問2 労働安全衛生法第88条の規定に基づき、事業者が労働基準監督署長に計画の届出を行わなければならない機械等に該当しないものは次のうちどれか。
ただし、当該事業者は所轄労働基準監督署長による計画の届出の免除の認定を受けているものではなく、事業場の電気使用設備の定格容量の合計は300kW未満とする。
(1)第三種有機溶剤等を用いて吹き付けによらない有機溶剤業務を行う通風が不十分な屋内作業場に設ける移動式以外の全体換気装置
(2)第二種有機溶剤等を用いて有機溶剤業務を行う地下室の内部の作業場に設ける移動式以外のプッシュプル型換気装置
(3)特定化学物質の特定第二類物質を製造し、又は取り扱う特定化学設備及びその付属設備
(4)特定化学物質の第三類物質のガス、蒸気又は粉じんが発散する屋内作業場に設ける発散抑制の設備
(5)石綿等の粉じんが発散する屋内作業場に設ける発散抑制の設備
このページは、2013年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2013年度(平成25年度) | 問02 | 難易度 | 計画の届出の対象について、やや詳細な内容を問うているが、確実な合格のために正答しておきたい。 |
---|---|---|---|
計画の届出の対象 | 4 |
問2 労働安全衛生法第88条の規定に基づき、事業者が労働基準監督署長に計画の届出を行わなければならない機械等に該当しないものは次のうちどれか。
ただし、当該事業者は所轄労働基準監督署長による計画の届出の免除の認定を受けているものではなく、事業場の電気使用設備の定格容量の合計は300kW未満とする。
(1)第三種有機溶剤等を用いて吹き付けによらない有機溶剤業務を行う通風が不十分な屋内作業場に設ける移動式以外の全体換気装置
(2)第二種有機溶剤等を用いて有機溶剤業務を行う地下室の内部の作業場に設ける移動式以外のプッシュプル型換気装置
(3)特定化学物質の特定第二類物質を製造し、又は取り扱う特定化学設備及びその付属設備
(4)特定化学物質の第三類物質のガス、蒸気又は粉じんが発散する屋内作業場に設ける発散抑制の設備
(5)石綿等の粉じんが発散する屋内作業場に設ける発散抑制の設備
正答(4)
【解説】
安衛法第88条第1項の労働基準監督署長への届出の対象となる機械等は、同規則別表第7等に定められている。
【労働安全衛生法】
(計画の届出等)
第88条 事業者は、機械等で、危険若しくは有害な作業を必要とするもの、危険な場所において使用するもの又は危険若しくは健康障害を防止するため使用するもののうち、厚生労働省令で定めるものを設置し、若しくは移転し、又はこれらの主要構造部分を変更しようとするときは、その計画を当該工事の開始の日の三十日前までに、厚生労働省令で定めるところにより、労働基準監督署長に届け出なければならない。ただし、第二十八条の二第一項に規定する措置その他の厚生労働省令で定める措置を講じているものとして、厚生労働省令で定めるところにより労働基準監督署長が認定した事業者については、この限りでない。
2~7 (略)
【労働安全衛生法施行令】
(法第三十一条の二の政令で定める設備)
第9条の3 (柱書 略)
一 (略)
二 特定化学設備(別表第三第二号に掲げる第二類物質のうち厚生労働省令で定めるもの又は同表第三号に掲げる第三類物質を製造し、又は取り扱う設備で、移動式以外のものをいう。第十五条第一項第十号において同じ。)及びその附属設備
【労働安全衛生規則】
(計画の届出をすべき機械等)
第85条 法第八十八条第一項の厚生労働省令で定める機械等は、法に基づく他の省令に定めるもののほか、別表第七の上欄に掲げる機械等とする。ただし、別表第七の上欄に掲げる機械等で次の各号のいずれかに該当するものを除く。
一及び二 (略)
(令第九条の三第二号の厚生労働省令で定める第二類物質)
第662条の2 令第九条の三第二号の厚生労働省令で定めるものは、特化則第二条第三号に規定する特定第二類物質とする。
別表第七 (第八十五条、第八十六条関係)
機械等の種類 | 事項 | 図面等 |
---|---|---|
(略) | (略) | (略) |
十三 有機則第五条又は第六条(特化則第三十八条の八においてこれらの規定を準用する場合を含む。)の有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置、プッシュプル型換気装置又は全体換気装置(移動式のものを除く。) |
(略) | (略) |
(略) | (略) | (略) |
十七 令第九条の三第二号の特定化学設備(以下この項において「特定化学設備」という。)及びその附属設備 |
(略) | (略) |
十八 特定第二類物質又は特化則第二条第一項第五号に掲げる管理第二類物質(以下この項において「管理第二類物質」という。)のガス、蒸気又は粉じんが発散する屋内作業場に設ける発散抑制の設備(特化則第二条の二第二号又は第四号から第八号までに掲げる業務のみに係るものを除く。) |
(略) | (略) |
(略) | (略) | (略) |
二十五 石綿等の粉じんが発散する屋内作業場に設ける発散抑制の設備 |
(略) | (略) |
【有機溶剤中毒予防規則】
(適用の除外)
第2条 (柱書 略)
一 屋内作業場等(屋内作業場又は前条第二項各号に掲げる場所をいう。以下同じ。)のうちタンク等の内部(地下室の内部その他通風が不十分な屋内作業場、船倉の内部その他通風が不十分な船舶の内部、保冷貨車の内部その他通風が不十分な車両の内部又は前条第二項第三号から第十一号までに掲げる場所をいう。以下同じ。)(後略)
