現代において個人サイトを作成する意義とは




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パソコンとモバイル端末

※ イメージ図(©photoAC)

わが国のインターネットの普及率は 2021 年には 82.9 %と急速に広まっています。また、SNS やブログ提供業者のブログシステムを利用して情報を発信する市民も増加しています。

SNS やブログ提供業者のブログシステムは、特別な知識がなくても利用が可能です。また、同じプラットフォーマーの内部では最初から一定数の閲覧者があります。しかも、国外の戦時下の民間人の状況をリアルタイムで知ることができるなどの大きな可能性を秘めています。

しかしながら、発信した情報はプラットフォーマーの管理下に置かれ、また、数時間から数週間、長くても数か月が経つと過去の情報に紛れて利用されなくなってしまうという特性もあります。

価値のある情報を、自らの管理の下で、整理して発信するためには、html ファイルの入力や WordPress 等を用いた個人サイトの作成と公開が必要となります。

本稿では、htmlファイル等の入力の方法で7年間に渡って個人サイトを公開し、2023 年には1年間で 470 万 PV を達成した筆者が、SNS、ブログ提供業者によるブログ 全盛の現代において個人サイトを公開する意義を解説します。




1.インターネットの現状

執筆日時:

最終改訂:


(1)インターネットの歴史の概要

パソコンを使う女性

※ イメージ図(©無料の写真素材「ぱくたそ」 、モデル:茜さやか

わが国のインターネットの歴史は、1984年にいくつかの大学をネットワーク(JUNET)でつないだことに始まる。その後、JUNET に接続する組織が徐々に増加し、1992 年には最初のプロバイダが誕生した。1994年には、ダイヤルアップ IP 接続サービスが開始され、一般にもインターネットが解放される。そして、2000年 には Google が日本語検索システムを公開した(※)

※ それまでは、検索システムは存在しなかった。サイトを探すには、雑誌に掲載されたサイトのリストや、ネット上のリンク集を頼っていたのである。

この間、インターネットは急速に普及し、1996 年に 3.3 %だった普及率は 2000 年には 37.1 %まで増加している。ただ、この頃の WEB サイトは html ファイルの直接入力による個人や大学のサイトが中心である。当時、インターネットで発信したければ、html ファイルを入力してサイトを立ち上げるか、誰かが公開してくれた掲示板を利用するしか方法はなかったのである。

その後、2001 年に ADSL 事業が開始され、2003 年には一般向けの光回線が開始されて、ブロードバンド時代が幕を開けると、インターネットの可能性は大きく拡がった。そして、同じ 2003 年にブログ提供業者による livedoor Blog、ココログ、Seesaa ブログがサービスを開始、2004 年には SNS である mixi がサービスを開始した。html に関する知識がなくても、誰でも簡単に発信できるようになる時代に突入したのである。

しかし、そのことは、インターネット上で個人が発信する情報が、これらのブログ提供業者や SNS の事業者の管理下におかれるという負の側面ももたらした。


(2)誰でも発信できる時代の到来

スマホを使う女性

※ イメージ図(©無料の写真素材「ぱくたそ」 、モデル:井隼そら

総務省(※)によれば 2021年 の日本のインターネット利用率(個人)は 82.9 %とされる。また、同年の日本人一人当たりの平日1日のインターネットの平均利用時間は 176.8 分と 2017 年の100.4 分を大きく上回っている。

※ 総務省「令和4年版 情報通信白書」(2022年7月)

また、SNS の利用率は、ICT 総研(※1)によると、2021 年末で 80.9 %とされている。一方、ブログの利用率は、やや古い調査だが、総務省(※2)によると、2006 年3月時点でブログ提供業者に登録しているブログ利用者数は 863 万人(同時期の SNS 登録者数は 716 万人)とされている。なお、ブログ登録者のうち、アクティブな発信者は、200 万人程度とされている。

※1 ICT 総研「2022年度SNS利用動向に関する調査」(2022年05月)

※2 総務省「ブログの実態に関する調査研究」(2009 年3月)

ただ、現実には1人の国民が複数の SNS やブログを利用していることも多(※)いから、かなりの重複があるだろう。また、SNS を日常的に利用していても発信はしないというケースも多い。また、ブログなどは始めてはみたが、その後は続けていないというケースも多いのが現実である。現実に、限られたメンバーだけでなく一般に向けて、アクティブに発信しているユーザーが、どの程度いるかは、必ずしも明確ではない。

