労働衛生コンサルタント試験 2013年 労働衛生一般 問19

有機溶剤の物理的性質と有害性等




問題文
トップ
ポジティブな人のイラスト(女性)

 このページは、2013年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」か「パンくずリスト」をご利用ください。

 柳川に著作権があることにご留意ください。

2013年度(平成25年度) 問19 難易度 有機溶剤の有害性等に関するごく初歩的な知識問題。これを正答できないなら合格は覚束ない。
有機溶剤

問19 有機溶剤に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)混合有機溶剤から蒸発する蒸気の成分の割合は、必ずしもその有機溶剤の成分の混合割合とは一致しない。

(2)有機溶剤は皮膚から吸収されないので、その蒸気の吸入を防ぐ対策を実施すればよい。

(3)有機溶剤の中には、長期間吸入すると肝機能障害を引き起こすものがある。

(4)有機溶剤用隔離式防毒マスクは、有機溶剤の空気中の濃度が2%を超えるときには使用してはならない。

(5)有機溶剤の高濃度の蒸気は、比重が大きいので、ピットの中などに溜まりやすい。

正答(2)

【解説】

(1)正しい。混合有機溶剤のそれぞれの成分の蒸気圧が異なっていれば、気中へ蒸発する蒸気の成分の割合は異なる。従って、必ずしもその有機溶剤の成分の混合割合とは一致しない。

(2)誤り。これは説明するまでもないだろう。トルエンやキシレンなどほとんどの有機溶剤は皮膚から吸収される。経皮吸収を防止するための対策が重要である。

(3)正しい。これも説明するまでもないだろう。飲用のアルコールでも長期にわたって大量に飲用すれば肝硬変になることがあるのはよく知られている。

有機溶剤の多くは肝臓の代謝酵素の働きによって尿から排出されやすい物質に代謝されて、尿中から体外へ排出される。この代謝の過程で活性代謝物や活性酸素種が生成され、これが間接的に炎症性サイトカインを誘導し、肝細胞で炎症が発生して変性・壊死し、肝機能障害を引き起こすのである。

(4)正しい。有機溶剤用隔離式防毒マスクに限らず、給気式マスク以外の防毒マスクは、有害物の濃度が2%(アンモニアの場合は3%)を超えるおそれがある場合は使用してはならない。

(5)正しい。空気1モルの質量は約29gであるが、例えば、エタノールは約46g、メタノールは約32gである。一般に有機溶剤の蒸気の比重は空気よりも重い。このため、有機溶剤の高濃度の蒸気は、ピットの中などに溜まりやすい。

2021年02月23日執筆