労働衛生コンサルタント試験 2013年 労働衛生関係法令 問01

事業場の安全衛生管理体制




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 このページは、2013年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2013年度(平成25年度) 問01 難易度 労働安全衛生管理体制に関する基本的な知識問題である。確実に正答できなければならない。
労働安全衛生管理体制

問1 事業場の安全衛生管理体制に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、誤っているものはどれか。

(1)労働者を常時 1200 人使用し、そのうち弗化水素、塩酸等のガス、蒸気が発散する場所における業務に 10 人の労働者が従事する製造業の事業場において、当該事業場に専属で第一種衛生管理者免許を有する者3人と当該事業場に非専属で歯科医師の資格を有する者1人を衛生管理者として選任している。

(2)労働者を常時 800 人使用し、そのうち著しく寒冷な場所における業務に従事する労働者が 20 人で、その他の有害業務はない製造業の事業場において、当該事業場に専属で衛生工学衛生管理者免許を有する者2人と第一種衛生管理者免許を有する者2人を衛生管理者として選任しているが、この中に専任の衛生管理者はいない。

(3)労働者を常時 300 人使用する熱供給業の事業場において、衛生委員会の議長には総括安全衛生管理者を指名し、委員は衛生管理者3人と産業医1人のほか、当該事業場の労働者で、衛生に関し経験を有する者1人と作業環境測定を行っている作業環境測定士1人で構成し、そのうち半数は労働者の過半数で組織する労働組合の推薦に基づいて指名している。

(4)労働者を常時 100 人使用するガス業の事業場において、安全委員会及び衛生委員会に代えて安全衛生委員会を設置し、委員会を開催したときは、その都度、遅滞なく、委員会における議事の概要を各作業場の見やすい場所に常時掲示するとともに、議事のうち重要なものについて記録を作成し、3年間保存することとしている。

(5)労働者を常時 500 人使用し、そのうち深夜業を含む業務に 100 人の労働者が従事するほか、重量物の取扱い等の有害業務に 300 人の労働者が従事する運送業の事業場において、当該事業場に専属の者ではないが労働衛生コンサルタント試験の試験区分「保健衛生」について合格した医師を産業医として選任している。

正答(1)

【解説】

(1)誤っている。労働者を常時 1200 人使用し、そのうち弗化水素、塩酸等のガス、蒸気が発散する場所における業務に 10 人の労働者が従事する製造業の事業場について、本肢に記されている事項を一つづつ検討しよう。

① 当該事業場に合計で4人の衛生管理者を選任していることは、安衛則第7条第1項第四号の表から正しい。

② 第一種衛生管理者免許を有する者3人と歯科医師の資格を有する者1人を衛生管理者としていることは、安衛則第7条第1項第三号には違反していない。また、労基則第18条第第九号に掲げる業務に常時従事している者は20人のみであるから、衛生工学衛生管理者免許を受けた者を選任しなくても安衛則第7条第1項第六号にも違反していない。

③ しかしながら、歯科医師の資格を有する者1人を非専属の衛生管理者としていることは、安衛則第7条第1項(第二号)に違反している

④ なお、第一種衛生管理者免許を有する者3人については専属としているので、安衛則第7条第1項(第二号)に違反していない。

【労働安全衛生法】

(衛生管理者)

第12条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、都道府県労働局長の免許を受けた者その他厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該事業場の業務の区分に応じて、衛生管理者を選任し、その者に第十条第一項各号の業務(第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第一項各号の措置に該当するものを除く。)のうち衛生に係る技術的事項を管理させなければならない。

 (略)

【労働安全衛生法施行令】

(衛生管理者)

第4条 法第十二条第一項の政令で定める規模の事業場は、常時五十人以上の労働者を使用する事業場とする。

【労働安全衛生規則】

(衛生管理者の選任)

第7条 法第十二条第一項の規定による衛生管理者の選任は、次に定めるところにより行わなければならない。

 (略)

