労働衛生コンサルタント試験 2013年 労働衛生一般 問15

内分泌ホルモンの分泌組織と欠乏による疾患




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 このページは、2013年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2013年度(平成25年度) 問15 難易度 ホルモンの分泌組織、欠乏による疾患の出題はめずらしい。合否を分ける問題だったか。
ホルモンの分泌組織等

問15 内分泌ホルモンA、その分泌組織B及び欠乏により生じる疾患Cとの組み合わせとして、誤っているものは次のうちどれか。

 
(1) コルチゾール 副腎皮質 神経過敏症
(2) メラトニン 松果体 不眠症
(3) サイロキシン 甲状腺 粘液水腫
(4) インスリン すい 糖尿病
(5) 成長ホルモン 視床下部 小人症

正答(5)

【解説】

(1)正しい。コルチゾールは、別名ストレスホルモンとも呼ばれ、ストレスを受けると分泌が促されるホルモンである。血糖値や血圧を上げる役割の他、免疫系・中枢神経系・代謝系にも影響を与え、副腎皮質から分泌される。

コルチゾールが欠乏すると、無気力感、不安感、抑うつ、記銘力障害などの精神症状が発現する。不安感や抑うつ感が強くなるので、神経過敏となることがある。

なお、他の症状としては、食欲不振、倦怠感、低血圧、低血糖、筋力低下、下痢などがある。

(2)正しい。メラトニンは、直接的に睡眠誘導作用を持つほか、概日リズム(サーカディアンリズム)を調節する役割を持つホルモンで、松果体から分泌される。その欠乏は、不眠障害をもたらす。高齢になると睡眠時間が短くなるのは、メラトニンの分泌低下が原因である。

(3)正しい。サイロキシンは、糖の代謝や蛋白質の合成などに関わり、成長にも影響を与える甲状腺から分泌されるホルモンである。

甲状腺機能低下症等によってサイロキシンが欠乏すると、体内の物質や水分の代謝が進まず、皮下や間質にグリコサミノグリカンが沈着して圧痕を残さないむくみがでる。この“むくみ”の重症化したものが「粘液水腫」である。甲状腺機能低下症の合併症として、生命に危険が及ぶ粘液水腫昏睡がある。

サイロキシン欠乏の他の症状としては、疲労感、だるさ、食欲の低下、寒気、脱毛、皮膚のかさつき、便秘などの身体的な症状の他、眠気、記憶力の低下、無気力、抑うつ、集中力の低下などの精神症状がある。

(4)正しい。インスリンは、糖の消費を促進する作用を持つ膵臓のランゲルハンス島から分泌されるホルモンである。欠乏すると糖尿病となる。

(5)誤り。成長ホルモンは、代謝の促進や成長にかかわるホルモンで、脳下垂体から分泌される。視床下部から分泌されるのではない。

欠乏すると発症する疾病には、下垂体機能低下症、成長ホルモン分泌不全低身長症(小人症)、甲状腺機能低下、肥満症などがある。

2021年02月20日執筆