轄労働基準監督署長に届け出なければならない。
(2)石綿等の取扱いに伴い石綿の粉じんを発散する場所において常時作業に従事する労働者について、1か月を超えない期間ごとに、石綿等の取扱い作業の概要、作業に従事した期間等の所定の事項を記録し、これを当該労働者が当該事業場において常時当該作業に従事しないこととなった日から40年間保存するものとされている。
(3)建築物の解体の作業を行う仕事の注文者は、石綿等の使用の有無の調査、当該作業等の方法、費用又は工期等について、法令の遵守を妨げるおそれのある条件を付さないように配慮しなければならない。
(4)石綿等の取扱いに伴い石綿の粉じんを発散する場所における業務に常時従事する労働者に対し、雇入れ又は当該業務への配置替えの際及びその後6か月以内ごとに1回、定期に、特別の項目による健康診断を行い、その結果に基づき、石綿健康診断個人票を作成し、これを当該労働者が当該事業場において常時当該業務に従事しないこととなった日から40年間保存しなければならない。
(5)石綿等を取り扱う事業者が事業を廃止しようとするときは、石綿関係記録等報告書に、石綿等に係る作業の記録、石綿健康診断個人票及び局所排気装置等の定期自主検査の記録を添えて所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
このページは、2014年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。
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2014年度(平成26年度) | 問15 | 難易度 | 石綿障害予防規則に関するやや詳細な知識問題である。難問の部類だろうか。 |
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石綿障害予防規則(全般) | 4 |
問15 石綿障害予防のため事業者が講ずべき措置等に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、誤っているものはどれか。
(1)建設業の事業者は、耐火建築物又は準耐火建築物に吹き付けられた石綿等の除去作業の仕事を行うときは、その仕事の開始の日の14日前までに、その計画を所轄労働基準監督署長に届け出なければならない。
(2)石綿等の取扱いに伴い石綿の粉じんを発散する場所において常時作業に従事する労働者について、1か月を超えない期間ごとに、石綿等の取扱い作業の概要、作業に従事した期間等の所定の事項を記録し、これを当該労働者が当該事業場において常時当該作業に従事しないこととなった日から40年間保存するものとされている。
(3)建築物の解体の作業を行う仕事の注文者は、石綿等の使用の有無の調査、当該作業等の方法、費用又は工期等について、法令の遵守を妨げるおそれのある条件を付さないように配慮しなければならない。
(4)石綿等の取扱いに伴い石綿の粉じんを発散する場所における業務に常時従事する労働者に対し、雇入れ又は当該業務への配置替えの際及びその後6か月以内ごとに1回、定期に、特別の項目による健康診断を行い、その結果に基づき、石綿健康診断個人票を作成し、これを当該労働者が当該事業場において常時当該業務に従事しないこととなった日から40年間保存しなければならない。
(5)石綿等を取り扱う事業者が事業を廃止しようとするときは、石綿関係記録等報告書に、石綿等に係る作業の記録、石綿健康診断個人票及び局所排気装置等の定期自主検査の記録を添えて所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
正答(5)
【解説】
(1)正しい。建設業の事業者は、安衛法88条第3項により、耐火建築物又は準耐火建築物に吹き付けられた石綿等の除去作業の仕事を行うとき(安衛則第90条第五号の二)は、その仕事の開始の日の14日前までに、その計画を所轄労働基準監督署長に届け出なければならない。
※ 安衛則第90条第五号の二は、本問出題当時は「建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第二条第九号の二に規定する耐火建築物(第二百九十三条において「耐火建築物」という。)又は同法第二条第九号の三に規定する準耐火建築物(第二百九十三条において「準耐火建築物」という。)で、石綿等が吹き付けられているものにおける石綿等の除去の作業を行う仕事」とされていたが、改正により現行条文となった。しかし、結論に変わりはない。
【労働安全衛生法】
(計画の届出等)
第88条 (第1項及び第2項 略)
3 事業者は、建設業その他政令で定める業種に属する事業の仕事(建設業に属する事業にあつては、前項の厚生労働省令で定める仕事を除く。)で、厚生労働省令で定めるものを開始しようとするときは、その計画を当該仕事の開始の日の十四日前までに、厚生労働省令で定めるところにより、労働基準監督署長に届け出なければならない。
4~7条 (略)
【労働安全衛生規則】
第90条 法第八十八条第三項の厚生労働省令で定める仕事は、次のとおりとする。
一~五 (略)
五の二 建築物、工作物又は船舶(鋼製の船舶に限る。次号において同じ。)に吹き付けられている石綿等(石綿等が使用されている仕上げ用塗り材を除く。)の除去、封じ込め又は囲い込みの作業を行う仕事
五の三~七 (略)
(2)正しい。石綿障害予防規則第35条により正しい。
