有機溶剤の物性等

問２　有機溶剤の性質に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

（１）有機溶剤は、一般に蒸気の比重が空気よりも大きく、低いところに滞留する傾向がある。

（２）有機溶剤は脂溶性であることが重要な性質であり、水と混合すると必ず２層に分離する。

（３）有機溶剤は一般に可燃性であるが、ハロゲン化炭化水素である有機溶剤の中には難燃性のものがある。

（４）有機溶剤の中には、呼吸器から吸収されるもののほかに、皮膚から吸収されるものがある。

（５）シンナーと呼ばれるものは、一般に異なる有機溶剤を混合したもので、成分である有機溶剤の種類やその成分比はさまざまである。

正答（２）

【解説】

（１）正しい。誤り。空気の分子量は約29であり、22.4リットル当たりの重さが約29ｇとなる。一方、代表的な有機溶剤の分子量は、トルエン：92.14、キシレン（m-体）：106．17、シクロヘキサン：84.16、アセトン：58.08、メタノール32.04、エタノール46.07などで、いずれも空気より重い。

このため、有機溶剤の使用温度が常温であれば、局所排気装置は一般に下方吸引の方が効率的であり、センサーは低い位置につける方が好ましい。

（２）誤り。有機溶剤は脂溶性の溶剤であるが、メタノール、エタノール、アセトンなどは脂溶性とともに水溶性をも有する。従って、水と混合すると必ず２層に分離するというわけではない^（※）。

※　功刀彰他「有機溶媒と水の混合系」（化学と教育 Vol.40 No.12 1992年）

（３）正しい。有機溶剤は、一般に可燃性であるが、塩化メチレンやクロロホルムなどハロゲン化炭化水素^（※）には難燃性のものがある。

※　ハロゲン化炭化水素とは、炭化水素の水素原子をハロゲン原子（フッ素、塩素、臭素、沃素等）で置換した化合物。

（４）正しい。これまでの中毒事例や実験結果によって、ジメチルアセトアミドやジメチルホルムアミドなど多くの有機溶剤は、経皮吸収されることが判明している。

（５）正しい。シンナーには、塗料用シンナー、ラッカーシンナーなどがあるが、その成文は、トルエン、酢酸メチル、メタノール、イソブタノールなどが主成分で、その他には酢酸イソブチル、酢酸ブチル、キシレン、ブチルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、エチレングリコールモノエチルエーテルなどが含まれるものもある。

2022年01月07日執筆