※ イメージ図(©photoAC)
当サイトは、2023年1月にサーバーをさくらのレンタルサーバーからエックスサーバーに移行しました。その時点でエックスサーバの最新のサーバーに割り当てられたのはいうまでもありません。
しかし、エックスは毎年のようにサーバーを新型に更新しています。2024年3月21日に、同社より新サーバの提供を開始するとのメールによる連絡を受けました。
既存のユーザーもサーバー移行が可能とのことです。そこで、早速移行してみましたので、その体験と速度の測定結果を報告します。
- 1.エックスサーバーが新サーバーの提供開始
- (1)エックスサーバーが高性能の新サーバーの提供開始
- (2)新サーバーへの移行の手続き
- 2.どの程度早くなったのか
- (1)体感では確実に早くなった
- (2)Google 社の PageSpeed Insights による測定
- 3.最後に
1.エックスサーバーが新サーバーの提供開始
執筆日時:
(1)エックスサーバーが高性能の新サーバーの提供開始
ア エックスサーバーとサーバー能力の向上
※ イメージ図(©photoAC)
当サイトは、2023年の1月にレンタルサーバをそれまでのさくらのレンタルサーバーからエックスサーバーに移転している。当サイトの閲覧数の増加に対応するため、性能の向上を図ったものである。
エックスサーバでは、その時点で最も新しいサーバーに割り当てられたことは言うまでもない。しかし、エックスサーバーは、毎年のようにサーバーの性能向上を図っている。そして、新しい高性能のサーバーが提供された場合、既存のユーザーも新サーバーへ移行することができるのである(※)。
※ 新サーバーは PHP が古いサイトでは動作しないこともあり、またサーバーを移行すればサーバー番号が変わるのでメールソフトの設定も変更する必要がある。このため、サーバー移行を望まないユーザーもいるため、あくまでも希望者のみが移行することとなる。
企業のサイトの場合、新サーバの提供が開始されても移行しないことも多いのが実態であるが、せっかく高性能のサーバーのサービスを受けられ、閲覧速度の改善があり得るのだから移行しないことはもったいないことではある。
イ エックスサーバーの2024年3月の新型サーバーの提供開始
※ イメージ図(©photoAC)
2024年に3月21日に、同社より新サーバの提供を開始するとのメールによる連絡があった。
それによると、新サーバーの性能の向上は次のようになるとのことである。かなりの性能の向上であり、競合他社の同レベルのサーバーの向上を大きく上回ることになる。また、公表されていない不具合の解消などの性能向上も期待できるだろう
【新サーバーの性能向上】
- CPU性能が従来の 2.2 倍に向上
- CPUにAMD社の第四世代 EPYC プロセッサーを採用(パフォーマンスとセキュリティの向上)
- サーバーあたりのコア数が従来の2倍の「128コア256スレッド」に拡張
- ディスク性能が 32 倍に向上
- 最新ハードウェア構成によりI/O(Input/Output)性能が大幅に向上
- すべてのストレージで高速接続インターフェース「NVMe」を採用
- 一般的な SSD(オール SSD やピュア SSD)と比較して最大32倍の読み込み速度を実現
- メモリ容量が1.5TBに増強
- 搭載メモリの容量を 1.0TB から 1.5TB に増強
- 搭載メモリを従来のDDR4から最新規格のDDR5に強化しデータ転送速度が大幅に向上
安全を考えれば、新技術というものは初期には様々な不具合があり得るので、しばらく待ってから移行する方が良いということにはなるかもしれない。
また、サーバーの速度が向上したからと言って、サイトの読み込み速度が劇的に早くなるとは限らない。他にボトルネックになるものがあれば、ほとんど速度改善されないということもあり得るのだ。
しかし、サーバーが新しくなり、またメモリ容量に余裕ができたことで、そのサーバーにアクセスが集中したときに速度が遅くなりにくいというメリットはあろう。また、セキュリティや信頼性が向上していることも考えられる。
いずれにせよ、筆者の性格は、このような新しい技術は試してみないと気が済まないのである。そこで、早速、詳しく調べてみることにした。
ウ サーバー移行ができないサイト
なお、次のようなサイトはサーバー移行ができないとのことであるが、当サイトはいずれにも該当しないと思われる。
【新サーバーに移行できないサイト】
- 最新サーバー環境で非対応のPHPバージョンが選択されている場合
- 独自SSLの発行申請中の場合
- 「独自IPアドレスあり」の独自SSL設定が存在する場合
- サーバー利用期限が1ヶ月以内の場合
- その他、移行作業で引き継ぐことができない設定情報が存在する場合
PHPのバージョンが問題になるのは、WordPress などを利用していて PHP のバージョンアップをしていない場合であろうが、当サイトはそもそも PHP を利用していない。
SSL もエックスサーバー移行時にエックスサーバーに申請しているし、利用期限も問題はない。その他の理由の内容は明確ではないが、データ移行の申請時に自動的に判断されるようだ。
では、早速、申請してみよう。
(2)新サーバーへの移行の手続き
ア 新サーバーへの移行の手続き