 その事業場に専属の者を選任すること。ただし、二人以上の衛生管理者を選任する場合において、当該衛生管理者の中に第十条第三号に掲げる者がいるときは、当該者のうち一人については、この限りでない。

 次に掲げる業種の区分に応じ、それぞれに掲げる者のうちから選任すること。

 農林畜水産業、鉱業、建設業、製造業(物の加工業を含む。)、電気業、ガス業、水道業、熱供給業、運送業、自動車整備業、機械修理業、医療業及び清掃業 第一種衛生管理者免許若しくは衛生工学衛生管理者免許を有する者又は第十条各号に掲げる者

 (略)

 次の表の上欄に掲げる事業場の規模に応じて、同表の下欄に掲げる数以上の衛生管理者を選任すること。

事業場の規模
(常時使用する労働者数)
衛生管理者数
五十人以上二百人以下 一人
二百人を超え五百人以下 二人
五百人を超え千人以下 三人
千人を超え二千人以下 四人
二千人を超え三千人以下 五人
三千人を超える場合 六人

 次に掲げる事業場にあつては、衛生管理者のうち少なくとも一人を専任の衛生管理者とすること。

 常時千人を超える労働者を使用する事業場

 常時五百人を超える労働者を使用する事業場で、坑内労働又は労働基準法施行規則(昭和二十二年厚生省令第二十三号)第十八条各号に掲げる業務に常時三十人以上の労働者を従事させるもの

 常時五百人を超える労働者を使用する事業場で、坑内労働又は労働基準法施行規則第十八条第一号、第三号から第五号まで若しくは第九号に掲げる業務に常時三十人以上の労働者を従事させるものにあつては、衛生管理者のうち一人を衛生工学衛生管理者免許を受けた者のうちから選任すること。

 (略)

(衛生管理者の資格)

第10条 法第十二条第一項の厚生労働省令で定める資格を有する者は、次のとおりとする。

 医師

 歯科医師

 労働衛生コンサルタント

 前三号に掲げる者のほか、厚生労働大臣の定める者

【労働基準法施行規則】

第18条 法第三十六条第六項第一号の厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務は、次に掲げるものとする

一~八 (略)

 鉛、水銀、クロム、素、黄りん、ふつ素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリン、その他これに準ずる有害物の粉じん、蒸気又はガスを発散する場所における業務

 (略)

(2)正しい。(1)と同様に、労働者を常時 800 人使用し、そのうち著しく寒冷な場所における業務に従事する労働者が 20 人で、その他の有害業務はない製造業の事業場について、本肢の記載事項を検討する。

① 当該事業場に合計で4人の衛生管理者を選任していることは、安衛則第7条第1項第四号の表から違反とはならない。

② 衛生工学衛生管理者免許を有する者と第一種衛生管理者免許を有する者を衛生管理者として選任していることは、安衛則第7条第1項第三号に適合している。

③ 衛生管理者は全員が当該事業場に専属であるから、安衛則第7条第1項第二号に適合している。

④ 衛生管理者中に専任の衛生管理者がいないが、安衛則第7条第1項第五号のイ及びロの要件を満たさないので、違反にはならない。

(3)正しい。労働者を常時 300 人使用する熱供給業のこの事業場における、衛生委員会の委員等について以下に検討する。

① この事業場は、安衛法第10条第1項(安衛令第2条)により、総括安全衛生管理者を選任しなければならない。従って、安衛法第18条第4項が準用する同法第17条第3項により、議長には総括安全衛生管理者を指名していることは正しい。

② 委員に衛生管理者3人を指名していることは、安衛法第18条第2項(第二号)により正しい。なお、この事業場は、安衛則第7条第1項(第四号)により衛生管理者を2人以上選任しなければならないが、少なくとも3人を選任しているのでこの点についての違反はない。

