問10 第二種有機溶剤等の製造、取扱い等に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、誤っているものはどれか。
ただし、適用の除外及び設備の特例はないものとする。
(1)事業者は、第二種有機溶剤等を用いて洗浄の業務を行う屋内作業場については、6か月以内ごとに1回、定期に、当該有機溶剤の濃度を測定しなければならない。
(2)事業者は、屋内の第二種有機溶剤等を製造する工程において当該有機溶剤等を容器に注入する業務に常時従事する労働者に対しては、6か月以内ごとに1回、定期に、有機溶剤等健康診断を行わなければならない。
(3)事業者は、屋内作業場において、第二種有機溶剤等を用いて塗装の業務に労働者を従事させるときは、当該業務を行う作業場所に、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置又は全体換気装置を設けなければならない。
(4)事業者は、屋内作業場においで第二種有機溶剤等に係る有機溶剤業務に労働者を従事させる場合に、有機溶剤等の区分を色分けによって表示をするときは、黄色で行わなければならない。
(5)事業者は、第二種有機溶剤等を入れたことがあり有機溶剤の蒸気の発散するおそれがあるタンクの内部における業務に労働者を従事させるときは、その業務に従事する労働者に送気マスクを使用させなければならない。
このページは、2013年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2013年度(平成25年度) | 問10 | 難易度 | 有機則に関するいずれも基本的な知識問題である。正答できなければならない。 |
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有機則(全般) | 2 |
問10 第二種有機溶剤等の製造、取扱い等に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、誤っているものはどれか。
ただし、適用の除外及び設備の特例はないものとする。
(1)事業者は、第二種有機溶剤等を用いて洗浄の業務を行う屋内作業場については、6か月以内ごとに1回、定期に、当該有機溶剤の濃度を測定しなければならない。
(2)事業者は、屋内の第二種有機溶剤等を製造する工程において当該有機溶剤等を容器に注入する業務に常時従事する労働者に対しては、6か月以内ごとに1回、定期に、有機溶剤等健康診断を行わなければならない。
(3)事業者は、屋内作業場において、第二種有機溶剤等を用いて塗装の業務に労働者を従事させるときは、当該業務を行う作業場所に、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置又は全体換気装置を設けなければならない。
(4)事業者は、屋内作業場においで第二種有機溶剤等に係る有機溶剤業務に労働者を従事させる場合に、有機溶剤等の区分を色分けによって表示をするときは、黄色で行わなければならない。
(5)事業者は、第二種有機溶剤等を入れたことがあり有機溶剤の蒸気の発散するおそれがあるタンクの内部における業務に労働者を従事させるときは、その業務に従事する労働者に送気マスクを使用させなければならない。
正答(3)
【解説】
(1)正しい。事業者は、安衛法第65条及び安衛令第21条第十号の規定により、有機溶剤を製造し取り扱う業務で厚生労働省令(有機則)で定めるものを行う屋内作業場について作業環境測定を行わなければならない。
測定を行わなければならない有機溶剤は、有機則第28条第1項により、令別表第六の二第一号から第四十七号までに掲げる物である。第二種有機溶剤等の定義は有機則第一条第四号に定められているが、いずれも測定の対象となる(※)。
※ ハのカッコ書きで一部が除かれているが、これは第1種有機溶剤となるためであり、第1種として測定の義務がかかる。なお、有機溶剤は、第1種及び第2種が測定の対象になる。第3種は混合物なので、原理的に測定は不可能と言ってよい。
また、有機則第28条にある「有機溶剤業務」には、同規則第1条第六号チにより洗浄の業務が含まれる。なお、有機則第28条第1項は、一定の業務を除いているが、問題文本文によって「適用の除外及び設備の特例はない」とされているので、気にする必要はない。
