労働衛生コンサルタント試験 2014年 労働衛生一般 問23

人間工学的観点からみた作業設計等




問題文
トップ
合格

 このページは、2014年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」か「パンくずリスト」をご利用ください。

 柳川に著作権があることにご留意ください。

2014年度(平成26年度) 問23 難易度 エルゴノミクス(人間工学)に関する基本的な知識問題である。現場で考えれば正答可能だろう。
エルゴノミクス

問23 作業及び作業場の設計等に関する次の記述のうち、人間工学的観点からみて適切でないものはどれか。

(1)システムが正常に動作しているときには、計器盤の複数のメーターの針が同方向を指すように設計した。

(2)正確な数値を読み取る必要があったので、デジタル表示の計器を採用した。

(3)最も重要な情報を表示する計器類を制御パネル上のオペレーターの目の高さに配置した。

(4)作業台を購入する際、作業面に光沢がないものを選択した。

(5)作業場内の人専用通路の幅を最も大柄な作業者に合わせて決めた。

正答(3)

【解説】

(1)適切である。複数のメーターの針が同じ方向を向いていれば確認しやすいので、人間工学的に正しい措置だといえよう。

(2)適切である。アナログの値は感覚的に分かりやすい1)が、正確な数値を読み取る必要がある場合はデジタル表示の方が優れている。

白井他2)によると、懐中時計(アナログ)、アナログ腕時計、デジタル腕時計を用いて、誤答率(時、分、秒の一つ以上を誤って回答した割合)を調べたところ、懐中時計83.3%、アナログ腕時計66.7%、デジタル腕時計0.0%であったとされる。

(3)適切ではない。人間工学的には、やや目の高さよりも低い位置にあるものは見やすいとされており、適切であるとは言えない。

(4)適切である。JIS Z 8515:2002によれば「作業面の仕上げは、鏡のような反射をなくすために、半つや消し(光沢度が 45 %相当、又は 60°入射の反射率計の値が 20 %以下)の光沢を超えないものがよい。作業面の目に触れる部分の反射率は、装備及び視野に入る他のものとの輝度コントラストが大きすぎないように選択するのがよい」とされている。

(5)適切である。人間工学的観点からは、通路の幅は2人がすれ違うようにできることが望ましく、「大柄な作業者にもゆとりがあるように決めた」というのはやや疑問もあるが、適切でないとまでは言い切れない。

なお、作業場の通路については安衛則第540条に規定があるが、幅についての定めはない。機械間の通路については同第543条に80センチ以上としなければならない旨の定めがある。また、オフィスの場合は建築基準法第119条により、廊下の両側に部屋がある場合は有効幅1.6m以上、片側のみの場合は有効幅1.2m以上を確保することが必要である。

  1. 1)谷島一嘉「最近の車の前面パネルの人間工学的検討」(人間工学 vol.21,No.1,1985年)
  2. 2)白井裕樹他「鉄道用懐中時計の人間工学的検証」(人間工学vol.49,特別号,2013年)
2020年05月23日執筆