問22 「化学品の分類および表示に関する世界調和システム(GHS)」に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)国際的調和システムであるが、分類の区分は各国の実情に応じて採用しなくともよい場合があり、実際に JIS では採用されていない区分がある。
(2)急性毒性、生殖細胞変異原性、発がん性、生殖毒性、免疫毒性及び神経毒性について、分類項目と分類基準が設けられている。
(3)直接証明するデータがなかったとしても、皮膚に対して腐食性を示すデータがあれば、眼に対する損傷性があるとの判定がなされる。
(4)生殖毒性の分類では、毒性の強さではなく証拠の確からしさで判定がなされる。
(5)発がん性の判定には、ヒトに対する疫学データ、動物実験のデータの他、国際的な機関等における分類も考慮される。
このページは、2014年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2014年度(平成26年度) | 問22 | 難易度 | GHSに関するやや詳細な知識問題である。一般の受験生には難問だろう。 |
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GHS | 5 |
問22 「化学品の分類および表示に関する世界調和システム(GHS)」に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)国際的調和システムであるが、分類の区分は各国の実情に応じて採用しなくともよい場合があり、実際に JIS では採用されていない区分がある。
(2)急性毒性、生殖細胞変異原性、発がん性、生殖毒性、免疫毒性及び神経毒性について、分類項目と分類基準が設けられている。
(3)直接証明するデータがなかったとしても、皮膚に対して腐食性を示すデータがあれば、眼に対する損傷性があるとの判定がなされる。
(4)生殖毒性の分類では、毒性の強さではなく証拠の確からしさで判定がなされる。
(5)発がん性の判定には、ヒトに対する疫学データ、動物実験のデータの他、国際的な機関等における分類も考慮される。
正答(2)
【解説】
GHSに関する問題は、しばしば出題されるが、この年の問題はとくに難問だったようだ。
(1)正しい。わが国の化学品の分類は、GHS改訂4版に基づきJIS Z 7252:2014に規定されている。GHSの分類及び表示法は、各国の裁量に任されており、JISも国連のシステムとは数か所が異なっている1)。
なお、GHSに存在してJISにない区分は、各急性毒性の「区分5」、皮膚腐食性及び刺激性の「区分3」、「吸引性呼吸器有害性2」、「自然発火ガス」、「窒息剤」及び「可燃性ダスト」である。
(2)誤り。本肢に示された有害性の内、急性毒性、生殖細胞変異原性、発がん性及び生殖毒性については、分類項目と分類基準が設けられている2)。しかし、免疫毒性及び神経毒性については定められていない。
(3)正しいとしておく。GHSでは、皮膚に対して腐食性を示すデータがあれば、「眼に対する重篤な損傷性としてもよい2)」こととされている。眼に対するデータがなければ、皮膚腐食性のデータによって眼に対する重篤な損傷性があるとの判定がなされることになろう。
なお、皮膚腐食性があるとするデータは「ヒトまたは動物での既存のデータ、皮膚腐食性」のみならず、「検証された構造活性相関(SAR)による方法」も含まれる。
(4)正しい。生殖毒性の分類では、以下に示すように、毒性の強さではなく証拠の確からしさで区分が決められている。なお、我が国で表示される「区分外」と「分類できない」は、厳密にはGHSの区分ではない。
区分1 | ヒトに対して生殖毒性があることが知られている、あるいはあると考えられる物質 |
区分2 | ヒトに対して生殖毒性があることが知られている物質 |
区分3 | ヒトに対して生殖毒性があると考えられる物質 |
区分4 | ヒトに対する生殖毒性が疑われる物質 |
(5)正しい。GHS関係省庁等連絡会議の「政府向けGHS分類ガイダンス」によれば、発がん性の区分1Aは「ヒトにおいて発がん性が認められると明確に分類/記載している物質
」が該当し、区分2Aは「2つ以上の動物種での陽性結果」
があるものなどが該当する。また、「判断に当たっては、国内外の分類機関による既存分類を考慮する」
などとされている3)。
- 1)化学物質国際対応ネットワーク「各国の化学品分類とJIS規格の比較」(化学物質国際対応ネットワークWEBサイト)
- 2)国際連合 「化学品の分類および表示に関する 世界調和システム(GHS)改訂6版」(2015年)
- 3)GHS関係省庁等連絡会議「政府向けGHS分類ガイダンス(令和元年度改訂版(Ver.2.0))」(2020年)