問12 厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。
(1)職場復帰支援の第1ステップは労働者から病気休業診断書が提出された時点から始まり、体業中も必要に応じて労働者に連絡を取る。
(2)産業医が主治医から労働者の職場復帰に関する意見を収集する際には、労働者の同意は不要である。
(3)労働者の業務遂行能力の評価では、適切な睡眠覚醒リズムの有無について聞く必要がある。
(4)産業医が選任されていない50人未満の小規模事業場では、地域産業保健センター等の事業場外資源による助言をもとにしながら職場復帰の可否について判断する。
(5)最終的な職場復帰の決定は、産業医等の意見を踏まえて事業者が行う。
このページは、2012年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2012年度(平成24年度) | 問12 | 難易度 | 職場復帰に関する基本的な知識問題である。正答できなければならない。 |
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職場復帰支援の手引き | 2 |
問12 厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。
(1)職場復帰支援の第1ステップは労働者から病気休業診断書が提出された時点から始まり、体業中も必要に応じて労働者に連絡を取る。
(2)産業医が主治医から労働者の職場復帰に関する意見を収集する際には、労働者の同意は不要である。
(3)労働者の業務遂行能力の評価では、適切な睡眠覚醒リズムの有無について聞く必要がある。
(4)産業医が選任されていない50人未満の小規模事業場では、地域産業保健センター等の事業場外資源による助言をもとにしながら職場復帰の可否について判断する。
(5)最終的な職場復帰の決定は、産業医等の意見を踏まえて事業者が行う。
正答(2)
【解説】
本問は、問題文にもあるように「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」(以下「手引き」という。)に関する知識問題である。
(1)正しい。手引は職場復帰支援の流れを5つのステップで説明している。職場復帰支援の第1ステップは労働者から病気休業診断書が提出された時点から始まり、体業中も必要に応じて労働者に連絡を取る。
(2)誤り。手引きの3の(3)のアの「(イ)産業医等による主治医からの意見収集」には、「産業医等は労働者の同意を得た上で、下記(ウ)のa及びbの判断を行うに当たって必要な内容について主治医からの情報や意見を積極的に収集する
」とされている。ここに「下記(ウ)のa及びbの判断」とは、「治療状況及び病状の回復状況の確認」及び「業務遂行能力についての評価」である。
そもそも、労働者と事業者は、対等な雇用契約の当事者なのである。労働者側の主治医に対して、経営者側の産業医が、(他に正当な理由がなければ)労働者の同意なく、労働者の職場復帰に関する意見を収集してよいはずがないだろう。
(3)正しい。「必要がある」かどうかはともかく、手引きの3の(3)のアの「(ウ)労働者の状態等の評価」の「b 業務遂行能力についての評価」で、「適切な睡眠覚醒リズムの有無」を確認することとされている。正しいとしてよいであろう。
(4)正しい。手引きの3の(3)の「イ 職場復帰の可否についての判断」には、「産業医が選任されていない50人未満の小規模事業場においては、人事労務管理スタッフ及び管理監督者等、又は衛生推進者若しくは安全衛生推進者が、主治医及び地域産業保健センター、労災病院勤労者メンタルヘルスセンター等の事業場外資源を活用しながら判断を行う
」とされている。
(5)正しい。手引きの3の(4)の「ウ 事業者による最終的な職場復帰の決定」には、「『職場復帰に関する意見書』等で示された内容について管理監督者、人事労務管理スタッフの確認を経た上で、事業者による最終的な職場復帰の決定を行
」(う)とされている。最終的な職場復帰の決定は、雇用契約の当事者である(労働者と)事業者が行うことは当然であろう。
なお、ここにいう事業者とは、事業場のトップのことではない。事業者としての権限を行使できる者という意味であり、事業者から権限を与えられているのであれば、人事部長や総務部長という役職の者が決定できることは当然である。