労働衛生コンサルタント試験 2014年 労働衛生関係法令 問07

長時間労働者に対する面接指導




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 このページは、2014年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2014年度(平成26年度) 問07 難易度 長時間労働者に対する面接指導に関する基本的な知識問題。出題後の法改正により複数の正解がある。
長時間労働者の面接指導

問7 長時間労働者に対する面接指導に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、誤っているものはどれか。

なお、本聞において、時間外・休日労働時間とは、休憩時間を除き1週間当たり 40 時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間をいうものとする。

(1)事業者は、1か月当たりの時間外・休日労働時間が 100 時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる労働者に対し、当該労働者の申出により、医師による面接指導を行わなければならない。

(2)事業者は、1か月当たりの時間外・休日労働時間が 100 時聞を超えないが、長時間の労働により、疲労の蓄積が認められ又は健康上の不安を有している労働者に対し、当該労働者の申出により、面接指導又は面接指導に準ずる措置を実施するよう努めなければならない。

(3)医師は、面接指導を行うに当たって、労働者の勤務の状況、労働者の疲労の蓄積の状況のほか、職場の作業環境の状況の確認を行わなければならない。

(4)事業者は、面接指導の結果に基づき、労働者の健康を保持するために必要な措置について、面接指導を行った後遅滞なく、医師の意見を聴かなければならない。

(5)労働者は、事業者の指定した医師が行う面接指導を受けることを希望しない場合は、他の医師の行う面接指導を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出することができる。

正答(3)(出題後の法改正により、現在では(1)及び(2)も誤りの肢となる。)

【解説】

(1)誤り(出題当時は正しかった)。「働き方改革関連法改正」により、現在は1か月当たりの時間外・休日労働時間が 80 時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる労働者が原則として対象となる。なお、当該労働者の申出により、医師による面接指導を行うべきことは正しい。

なお、安衛法第66条の8の2の労働者(新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務に従事する労働者)及び安衛法第66条の8の2の労働者(高度プロフェッショナル制度の対象者)については、安衛法第66条の8の対象から除かれているが、これらの者の面接指導については時間外・休日労働時間が1か月当たり100時間を超える者が対象となる。

【労働安全衛生法】

(面接指導等)

第66条の8 事業者は、その労働時間の状況その他の事項が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当する労働者(次条第一項に規定する者及び第六十六条の八の四第一項に規定する者を除く。以下この条において同じ。)に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導(問診その他の方法により心身の状況を把握し、これに応じて面接により必要な指導を行うことをいう。以下同じ。)を行わなければならない。

2~5 (略)

第66条の8の2 事業者は、その労働時間が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める時間を超える労働者(労働基準法第三十六条第十一項に規定する業務に従事する者(同法第四十一条各号に掲げる者及び第六十六条の八の四第一項に規定する者を除く。)に限る。)に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導を行わなければならない。

 (略)

第66条の8の4 事業者は、労働基準法第四十一条の二第一項の規定により労働する労働者であつて、その健康管理時間(同項第三号に規定する健康管理時間をいう。)が当該労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める時間を超えるものに対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導を行わなければならない。

 (略)

【労働安全衛生規則】

(面接指導の対象となる労働者の要件等)

第52条の2 法第六十六条の八第一項の厚生労働省令で定める要件は、休憩時間を除き一週間当たり四十時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間が一月当たり八十時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる者であることとする。ただし、次項の期日前一月以内に法第六十六条の八第一項又は第六十六条の八の二第一項に規定する面接指導を受けた労働者その他これに類する労働者であつて法第六十六条の八第一項に規定する面接指導(以下この節において「法第六十六条の八の面接指導」という。)を受ける必要がないと医師が認めたものを除く。

2及び3 (略)

(面接指導の実施方法等)

第52条の3 面接指導は、前条第1項の要件に該当する労働者の申出により行うものとする

2~4 (略)

第52条の7の2 法第六十六条の八の二第一項の厚生労働省令で定める時間は、休憩時間を除き一週間当たり四十時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間について、一月当たり百時間とする。

 (略)

第52条の7の4 法第六十六条の八の四第一項の厚生労働省令で定める時間は、一週間当たりの健康管理時間(労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第四十一条の二第一項第三号に規定する健康管理時間をいう。)が四十時間を超えた場合におけるその超えた時間について、一月当たり百時間とする。

 (略)

(2)誤り(出題当時は正しかった)。法改正により、現時点では、「第66条の8第1項、第66条の8の2第1項又は前条第一項の規定により面接指導を行う労働者以外の労働者について、健康への配慮が必要なものについては、必要な措置を講ずるように努めなければならない」とされている。

