労働衛生コンサルタント試験 2014年 労働衛生一般 問16

1,2 -ジクロロプロパンの有害性等




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 このページは、2014年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2014年度(平成26年度) 問16 難易度 1,2 -ジクロロプロパンの有害性等に関する基本的な知識問題である。やや時事問題的な要素のある問題。
1,2 -ジクロロプロパン

問16 1,2 -ジクロロプロパンに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)金属用洗浄剤や印刷用洗浄剤に使われてきた。

(2)中枢神経抑制及び眼と気道への刺激性がある。

(3)肝臓の障害及び溶血性貧血のおそれがある。

(4)ヒトへの尿路系腫瘍の発生が強く疑われている。

(5)塩素系有機溶剤であり、特定化学物質に指定された。

正答(4)

【解説】

1,2 -ジクロロプロパンは、大阪府の印刷業の工場において多発した胆管がんの原因物質とされているものである。今後、労働衛生一般で同種問題が出題される可能性は低いだろうが、後に2019年の「健康管理」で出題されている。口述試験においては、今後も要注意だろう。

また、今後も重大な災害が発生した場合には、特定の原因物質が労働衛生一般で出題される可能性はあるだろう。

(1)正しい。現在は、1,2 -ジクロロプロパンが洗浄剤として使われていることはまずないだろうが、大阪府の印刷業の胆管がん事案の発覚まではさかんに使用されていた。蒸発しやすいため、洗浄後に拭き取る必要がなく、扱いやすいという面があったのである。

他には、油脂・樹脂・ゴム・ワックス・アスファルト溶剤、ドライクリーニング用溶剤、四塩化炭素・テトラクロロエチレン合成原料/樹脂の溶剤、有機合成薬品原料などに用いられている1)

(2)正しい。政府のモデルSDSによると、「『中枢神経系抑制に起因すると考えられる疲労感』(ATSDR(1989))等の記述」があるとされ、また、「眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性」が区分2A、特定標的臓器毒性(単回ばく露)で気道刺激性が区分3となっている。

気道刺激性が区分3(呼吸器への刺激のおそれ)なので、やや疑問はあるが正しいとしてもよいであろう。

(3)正しい。政府のモデルSDSによると、特定標的臓器毒性(単回ばく露)で「区分1(肝臓、血液、腎臓)」、特定標的臓器毒性(反復ばく露)で「区分1(腎臓、肝臓、血液系)」とされている。

そして、その根拠として、「ヒトについては、『溶血性貧血、肝臓及び腎臓の機能障害の報告』(NITE初期リスク評価書 No.39(2005),ACGIH, 2006)等の記述」が挙げられている。

(4)誤り。1,2 -ジクロロプロパンによってヒトへの尿路系腫瘍の発生が強く疑われているという事実はない。

なお、福井県の化学工場において-トルイジンによるヒトへの尿路系腫瘍(膀胱がん)が発生している。

(5)正しい。塩素系有機溶剤とは、分子構造の中に塩素を含む有機溶剤であり、1,2 -ジクロロプロパンの他、代表的なものとしては、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロメタンなどがある。また、1,2 -ジクロロプロパンは、特定化学物質(第二類物質)に指定されている。

  1. 1)「1,2 -ジクロロプロパン モデル安全データシート」(職場のあんぜんサイト)
2020年05月23日執筆