二 (略)
(第一種有機溶剤等又は第二種有機溶剤等に係る設備)
第5条 事業者は、屋内作業場等において、第一種有機溶剤等又は第二種有機溶剤等に係る有機溶剤業務(第一条第一項第六号ヲに掲げる業務を除く。以下この条及び第十三条の二第一項において同じ。)に労働者を従事させるときは、当該有機溶剤業務を行う作業場所に、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設けなければならない。
(第三種有機溶剤等に係る設備)
第6条 事業者は、タンク等の内部において、第三種有機溶剤等に係る有機溶剤業務(第一条第一項第六号ヲに掲げる業務及び吹付けによる有機溶剤業務を除く。)に労働者を従事させるときは、当該有機溶剤業務を行う作業場所に、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置、プッシュプル型換気装置又は全体換気装置を設けなければならない。
2 事業者は、タンク等の内部において、吹付けによる第三種有機溶剤等に係る有機溶剤業務に労働者を従事させるときは、当該有機溶剤業務を行う作業場所に、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設けなければならない。
(1)対象となる。安衛則別表7第十三号により、第三種有機溶剤等を用いて吹き付けによらない有機溶剤業務を行う通風が不十分な屋内作業場に設ける移動式以外の全体換気装置は届け出の対象となる。
※ 安衛則別表7第十三号は、「有機則第五条又は第六条(略)の有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置、プッシュプル型換気装置又は全体換気装置(移動式のものを除く。)」を指定している。そして、「有機則第6条」は、「タンク等の内部において、第三種有機溶剤等に係る有機溶剤業務(第一条第一項第六号ヲに掲げる業務及び吹付けによる有機溶剤業務を除く。)に労働者を従事させるときは、当該有機溶剤業務を行う作業場所に、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置、プッシュプル型換気装置又は全体換気装置を設けなければならない」としている。
この「タンク等の内部」には、有機則第2条第一号により「通風が不十分な屋内作業場」が含まれる。
従って、第三種有機溶剤等を用いて吹き付けによらない有機溶剤業務を行う通風が不十分な屋内作業場に設ける移動式以外の全体換気装置は届け出の対象となる。
(2)対象となる。安衛則別表7第十三号により、第二種有機溶剤等を用いて有機溶剤業務を行う地下室の内部の作業場に設ける移動式以外のプッシュプル型換気装置は届け出の対象となる。
※ 安衛則別表7第十三号は、「有機則第五条又は第六条(略)の有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置、プッシュプル型換気装置又は全体換気装置(移動式のものを除く。)」を指定している。そして、「有機則第5条」は、「屋内作業場等において、第一種有機溶剤等又は第二種有機溶剤等に係る有機溶剤業務(第一条第一項第六号ヲに掲げる業務を除く。以下この条及び第十三条の二第一項において同じ。)に労働者を従事させるときは、当該有機溶剤業務を行う作業場所に、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設けなければならない」としている。
この「屋内作業場等」には、有機則第2条第一号により「タンク等の内部」が含まれるが、さらにその中に「地下室の内部の作業場」が含まれることは(1)の解説に示した通りである。
従って、第二種有機溶剤等を用いて有機溶剤業務を行う地下室の内部の作業場に設ける移動式以外のプッシュプル型換気装置は届け出の対象となる。
(3)対象となる。安衛則別表7第十七号により、特定化学物質の特定第二類物質を製造し、又は取り扱う特定化学設備及びその付属設備は、届け出の対象となる。
※ 安衛則別表7第十七号は、「令第九条の三第二号の特定化学設備及びその附属設備」を指定している。そして、「安衛令第9条の3第二号」は、「特定化学設備(別表第三第二号に掲げる第二類物質のうち厚生労働省令で定めるもの又は同表第三号に掲げる第三類物質を製造し、又は取り扱う設備で、移動式以外のもの」を指定する。
このカッコ書きの中の「別表第三第二号に掲げる第二類物質のうち厚生労働省令で定めるもの」は、安衛則第662条の2に「令第九条の三第二号の厚生労働省令で定めるものは、特定第二類物質」であるとされている。
従って、特定化学物質の特定第二類物質を製造し、又は取り扱う特定化学設備及びその付属設備は、届け出の対象となる。
(4)対象とならない。安衛則別表7第十八号は、特定化学物質の第三類物質のガス、蒸気又は粉じんが発散する屋内作業場に設ける発散抑制の設備を届け出の対象としていない。
※ そもそも特定化学物質の第三類物質は、特化則第4章(漏えいの防止)で規制されており、「ガス、蒸気又は粉じんが発散する屋内作業場に設ける発散抑制の設備」を設置することは義務付けられていないのである。従って、届け出の対象となり得ない。
(5)対象となる。安衛則別表7第二十五号により、石綿等の粉じんが発散する屋内作業場に設ける発散抑制の設備は、届け出の対象となる。