③ 委員に産業医1人を指名していることは、安衛法第18条第2項(第三号)により正しい。

④ 委員に当該事業場の労働者で、衛生に関し経験を有する者を1人指名していることは、安衛法第18条第2項(第四号)により正しい。。

⑤ 委員に当該事業場の労働者で、作業環境測定を行っている作業環境測定士を1人指名していることは、安衛法第18条第3項により正しい。。

⑥ 委員のうち半数は労働者の過半数で組織する労働組合の推薦に基づいて指名していることは、安衛法第18条第4項が準用する同法第17条第4項により正しい。

【労働安全衛生法】

(総括安全衛生管理者)

第10条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、総括安全衛生管理者を選任し、その者に安全管理者、衛生管理者又は第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者の指揮をさせるとともに、次の業務を統括管理させなければならない。

一~五 (略)

2及び3 (略)

(安全委員会)

第17条 (第1項及び第2項 略)

 安全委員会の議長は、第一号の委員がなるものとする。

 事業者は、第一号の委員以外の委員の半数については、当該事業場に労働者の過半数で組織する労働組合があるときにおいてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときにおいては労働者の過半数を代表する者の推薦に基づき指名しなければならない。

 前二項の規定は、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合との間における労働協約に別段の定めがあるときは、その限度において適用しない。

(衛生委員会)

第18条 (第1項略)

 衛生委員会の委員は、次の者をもつて構成する。ただし、第一号の者である委員は、一人とする。

 総括安全衛生管理者又は総括安全衛生管理者以外の者で当該事業場においてその事業の実施を統括管理するもの若しくはこれに準ずる者のうちから事業者が指名した者

 衛生管理者のうちから事業者が指名した者

 産業医のうちから事業者が指名した者

 当該事業場の労働者で、衛生に関し経験を有するもののうちから事業者が指名した者

 事業者は、当該事業場の労働者で、作業環境測定を実施している作業環境測定士であるものを衛生委員会の委員として指名することができる。

 前条第三項から第五項までの規定は、衛生委員会について準用する。この場合において、同条第三項及び第四項中「第一号の委員」とあるのは、「第十八条第二項第一号の者である委員」と読み替えるものとする。

【労働安全衛生法施行令】

(総括安全衛生管理者を選任すべき事業場)

第2条 労働安全衛生法(以下「法」という。)第十条第一項の政令で定める規模の事業場は、次の各号に掲げる業種の区分に応じ、常時当該各号に掲げる数以上の労働者を使用する事業場とする。

 林業、鉱業、建設業、運送業及び清掃業 百人

 製造業(物の加工業を含む。)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゆう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゆう器小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業及び機械修理業 三百人

 その他の業種 千人

(4)正しいとしておくが、誤りともとれる文章である。労働者を常時 100 人使用するガス業の事業場においては、安衛法第17条(及び安衛令第18条(第二号)/同第2条第二号)により安全委員会を設けなければならず、また安衛法第18条(及び安衛令第9条)により衛生委員会を設けなければならない。従って、安衛法第19条により安全衛生委員会を設置することで足りる。

また、委員会を開催したときは、その都度、遅滞なく、委員会における議事の概要を各作業場の見やすい場所に常時掲示する等の方法で労働者に周知させることで、安衛則第23条第3項には違反しない。

問題は、議事のうち重要なものについて記録を作成し、3年間保存することとしていることである。文面からは「委員会の意見及び当該意見を踏まえて講じた措置の内容」について記録・保存をしていないように読める。だとすれば、安衛則第23条第4項(第一号)に違反しているが、この事項について記録・保存をしていないとは書かれていないので、違反はないということのようだ。

ただ、このような書き方が問題として適切かの疑問は残る。せめて、「議事のうち重要なものについて記録を作成し・・・」とするべきであろう。

【労働安全衛生法】

(安全委員会)

第17条 事業者は、政令で定める業種及び規模の事業場ごとに、次の事項を調査審議させ、事業者に対し意見を述べさせるため、安全委員会を設けなければならない。

一~三 (略)

2~5 (略)

(衛生委員会)

第18条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、次の事項を調査審議させ、事業者に対し意見を述べさせるため、衛生委員会を設けなければならない。

一~四 (略)

2~4 (略)

(安全衛生委員会)

