労働衛生コンサルタント試験 2013年 労働衛生一般 問30

リスクアセスメントのリスク見積り手法




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 このページは、2013年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2013年度(平成25年度) 問30 難易度 リスクの見積りは化学物質リスクアセスメント指針の基本事項。確実に正答できなければならない。
リスクの見積り

問30 危険性または有害性等の調査等におけるリスクの見積りに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)化学物質等による疾病のリスクを、化学物質等の有害性の度合及びばく露の量をそれぞれ考慮して見積もる。

(2)負傷又は疾病の重篤度とそれらが発生する可能性の度合を、それぞれ相対的に数値化し、その数値を加算又は乗算等をすることでリスクを見積もる。

(3)負傷又は疾病の重篤度の尺度として、休業日数等を使用する。

(4)リスクの見積りは、物理的作用、化学物質又は物理因子の有害性によるもののような、負傷又は疾病の類型ごとに実施する。

(5)想定される最悪の重篤度として、過去に発生した負傷又は疾病の重篤度を使用する。

正答(5)

【解説】

本問は、一般のリスクアセスメント指針ではなく、「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針」(以下、本問の解説において「指針」という。)の「9 リスクの見積り」に関する問題である(※)

※ 厳密に言えば、本問出題当時は旧指針及び旧通達が有効であった。しかし、本問の範囲内では、それほど大きな違いはない。

なお、平成27年9月18日基発0918第3号「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針について」(以下、本問の解説において「通達」という。)についても適宜、参照されたい。

(1)正しい。指針の「9 リスクの見積り」の(1)のイに、リスクを見積もる方法の一つとして、「当該業務に従事する労働者が化学物質等にさらされる程度(ばく露の程度)及び当該化学物質等の有害性の程度を考慮する方法」が挙げられている。

(2)正しい。指針の「9 リスクの見積り」の(1)のアの(イ)に、リスクを見積もる方法の一つとして「発生可能性及び重篤度を一定の尺度によりそれぞれ数値化し、それらを加算又は乗算等してリスクを見積もる方法」が挙げられている。

(3)正しい。指針の「9 リスクの見積り」の(3)のイに、「負傷又は疾病の重篤度は、傷害や疾病等の種類にかかわらず、共通の尺度を使うことが望ましいことから、基本的に、負傷又は疾病による休業日数等を尺度として使用すること」とされている。

(4)正しい。指針、通達には(旧指針も含めて)明記されていないが、想定されるすべての、危険性又は有害性についてリスクを評価するべきことは当然である。また、有害性について、ばく露経路(吸入、経皮など)ごとに行わなければならないことも当然であろう。

なお、通達には「9 リスクの見積りについて」の(1)のアにおいて、「リスクの見積りは、危険性又は有害性のいずれかについて行う趣旨ではなく、対象となる化学物質等に応じて特定された危険性又は有害性のそれぞれについて行うべきものであること」とされている。

(5)誤り。指針の「9 リスクの見積り」の(3)のアに、「過去に実際に発生した負傷又は疾病の重篤度ではなく、最悪の状況を想定した最も重篤な負傷又は疾病の重篤度を見積もること」とされている。過去に発生した負傷又は疾病の重篤度を使用するのではない。

2021年03月21日執筆

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