そして、「面接指導を行う労働者」とは、具体的には次のものを指す。

定義 具体的な意味
第六十六条の八第一項 その労働時間の状況その他の事項が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当する労働者 休憩時間を除き一週間当たり四十時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間が一月当たり八十時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる者
第六十六条の八の二第一項 その労働時間が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める時間を超える労働者 休憩時間を除き一週間当たり四十時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間について、一月当たり百時間とする
前条第一項 労働基準法第四十一条の二第一項の規定により労働する労働者であつて、その健康管理時間(略)が当該労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める時間を超えるもの 一週間当たりの健康管理時間(略)が四十時間を超えた場合におけるその超えた時間について、一月当たり百時間

従って、「1か月当たりの時間外・休日労働時間が 80 時聞を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる者」については、努力義務の対象ではなく義務の対象となる。

【労働安全衛生法】

(面接指導等)

第66条の8 事業者は、その労働時間の状況その他の事項が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当する労働者(次条第一項に規定する者及び第六十六条の八の四第一項に規定する者を除く。以下この条において同じ。)に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導(問診その他の方法により心身の状況を把握し、これに応じて面接により必要な指導を行うことをいう。以下同じ。)を行わなければならない。

2~5 (略)

第66条の9 事業者は、第六十六条の八第一項、第六十六条の八の二第一項又は前条第一項の規定により面接指導を行う労働者以外の労働者であつて健康への配慮が必要なものについては、厚生労働省令で定めるところにより、必要な措置を講ずるように努めなければならない。

【労働安全衛生規則】

(法第六十六条の九の必要な措置の実施)

第52条の8 法第六十六条の九の必要な措置は、法第六十六条の八の面接指導の実施又は法第六十六条の八の面接指導に準ずる措置(第三項に該当する者にあつては、法第六十六条の八の四第一項に規定する面接指導の実施)とする。

 労働基準法第四十一条の二第一項の規定により労働する労働者以外の労働者に対して行う法第六十六条の九の必要な措置は、事業場において定められた当該必要な措置の実施に関する基準に該当する者に対して行うものとする。

 労働基準法第四十一条の二第一項の規定により労働する労働者に対して行う法第六十六条の九の必要な措置は、当該労働者の申出により行うものとする。

(3)誤り。安衛則第52条の4において、医師が確認を行う事項が定められているが「職場の作業環境の状況」を確認することとはされていない。なお、医師に対して安衛法上の義務がかけられているわけではなく、「医師は、・・・行わなければならない」という記述も、労働安全衛生法令上は誤りである。

【労働安全衛生規則】

(面接指導における確認事項)

第52条の4 医師は、法第六十六条の八の面接指導を行うに当たつては、前条第一項の申出を行つた労働者に対し、次に掲げる事項について確認を行うものとする。

 当該労働者の勤務の状況

 当該労働者の疲労の蓄積の状況

 前号に掲げるもののほか、当該労働者の心身の状況

(4)正しい。安衛法第66条の8第4項により、事業者は、面接指導の結果に基づき、労働者の健康を保持するために必要な措置について医師の意見を聴かなければならならない。そして、この意見聴取は、安衛則第52条の7により、面接指導を行った後遅滞なく行わなければならない。

【労働安全衛生法】

(面接指導等)

第66条の8 事業者は、その労働時間の状況その他の事項が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当する労働者(次条第一項に規定する者及び第六十六条の八の四第一項に規定する者を除く。以下この条において同じ。)に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導(問診その他の方法により心身の状況を把握し、これに応じて面接により必要な指導を行うことをいう。以下同じ。)を行わなければならない。

2及び3 (略)

 事業者は、第一項又は第二項ただし書の規定による面接指導の結果に基づき、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、厚生労働省令で定めるところにより、医師の意見を聴かなければならない

 (略)

【労働安全衛生規則】

(面接指導の結果についての医師からの意見聴取)

第52条の7 法第六十六条の八の面接指導の結果に基づく法第六十六条の八第四項の規定による医師からの意見聴取は、当該法第六十六条の八の面接指導が行われた後(同条第二項ただし書の場合にあつては、当該労働者が当該法第六十六条の八の面接指導の結果を証明する書面を事業者に提出した後)、遅滞なく行わなければならない

(5)正しい。安衛法第66条の8第2項により正しい。

なお、安衛法第66条の8第2項の文言は、労働者の権利を定める形にはなっていないが、この規定は労働者の権利を認めたものと理解されている。

【労働安全衛生法】

(面接指導等)

第66条の8 事業者は、その労働時間の状況その他の事項が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当する労働者(次条第一項に規定する者及び第六十六条の八の四第一項に規定する者を除く。以下この条において同じ。)に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導(問診その他の方法により心身の状況を把握し、これに応じて面接により必要な指導を行うことをいう。以下同じ。)を行わなければならない。

 労働者は、前項の規定により事業者が行う面接指導を受けなければならない。ただし、事業者の指定した医師が行う面接指導を受けることを希望しない場合において、他の医師の行う同項の規定による面接指導に相当する面接指導を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでない。

3~5 (略)

2020年05月16日執筆 2022年07月01日最終修正