従って、有機則第28条第2項の規定により、6か月以内ごとに1回、定期に、当該有機溶剤の濃度を測定しなければならない。
【労働安全衛生法】
(作業環境測定)
第65条 事業者は、有害な業務を行う屋内作業場その他の作業場で、政令で定めるものについて、厚生労働省令で定めるところにより、必要な作業環境測定を行い、及びその結果を記録しておかなければならない。
2~5 (略)
【労働安全衛生法施行令】
(作業環境測定を行うべき作業場)
第21条 法第六十五条第一項の政令で定める作業場は、次のとおりとする。
一~九 (略)
十 別表第六の二に掲げる有機溶剤を製造し、又は取り扱う業務で厚生労働省令で定めるものを行う屋内作業場
【有機溶剤中毒予防規則】
(定義等)
第1条 この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一~三 (略)
四 第二種有機溶剤等 有機溶剤等のうち次に掲げる物をいう。
イ 令別表第六の二第一号から第十三号まで、第十五号から第二十二号まで、第二十四号、第二十五号、第三十号、第三十四号、第三十五号、第三十七号、第三十九号から第四十二号まで又は第四十四号から第四十七号までに掲げる物
ロ イに掲げる物のみから成る混合物
ハ イに掲げる物と当該物以外の物との混合物で、イに掲げる物又は前号イに掲げる物を当該混合物の重量の五パーセントを超えて含有するもの(前号ハに掲げる物を除く。)
五 (略)
六 有機溶剤業務 次の各号に掲げる業務をいう。
イ~ト (略)
チ 有機溶剤等を用いて行う洗浄(ヲに掲げる業務に該当する洗浄の業務を除く。)又は払しよくの業務
リ~ヲ (略)
2 (略)
(測定)
第28条 令第二十一条第十号の厚生労働省令で定める業務は、令別表第六の二第一号から第四十七号までに掲げる有機溶剤に係る有機溶剤業務のうち、第三条第一項の場合における同項の業務以外の業務とする。
2 事業者は、前項の業務を行う屋内作業場について、六月以内ごとに一回、定期に、当該有機溶剤の濃度を測定しなければならない。
3 (略)
(2)正しい。事業者は、安衛法第66条第2項及び安衛令第22条第6号の規定により、屋内で有機溶剤を製造し又は取り扱う業務で厚生労働省令(有機則)に定めるものを行わせる者に対して健康診断を行わなければならない。
そして、有機則第29条第1項により、その業務は第2種有機溶剤については屋内作業場等における有機溶剤業務であると定められている。なお、ここでも(1)と同様に第3条第1項の業務については気にする必要はない。
さらに同規則第1条第六号イにより、有機溶剤等を製造する工程において当該有機溶剤等を容器に注入する業務は有機溶剤業務である。
従って、有機則第29条第2項により、本肢の業務に常時従事する労働者に対しては、6か月以内ごとに1回、定期に、有機溶剤等健康診断を行わなければならない。
【労働安全衛生法】
(健康診断)
第66条 (第1項 略)
2 事業者は、有害な業務で、政令で定めるものに従事する労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による特別の項目についての健康診断を行なわなければならない。有害な業務で、政令で定めるものに従事させたことのある労働者で、現に使用しているものについても、同様とする。
3~5 (略)
【労働安全衛生法施行令】
(健康診断を行うべき有害な業務)
第22条 法第六十六条第二項前段の政令で定める有害な業務は、次のとおりとする。
一~五 (略)
六 屋内作業場又はタンク、船倉若しくは坑の内部その他の厚生労働省令で定める場所において別表第六の二に掲げる有機溶剤を製造し、又は取り扱う業務で、厚生労働省令で定めるもの
2 (略)
【有機溶剤中毒予防規則】
(定義等)
第1条 この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一~五 (略)
六 有機溶剤業務 次の各号に掲げる業務をいう。
イ 有機溶剤等を製造する工程における有機溶剤等のろ過、混合、攪拌かくはん、加熱又は容器若しくは設備への注入の業務
ロ~ヲ (略)
2 (略)
(健康診断)