サーバーの移行手続きは極めて簡単である。①現行のサーバーからすべてのデータを新サーバーにコピーし、②必要に応じて新サーバーの動作を確認して、③DNS を切り替えれば完了である。
(ア)新サーバーへのデーターコピー
※ イメージ図(©photoAC)
詳細な流れは「新サーバー簡単移行」に示されている。
また、実際の作業のやりかたは「新サーバー簡単移行 ご利用手順」にマニュアルが示されているので、その通りにすればよい。
まず、「エックスサーバーアカウント」にログインして、左側のメニューの「新サーバー簡単移行」をクリックし、移行するサイトを選択して「データコピー申請」をする。
これで、現行サーバーと新サーバーに2つのサイトができることになる。筆者の場合、14時27分に申請したところ、14時35分からデータコピーが始まり、14時47分にコピーが完了した。その間、わずか20分である(※)。
※ データコピー申請時のメールに「データコピー開始までに数時間~最大72時間程度を要する場合がある」と表示されており、データコピー開始時のメールには「データコピー完了までに数時間~最大24時間程度を要する場合がある」と表示されていたが、あっけなく終了した。
(イ)新サーバーの動作確認
次に、新サーバーにコピーされたサイトデータが正常に動作されるかを確認する。その方法は、「WordPressなどのプログラムを使ったサイトの動作を確認する方法」に記載されている。筆者は、この確認は省略した。確かに、当サイトでは Perl を用いた掲示板システム等は利用しているが、最も普及している Perl5 のバージョンなので動かないとは思えなかったからである。
(ウ)DNS の切替え
※ イメージ図(©photoAC)
最後に、DNS を切り替えるのだが、ここも自動で行われる。「サーバー切り替え」に従って、「サーバー切り替え」ボタンをクリックするだけである。
しばらくすると、「新サーバー簡単移行完了」のメールが来る。これで、サーバーは新サーバーに移行している(※)。
※ ただし、DNS のキャッシュの設定時間中は、旧サーバーが表示されるので、「新サーバー簡単移行完了」のメールが来ても、その後しばらくは表示されているサイトが旧サーバーのものである可能性がある。
イ メーラー(メールソフト)、FTP ソフトの設定変更など
サーバーが移行した以上、サーバー番号も変更になる。従って、メーラー(メールソフト)やFTP ソフトの設定変更も必要になる。これは、エックスサーバー側ではできないので、自分でやるしかない。
(ア)メーラー(メールソフト)
メールサーバーも新サーバーに移転するので、OUTLOOK などのメーラー(メールソフト)を用いている場合は、メーラーの設定のサーバー番号を新サーバーのものに変更する必要がある。そうしないと、新サーバに配送される新しいメールが読めないことになる(※)。
※ サーバーを切り替えたあとしばらくは、旧サーバーにメールが来ることがあるので注意する必要がある。
(イ)FTP ソフト
また、忘れがちなのが FTP ソフト(FileZilla、FFFTPなど)の設定変更である。FTP ソフトの設定で、パブリッシュ先のサーバー番号を変更しないと、新しくパブリッシュしたデータが旧サーバーにアップされてしまい(※)、新しいサーバーのデータが更新されないことになる。
※ サーバー移行完了から 14 日間は旧サーバーにもデータを残しておく設定のようだ。
(ウ)その他
その他、注意するべきこととして、掲示板などを使用している場合、データコピーが始まったあとで、移行完了までに掲示板に書き込みが行われると、その書き込みは移行後のサーバには反映されずに消えてしまうので留意する必要がある。書き込んだ利用者は、サイト管理者が意図的に削除したと誤解する可能性があるからだ。
筆者は、データコピーの申請を行う前に、サーバーの移転を行うので新たな書き込みをしないようにとの投稿を行い、移行が終わった後で、その旨の投稿を行った。
2.どの程度早くなったのか
(1)体感では確実に早くなった
2023 年1月にエックスサーバーにサーバー移転した後は、当サイトの表示速度は、ほとんど遅延時間が気にならない程度にはなっていた。ホテルの WiFi などで閲覧するとホテルの通信回線の状況によっては、表示速度が遅いということもあったが、これは他のサイトも同様であるからサイトやサーバーの問題ではない。
ある程度以上の優良なレンタルサーバーであれば、その性能は CMS を用いない当サイトのような静的なサイトにとっては、すでにオーバースペックになっており、ほとんどの場合他の要素によってサイトの表示速度が決まることとなる(※)。
※ WordPress を用いたサイトの場合は、サーバーの性能が影響するかもしれないが、最近ではほとんど気にならない程度にはなっている。
すなわち、サーバーの性能向上の目的は、通常時の表示速度の改善ではないと思った方が良い。
しかし、体感的には早くなったように感じる。当サイトには動画を置いてあるページもあるのだが、気にならない程度の時間で動画が表示されるようになっている。
(2)Google 社の PageSpeed Insightsによる測定
ア 移行前の測定結果
※ イメージ図(©photoAC)
次に、移行の前後で、トップページの表示速度がどのように変化したかの測定結果を示そう(※)。実際に測定してみると、それほど大きな変化はないようだ。
