問10 特別教育に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、誤っているものはどれか。
(1)チェーンソーを用いて行う造材の業務に労働者をつかせるときは、特別教育を行わなければならない。
(2)エックス線装置を用いて行う透過写真の撮影の業務に労働者をつかせるときは、特別教育を行わなければならない。
(3)有機溶剤等を製造する工程において当該有機溶剤等を容器に注入する業務に労働者をつかせるときは、特別教育を行わなければならない。
(4)特別教育の科目の全部又は一部について十分な知識及び技能を有していると認められる労働者については、当該科目についての特別教育を省略することができる。
(5)特別教育を行ったときは、特別教育の受講者、科目等の記録を作成して、これを3年間保存しておかなければならない。
このページは、2012年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2012年度(平成24年度) | 問10 | 難易度 | 特別教育に関する基本的な知識問題。確実に正答できなければならない。 |
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特別教育 | 1 |
問10 特別教育に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、誤っているものはどれか。
(1)チェーンソーを用いて行う造材の業務に労働者をつかせるときは、特別教育を行わなければならない。
(2)エックス線装置を用いて行う透過写真の撮影の業務に労働者をつかせるときは、特別教育を行わなければならない。
(3)有機溶剤等を製造する工程において当該有機溶剤等を容器に注入する業務に労働者をつかせるときは、特別教育を行わなければならない。
(4)特別教育の科目の全部又は一部について十分な知識及び技能を有していると認められる労働者については、当該科目についての特別教育を省略することができる。
(5)特別教育を行ったときは、特別教育の受講者、科目等の記録を作成して、これを3年間保存しておかなければならない。
(3)
【解説】
特別教育に関する問題で、有機溶剤又は特定化学物質を取り扱う業務で特別教育が必要と書かれていたら、誤りとしてよい。労働衛生コンサルタント試験では、特別教育に関する問題については、かなりの年度において、これだけで正答できるのである。
(1)正しい。特別教育を行わなければならない業務は安衛則第 36 条に定められている。同条第八号に、チェーンソーを用いて行う造材の業務が定められている。
なお、2020(令和2)年8月1日施行の安衛則等の改正で、第 36 条の旧八号と八号の二が統合されて新八号となったが、本肢の正誤に影響はない。
【労働安全衛生法】
(安全衛生教育)
第59条 (第1項及び第2項 略)
3 事業者は、危険又は有害な業務で、厚生労働省令で定めるものに労働者をつかせるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育を行なわなければならない。
【労働安全衛生規則】
(特別教育を必要とする業務)
第36条 法第59条第3項の厚生労働省令で定める危険又は有害な業務は、次のとおりとする。
一~七の二 (略)
八 チェーンソーを用いて行う立木の伐木、かかり木の処理又は造材の業務
九~二十七 (略)
二十八 エツクス線装置又はガンマ線照射装置を用いて行う透過写真の撮影の業務
二十八の二~四十一 (略)
※ 安衛則第 36 条は、よく改正される条文であるが、本問出題当時の第八号は以下のように2つの号に分かれて定められており、第八号はチェーンソーを用いて行う作業に限定されていなかった。
(特別教育を必要とする業務)
第36条 法第59条第3項の厚生労働省令で定める危険又は有害な業務は、次のとおりとする。
一~七の二 (略)
八 胸高直径が70センチメートル以上の立木の伐木、胸高直径が20センチメートル以上で、かつ、重心が著しく偏している立木の伐木、つりきりその他特殊な方法による伐木又はかかり木でかかつている木の胸高直径が20センチメートル以上であるものの処理の業務(第六号の二に掲げる業務を除く。)
八の二 チェーンソーを用いて行う立木の伐木、かかり木の処理又は造材の業務(前号に掲げる業務を除く。)
九~二十七 (略)
二十八 エツクス線装置又はガンマ線照射装置を用いて行う透過写真の撮影の業務
二十八の二~四十 (略)
(2)正しい。安衛則第 36 条第二十八号に、エックス線装置を用いて行う透過写真の撮影の業務が定められている。
(3)誤り。安衛則第 36 条には、有機溶剤等を製造する工程において当該有機溶剤等を容器に注入する業務は含まれていない。
(4)正しい。安衛則第 37 条の規定により、特別教育の科目の全部又は一部について十分な知識及び技能を有していると認められる労働者については、当該科目についての特別教育を省略することができる。
社外の教育機関が特別教育を行って修了証を発行すると、その修了証を保持している者に対して特別教育を受けさせる必要がないと考えられているのは、本条の規程が根拠となっている。このため、特別教育は「教育」であるにもかかわらず「資格」のような理解がされるようになっているのである。
なお、安衛法第 61 条の就業制限業務に関する技能講習・免許の保有者が、下位の特別業務の対象業務を行う場合に、特別教育を受講する必要がないのも本条に根拠がある。このこともあって、特別教育はますます「資格」のように扱われているが、法的には「資格」ではないので混乱しないようにすること。
【労働安全衛生規則】
(特別教育の科目の省略)
第37条 事業者は、法第59条第3項の特別の教育(以下「特別教育」という。)の科目の全部又は一部について十分な知識及び技能を有していると認められる労働者については、当該科目についての特別教育を省略することができる。
(5)正しい。安衛則第 38 条の規定により、特別教育を行ったときは、特別教育の受講者、科目等の記録を作成して、これを3年間保存しておかなければならない。
なお、修了証を発行しなければならないとする規定はない。従って、対象業務に従事する労働者が修了証を携帯していなければならないとする規定もない。
【労働安全衛生規則】
(特別教育の記録の保存)
第38条 事業者は、特別教育を行なつたときは、当該特別教育の受講者、科目等の記録を作成して、これを3年間保存しておかなければならない。