【石綿障害予防規則】
(作業の記録)
第35条 事業者は、石綿等の取扱い若しくは試験研究のための製造又は石綿分析用試料等の製造に伴い石綿等の粉じんを発散する場所において常時作業に従事する労働者について、一月を超えない期間ごとに次の事項を記録し、これを当該労働者が当該事業場において常時当該作業に従事しないこととなった日から四十年間保存するものとする。
一 労働者の氏名
二 石綿等を取り扱い、若しくは試験研究のため製造する作業又は石綿分析用試料等を製造する作業に従事した労働者にあっては、従事した作業の概要、当該作業に従事した期間、当該作業(石綿使用建築物等解体等作業に限る。)に係る事前調査(分析調査を行った場合においては事前調査及び分析調査)の結果の概要並びに次条第一項の記録の概要
三 石綿等の取扱い若しくは試験研究のための製造又は石綿分析用試料等の製造に伴い石綿等の粉じんを発散する場所における作業(前号の作業を除く。以下この号及び次条第一項第二号において「周辺作業」という。)に従事した労働者(以下この号及び次条第一項第二号において「周辺作業従事者」という。)にあっては、当該場所において他の労働者が従事した石綿等を取り扱い、若しくは試験研究のため製造する作業又は石綿分析用試料等を製造する作業の概要、当該周辺作業従事者が周辺作業に従事した期間、当該場所において他の労働者が従事した石綿等を取り扱う作業(石綿使用建築物等解体等作業に限る。)に係る事前調査及び分析調査の結果の概要、次条第一項の記録の概要並びに保護具等の使用状況
四 石綿等の粉じんにより著しく汚染される事態が生じたときは、その概要及び事業者が講じた応急の措置の概要
(3)正しい。石綿則第9条の規定により、建築物の解体の作業を行う仕事の注文者は、石綿等の使用の有無の調査、当該作業等の方法、費用又は工期等について、法令の遵守を妨げるおそれのある条件を付さないように配慮しなければならない。
※ 石綿則第9条は、改正により本問出題当時とは異なっているが結論に変わりはない。
【石綿障害予防規則】
(建築物の解体工事等の条件)
第9条 解体等の作業を行う仕事の注文者は、事前調査等、当該事前調査等の結果を踏まえた当該作業等の方法、費用又は工期等について、法及びこれに基づく命令の規定の遵守を妨げるおそれのある条件を付さないように配慮しなければならない。
(4)正しい。石綿等の取扱いに伴い石綿の粉じんを発散する場所における業務に常時従事する労働者に対し、石綿則第40条の規定により、雇入れ又は当該業務への配置替えの際及びその後6か月以内ごとに1回、定期に、特別の項目による健康診断を行わなければならない。また、同規則第41条の規定により、その結果に基づき、石綿健康診断個人票を作成し、これを当該労働者が当該事業場において常時当該業務に従事しないこととなった日から40年間保存しなければならない。
【労働安全衛生法】
(健康診断)
第66条 (略)
2 事業者は、有害な業務で、政令で定めるものに従事する労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による特別の項目についての健康診断を行なわなければならない。有害な業務で、政令で定めるものに従事させたことのある労働者で、現に使用しているものについても、同様とする。
3 (以下略)
【労働安全衛生法施行令】
(健康診断を行うべき有害な業務)
第22条 法第66条第2項前段の政令で定める有害な業務は、次のとおりとする。
一及び二 (略)
三 (略)又は石綿等の取扱い若しくは試験研究のための製造若しくは石綿分析用試料等の製造に伴い石綿の粉じんを発散する場所における業務
四~六 (略)
2及び3 (略)
【石綿障害予防規則】
(健康診断の実施)
第40条 事業者は、令第22条第1項第三号の業務(石綿等の取扱い又は試験研究のための製造に伴い石綿の粉じんを発散する場所における業務に限る。)に常時従事する労働者に対し、雇入れ又は当該業務への配置替えの際及びその後6月以内ごとに1回、定期に、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。
一~四 (略)
2及び3 (略)
(健康診断の結果の記録)
第41条 事業者は、前条各項の健康診断(法第六十六条第五項ただし書の場合において当該労働者が受けた健康診断を含む。次条において「石綿健康診断」という。)の結果に基づき、石綿健康診断個人票(様式第二号)を作成し、これを当該労働者が当該事業場において常時当該業務に従事しないこととなった日から四十年間保存しなければならない。
(5)誤り。石綿則第49条の規定により、石綿等を取り扱う事業者が事業を廃止しようとするときは、石綿関係記録等報告書に、①石綿等に係る作業の記録、②石綿の空気中における濃度の測定結果の記録及び③石綿健康診断個人票を添えて所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。しかし、局所排気装置等の定期自主検査の記録を添える必要はない。
【石綿障害予防規則】
第49条 石綿等を取り扱い、若しくは試験研究のため製造する事業者又は石綿分析用試料等を製造する事業者は、事業を廃止しようとするときは、石綿関係記録等報告書(様式第六号)に次の記録及び石綿健康診断個人票又はこれらの写しを添えて、所轄労働基準監督署長に提出するものとする。
一 第三十五条の作業の記録
二 第三十六条第二項の測定の記録
三 第四十一条の石綿健康診断個人票