労働衛生コンサルタント試験 2012年 労働衛生一般 問04

電離放射線と健康影響




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 このページは、2012年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2012年度(平成24年度) 問04 難易度 電離放射線に関する基本的な知識問題である。確実に正答できなければならない。
電離放射線

問4 電離放射線に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

(1)等価線量は、ある臓器・組織の平均吸収線量と放射線加重係数との積によって表す。

(2)実効線量は、確率的影響を評価するための指標である。

(3)皮膚障害や白内障は、確定的影響に分類される。

(4)確率的影響では、被ばく線量の増加とともに、影響(障害)の重篤度が増大する。

(5)実効線量及び等価線量の単位としては、ともにシーベルト(Sv)が用いられる。

正答(4)

【解説】

(1)正しい。等価線量は、人体の特定の組織・臓器が受けた吸収線量に、放射線の種類及びエネルギーに応じて定められた放射線加重係数を乗じたもので、単位としてはSv(シーベルト)が用いられる。

(2)正しい。実効線量は、人体の各組織・臓器が受けた等価線量に、当該組織・臓器の組織加重係数を乗じ、これらを合計したもので、単位としてはSv (シーベルト)が用いられる。

要は、吸収線量とは、物質に吸収された放射線のエネルギーの量のことであって、物理的な概念である。等価線量とは、放射線の種類ごとに人体が影響を受ける程度を表し、実効線量とは、さらに人体の臓器ごとの影響を考慮したものと考えておけばよい。

吸収線量は測定可能であるから、これらの量を吸収線量で表すと次のようになる。

吸収線量 = 吸収線量

※ 本式は自明であるが、厳密に言えば、人体の吸収線量は、体内の気体の吸収線量を測定し、気体に対する体内組織の阻止能比を乗ずることによって算定する。

等価線量 = 吸収線量 × 放射線加重係数

実効線量 = ∑ 吸収線量 × 放射線加重係数 × 組織加重係数

放射線の種類 放射線加重係数
ガンマ線、エックス線、ベータ線
陽子線
アルファ線、重イオン 20
中性子線 2.5~20
組織 組織加重係数
骨髄(赤色)、結腸、肺、胃、乳房、残りの組織 0.12
生殖腺 0.08
膀胱、食道、肝臓、甲状腺 0.04
骨表面、脳、唾液腺、皮膚 0.01

※ 組織の数に組織加重係数を乗じて、合計すると1.0になる。

(3)正しい。確定的影響では、受けた放射線の量によって、影響の重篤度が変わる。また、閾値が存在し、閾値よりも受けた射線の量が少ないと影響がないと考えられている。

放射線によって、組織維持の要である細胞集団が傷つくことによって生じる。嘔吐、脱毛、造血機能の低下、皮膚障害などの急性障害と白内障が確定的影響である。

なお、白内障は晩発的影響であるが、確定的影響であることに留意すること。

(4)誤り。確率的影響では、被ばく線量の増加とともに、影響(障害)の発症する可能性が増大する。重篤度が増大するのではない

(5)正しい。(1)と(2)の解説で述べた通り。実効線量及び等価線量の単位としては、ともにシーベルト(Sv)が用いられる。

2022年01月07日執筆