※ 測定結果というと、客観的なデータのように思えるかもしれないが、実際には測定のたびに結果はかなりばらつくし、測定するプログラムが、どのように評価しているのかによっても結果はかなり異なる。参考までにとどめて欲しい。
測定は、ごく一般的に使用されている Google 社の PageSpeed Insights を用いている。測定はデータコピーの申請の直後に行っている。
まずはモバイルの表示速度である。パフォーマンスは 52 となった。早いとはいえないが平均以上である。Speed Index が 5.3 秒だが First Contentful Paint は3秒なので、“3秒ルール”はかろうじて守られている。また、PageSpeed Insights は実際よりも遅めの数値となるので、それほどストレスは感じずに操作できるレベルといってよい。
トップページがスライドショーなどで画像を多用している割には、まあ満足できるレベルではあったのかもしれない。
次は、デスクトップであるが、こちらのパフォーマンスは86で、改善の余地はあるもののとくに問題となるレベルではない。やや遅いとはいえ、ストレスを感じずに操作できるレベルだといえよう。
まあ、極端な画像効果を用いているわけではないので、この程度の速度は出るだろう。
イ 移行後の測定結果
次に移行後の測定結果を見てみよう。こちらは実際に移行作業を行った当日の夕方に、新サーバに移行したことを確認した上で測定している。
まずは、モバイルの測定結果である。52 から 43 にかえって悪化している。誤差の範囲ではあろうが、speed index も 5.3 秒から 8.2 秒と悪化している。
体感では、表示速度は改善されたように感じたのだが、数値にすると逆転していた。ただ、測定の揺らぎのようなものと考えてよいだろう。
次にデスクトップの測定結果を見てみよう。こちらは 86 から 87 にわずかではあるが改善されている。
とくに speed index が 5.3 秒から 2.4 秒に劇的に向上している。しかし、First Contentful Paint が移行の前後共に 1.0 秒で改善はされていないが、体感的には気にならなくなっている。
ウ サーバー移行前後の比較
サーバ移行の前後をまとめると次表のようになる。つまり、ほぼすべての項目で値が悪化したか変化しないかなのである。一部の指標では数値が改善しているものもあるが、ほぼ誤差の範囲内だろう。
WEB サイトの測定指標は、測定するごとにかなりばらつくので、これを見る限りでは表示速度が改善したとは言えないということであろう。
項目 | 移行前 | 移行後 | |
---|---|---|---|
モ バ イ ル |
パフォーマンス | 52 | 43 |
First Contentful Paint | 3.0秒 | 3.0秒 | |
Total Blocking Time | 1,000ミリ秒 | 1,720ミリ秒 | |
Speed Index | 5.3秒 | 8.2秒 | |
Largest Contentful Paint | 3.7秒 | 3.7秒 | |
Cumulative Layout Shift | 0.147 | 0.147 | |
デ ス ク ト ッ プ |
パフォーマンス | 86 | 87 |
First Contentful Paint | 1.0秒 | 1.0秒 | |
Total Blocking Time | 30ミリ秒 | 140ミリ秒 | |
Speed Index | 1.6秒 | 2.4秒 | |
Largest Contentful Paint | 1.1秒 | 1.2秒 | |
Cumulative Layout Shift | 0.062 | 0.058 |
※ 赤文字は悪い方の指標。
ただ、繰り返しになるが、サーバーの性能はすでに他の要因に比してオーバースペックなので、新サーバーに移行しても日常的な表示速度の改善につながるわけではないが、異常事態が発生したときの安全要素にはなるのであり、サーバー移行のメリットは大きいと言える。
3.最後に
※ イメージ図(©photoAC)
エックスサーバーは、毎年のようにサーバーの性能を向上させた新サーバの導入を図っている。そのため、エックスサーバーとのレンタルサーバー契約をしたままだと、契約をした当時の性能の低いサーバーを使用続けることになる。
個人でサーバーをレンタルしているのであれば、新サーバーがリリースされれば新サーバーに移行することが多いだろう。しかし、企業のサイトの場合、新しいことを行う不安感が先に立ち、またメーラーの設定変更が必要などと聴くと、つい今のままでかまわないと思いがちである。
事実、多くの企業のサイトで契約した当時のサーバーのままで運用を続けているケースも多いようだ。しかも、そういった企業のサーバーは CMS や PHP のバージョンが古いままだったり、jQuery のバージョンが古いままだったりという問題もあるようだ。
そのような状況では、ますますサーバー移行がおっくうになりがちだが、一度、これを機に WEB サイトの CMS、PHP、jQuery などのバージョンを調べて、最新の状況にすることをお勧めしたい。
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