第29条 令第二十二条第一項第六号の厚生労働省令で定める業務は、屋内作業場等(第三種有機溶剤等にあつては、タンク等の内部に限る。)における有機溶剤業務のうち、第三条第一項の場合における同項の業務以外の業務とする。
2 事業者は、前項の業務に常時従事する労働者に対し、雇入れの際、当該業務への配置替えの際及びその後六月以内ごとに一回、定期に、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。
一~四 (略)
3~5 (略)
(3)誤り。有機則第5条(及び第1条第六号リ)により、事業者は、屋内作業場において、第二種有機溶剤等を用いて塗装の業務に労働者を従事させるときは、当該業務を行う作業場所に、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設けなければならない。全体換気装置は認められない。
局所排気装置が認められる場合、プッシュプル型換気装置も認められる。また、全体換気装置が認められるのにプッシュプル型換気装置が認められないということは、あり得ない。全体換気装置よりもプッシュプル型換気装置の方が性能が良いからである(※)。そのことから本肢が誤りだと見当がつかなければならない。
※ これはあくまでも試験テクニックである。実務では、作業場全体の空気環境が汚染されるような作業場ではプッシュプル型換気装置では解決できず、全体換気装置を設けるべきケースもある。なお、その場合でも、プッシュプル型換気装置は発散源対策という別な目的があるので、外してよいというわけではない。
【有機溶剤中毒予防規則】
(定義等)
第1条 この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一~五 (略)
六 有機溶剤業務 次の各号に掲げる業務をいう。
イ~チ (略)
リ 有機溶剤含有物を用いて行う塗装の業務(ヲに掲げる業務に該当する塗装の業務を除く。)
ヌ~ヲ (略)
2 (略)
(第一種有機溶剤等又は第二種有機溶剤等に係る設備)
第5条 事業者は、屋内作業場等において、第一種有機溶剤等又は第二種有機溶剤等に係る有機溶剤業務(第一条第一項第六号ヲに掲げる業務を除く。以下この条及び第十三条の二第一項において同じ。)に労働者を従事させるときは、当該有機溶剤業務を行う作業場所に、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設けなければならない。
(4)正しい。有機則第25条第2項(第二号)の規定により、屋内作業場において第二種有機溶剤等に係る有機溶剤業務に労働者を従事させる場合に、有機溶剤等の区分を色分けによって表示をするときは、黄色で行わなければならない。
【有機溶剤中毒予防規則】
(有機溶剤等の区分の表示)
第25条 事業者は、屋内作業場等において有機溶剤業務に労働者を従事させるときは、当該有機溶剤業務に係る有機溶剤等の区分を、作業中の労働者が容易に知ることができるよう、色分け及び色分け以外の方法により、見やすい場所に表示しなければならない。
2 前項の色分けによる表示は、次の各号に掲げる有機溶剤等の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める色によらなければならない。
一 第一種有機溶剤等 赤
二 第二種有機溶剤等 黄
三 第三種有機溶剤等 青
(5)正しい。有機則第32条第1項(第一号)の規定により、第2種有機溶剤等を入れたことがあり有機溶剤の蒸気の発散するおそれがあるタンクの内部における業務に労働者を従事させるときは、その業務に従事する労働者に送気マスクを使用させなければならない。
【有機溶剤中毒予防規則】
(定義等)
第1条 (柱書 略)
一~五 (略)
六 有機溶剤業務 次の各号に掲げる業務をいう。
イ~ル (略)
ヲ 有機溶剤等を入れたことのあるタンク(有機溶剤の蒸気の発散するおそれがないものを除く。以下同じ。)の内部における業務
2 (略)
(送気マスクの使用)
第32条 事業者は、次の各号のいずれかに掲げる業務に労働者を従事させるときは、当該業務に従事する労働者に送気マスクを使用させなければならない。
一 第一条第一項第六号ヲに掲げる業務
二 (略)
2 (略)