問11 生活習慣病等に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。
(1)平成 23 年の患者調査によると、医療機関を受診している総患者数は、多いものから順に、高血圧性疾患、糖尿病、心疾患(高血圧性のものを除く。)、悪性新生物、脳血管疾患となっている。
(2)平成 22 年度の国民医療費は、多いものから順に、糖尿病、高血圧性疾患、悪性新生物、脳血管疾患、虚血性心疾患となっている。
(3)糖尿病は、1型糖尿病と2型糖尿病に分けられ、2型糖尿病の発症には運動や食事などの生活習慣が関連している。
(4)脂質異常症は、虚血性心疾患の危険因子であり、総コレステロールと LDL コレステロールの高値は最も重要な指標である。
(5)日本肥満学会の定義では、BMI(Body Mass Index)が 25 以上を肥満、18.5 未満をやせと判定している。
このページは、2014年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2014年度(平成26年度) | 問11 | 難易度 | 生活習慣病等に関する知識問題だが、内容的にみて不適切としか言いようのないもの。 |
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生活習慣病等 | - |
問11 生活習慣病等に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。
(1)平成 23 年の患者調査によると、医療機関を受診している総患者数は、多いものから順に、高血圧性疾患、糖尿病、心疾患(高血圧性のものを除く。)、悪性新生物、脳血管疾患となっている。
(2)平成 22 年度の国民医療費は、多いものから順に、糖尿病、高血圧性疾患、悪性新生物、脳血管疾患、虚血性心疾患となっている。
(3)糖尿病は、1型糖尿病と2型糖尿病に分けられ、2型糖尿病の発症には運動や食事などの生活習慣が関連している。
(4)脂質異常症は、虚血性心疾患の危険因子であり、総コレステロールと LDL コレステロールの高値は最も重要な指標である。
(5)日本肥満学会の定義では、BMI(Body Mass Index)が 25 以上を肥満、18.5 未満をやせと判定している。
正答(2)(試験協会は後に(1)も正答として取り扱うと表明した。)
【解説】
本問は(1)と(2)が正答とされているが、(2)は出題そのものが不適切と言うべきだろう。医療費を多い順に並べたらどうなるかという設問だが、項目をどうまとめるか(大分類でまとめるのか、中分類でまとめるのか)によって答えが異なる。問題は中分類でということのようだが、中分類はすべての項目が公表されているわけではない。
(1)適切ではない。患者調査は3年に1回の調査だが、最新の調査は2017年(平成29年)の調査である。
2017年調査の表7(主な傷病の総患者数)によると、医療機関を受診している総患者数は、多いものから順に、高血圧性疾患(9,937)、歯肉炎及び歯周疾患糖尿病(3,983)、糖尿病(3,289)、脂質異常症(2,205)などとなっている。
因みに、本肢の2011年(平成23年)調査の表11(主な傷病の総患者数)では、多いものから順に、高血圧性疾患(9,067)、糖尿病(2,700)、歯肉炎及び歯周疾患糖尿病(2,657)、う蝕(1,945)、高脂血症(1,886)、心疾患(高血圧性のものを除く)(1,612)、悪性新生物(1,526)、食道,胃及び十二指腸の疾患(1,246)脳血管疾患(1,235)などとなっている。
(2)適切ではない。国民医療費の最新調査差は2019年度(令和元年度)の調査である。2019年度の調査の第6表の大分類によると、国民医療費は多いものから順に、循環器系の疾患(61,369億円)、新生物<腫瘍>(47,459億円)、筋骨格系及び結合組織の欠陥(25,839億円)、損傷,中毒及びその他の外因の影響(24,897億円)、腎尿路生殖器系の疾患(23,043億円)、呼吸器系の疾患(22,822億円)などとなっている。
因みに、本肢の2010年度(平成22年度)の調査の第5表によると、国民医療費は多いものから順に、循環器系の疾患(56,601億円)、新生物(34,750億円)、呼吸器系の疾患(21,140億円)、筋骨格系及び結合組織の欠陥(20,263億円)などとなっている。
(3)疑問はあるが、適切ではないとまでは言い切れない。糖尿病は、原因別に分けると、1型糖尿病、2型糖尿病、妊娠糖尿病及びその他の糖尿病の4類型に分けられる。1型と2型のみに分けられるわけではない。しかし、1型と2型があることは事実なので、前段は必ずしも間違いとは言い切れないという余地もないわけではない。
2型の糖尿病は、「インスリン分泌の低下やインスリン抵抗性をきたす複数の遺伝因子に過食(とくに高脂肪食)、運動不足などの環境因子が加わってインスリン作用不足を生じて発症する」
1)とされている。従って、その発症には運動や食事などの生活習慣が関連していることは正しい。
(4)適切である。脂質異常症は動脈硬化の危険因子であり、脳血管障害や虚血性心疾患などの要因となる。脂質異常症はLDLコレステロール140㎎/dl以上(高LDLコレステロール血症)、HDLコレステロール40mgdl未満(低HDLコレステロール血症)、トリグリセライド(中性脂肪)150mg/dl以上(高トリグリセライド血症)などとされている2)。
(5)適切である。日本肥満学会の定義では、BMI(Body Mass Index)が 25 以上を肥満(25~30未満1度、30~35未満2度、35~40未満3度、40以上4度)、18.5 未満を低体重(痩せ型)と判定する。
ちなみにWHO(世界保健機関)の定義では、17.00~18.49以下を痩せぎみ、16.00~16.99を痩せ、16未満を痩せすぎとしている。
- 1)日本糖尿病学会編・著「糖尿病治療ガイド」(文光堂,2018年)
- 2)日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2017年版」(2017年)