第19条 事業者は、第十七条及び前条の規定により安全委員会及び衛生委員会を設けなければならないときは、それぞれの委員会の設置に代えて、安全衛生委員会を設置することができる。

2~4 (略)

【労働安全衛生法施行令】

(総括安全衛生管理者を選任すべき事業場)

第2条 (柱書 略)

 (略)

 製造業(物の加工業を含む。)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゆう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゆう器小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業及び機械修理業 三百人

 (略)

(安全委員会を設けるべき事業場)

第8条 法第十七条第一項の政令で定める業種及び規模の事業場は、次の各号に掲げる業種の区分に応じ、常時当該各号に掲げる数以上の労働者を使用する事業場とする。

 林業、鉱業、建設業、製造業のうち木材・木製品製造業、化学工業、鉄鋼業、金属製品製造業及び輸送用機械器具製造業、運送業のうち道路貨物運送業及び港湾運送業、自動車整備業、機械修理業並びに清掃業 五十人

 第二条第一号及び第二号に掲げる業種(前号に掲げる業種を除く。) 百人

(衛生委員会を設けるべき事業場)

第9条 法第十八条第一項の政令で定める規模の事業場は、常時五十人以上の労働者を使用する事業場とする。

【労働安全衛生規則】

(委員会の会議)

第23条 (第1項及び第2項 略)

 事業者は、委員会の開催の都度、遅滞なく、委員会における議事の概要を次に掲げるいずれかの方法によつて労働者に周知させなければならない。

 常時各作業場の見やすい場所に掲示し、又は備え付けること。

二及び三 (略)

 事業者は、委員会の開催の都度、次に掲げる事項を記録し、これを三年間保存しなければならない。

 委員会の意見及び当該意見を踏まえて講じた措置の内容

 前号に掲げるもののほか、委員会における議事で重要なもの

 (略)

(5)正しい。本肢の事業場は、労働者を常時 500 人使用し、そのうち深夜業を含む業務に 100 人の労働者が従事するほか、重量物の取扱い等の有害業務に 300 人の労働者が従事している。すなわち、1000人以上の労働者を使用しておらず、安衛則第13条第1項第三号の業務に500人以上の労働者を従事させてもいない。従って、産業医に専属の者を選任しなくとも、安衛則第13条第1項(第三号)の規定に違反しない。

また、安衛則第14条第2項(第三号)の規定により、労働衛生コンサルタント試験の試験区分「保健衛生」について合格した医師を産業医として選任することができる。

なお、このことは、運輸業であるかどうかにかかわりない。

【労働安全衛生法】

(産業医等)

第13条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、医師のうちから産業医を選任し、その者に労働者の健康管理その他の厚生労働省令で定める事項(以下「労働者の健康管理等」という。)を行わせなければならない。

 産業医は、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識について厚生労働省令で定める要件を備えた者でなければならない。

3~6 (略)

【労働安全衛生法施行令】

(産業医を選任すべき事業場)

第5条 法第十三条第一項の政令で定める規模の事業場は、常時五十人以上の労働者を使用する事業場とする。

【労働安全衛生規則】

(産業医の選任等)

第13条 法第十三条第一項の規定による産業医の選任は、次に定めるところにより行わなければならない。

一及び二 (略)

 常時千人以上の労働者を使用する事業場又は次に掲げる業務に常時五百人以上の労働者を従事させる事業場にあつては、その事業場に専属の者を選任すること。

イ~ヘ (略)

 重量物の取扱い等重激な業務

チ及びリ (略)

 深夜業を含む業務

ル~カ (略)

 常時三千人をこえる労働者を使用する事業場にあつては、二人以上の産業医を選任すること。

2~6 (略)

(産業医及び産業歯科医の職務等)

第14条 (第1項 略)

 法第十三条第二項の厚生労働省令で定める要件を備えた者は、次のとおりとする。

一及び二 (略)

 労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験の区分が保健衛生であるもの

四及び五 (略)

3~7 (略)

2021年02月07日執筆