※ 常識で考えても、Twitter と Facebook の双方に登録している場合は多いだろう。また、Twitter は複数のアカウントを持つことが可能であり、実際にそうしているケースもみられる。

とはいえ、わが国の国民のかなりの割合が、SNS や ブログでの発信を続けていることは否定できない事実であろう。


(3)個人サイトの歴史=隆盛と衰退

パソコンを使う2人の女性

※ イメージ図(©photoAC)

1084 年にいくつかの大学をつないだネットワーク(JUNET)ができたときは、html 形式のホームページは存在していなかった。当時は、そのような利用は想定されていなかったのである。

世界で最初の http 形式のサイトは 1991年の Tim Berners-Lee によるものとされる。日本では 1993 年に伊藤穣一氏が http 形式のサイトを立ち上げたことが記録に残っている。とは言え、この頃の一般のネット利用の形態は、インターネットではなくパソコン通信が主流であった。

1994 年から 1995 にかけて、国産の検索サイトが出現し、大手新聞社がサイトを解説するなど、インターネットの可能性が一般にも認識されるようになっている。

1996年になると、前年にWindows95が登場してパソコンが使いやすくなっていたこともあり、個人サイトが徐々に増え始める。とは言え、当時はナローバンドが主流で、個人サイトは文字情報が中心であった。しかし、1995年の阪神淡路大震災で、インターネットのサイトによる情報が役に立つことが社会的に認識されるなど、インターネットの様々な可能性が指摘されるようになっている。

2001年の ADSL 事業の開始でブロードバンドが一般にも利用可能になると、個人サイトが数多く立ち上げられ、先進的な企業もサイトを立ち上げるようになってきた。この時期が個人サイトが隆盛を極めた時期であった。もっとも、この頃のサイト構築には、かなりの知識とノウハウを必要(※)としていた。

※ やや専門的な内容になるが、1999 年に HTML4.0 が W3C から勧告、2000年に XHTML が勧告され、技術的にはサイトのスタイルを css で対応することが可能になっている。しかし、2000年は、第一次ブラウザ戦争が IE の勝利で集結した年で、IE もネスケも css に対応していなかった。このため、css の利用は進まなかった。また、当時は、画面全体をひとつの表としてサイトを構築するテーブルレイアウトが主流であった。

その後、css に対応するモダンブラウザが登場し、また、Google がテーブルレイアウトや css ファイルを用いないサイトの検索順位を下げると宣言したこともあって、現在は html とcss の分離が進み、またテーブルレイアウトもほとんどみられなくなっている。

ところが、2003 年から 2004 年にかけて、ブログ提供業者がブログを提供し、SNS も始まると、html と css の知識がなくてもインターネットでの発信が可能となった。そのため、html と css を入力しなければならない個人サイトは逆に低調になっていくのである。

しかし、2003年に WordPress が登場した。WordPress は、html や css の技術がなくても個人サイトを構築することができるのである。その普及が進み、その性能も向上すると、再び、個人サイトが復活の兆しをみせている。ブログ提供業者や SNS の事業者に自らの情報が管理されることに不満を感じた人びとが、WordPress を利用して発信するようになったのである。

現在、国内の主要なレンタルサーバ会社は、個人や小規模企業が WordPress によるサイト構築を行うことを前提とした経営戦略をとっている。さらにスマホの普及で誰もがインターネットを利用するようになったこと、また、働き方改革で少なくない企業が副業を認めたことも、個人サイト復活に勢いを付けている。


2.個人サイト、ブログ提供業者のブログ、SNS の特徴

(1)個人サイト、ブログ提供業者のブログ、SNS とは

WEB サイト

※ イメージ図(©photoAC)

個人が発信するような WEB サイトを分類する場合、(従来型の)ホームページ、ブログ(※)、SNS に分けるのが一般的であるが、本稿では、個人サイト、ブログ提供業者のブログ、SNS に分類している。

※ WordPress を用いたサイトは、一般にブログと呼ばれることが多い。しかし、実際には、ブログだけでなく従来型のホームページを作成することも可能である。

すなわち、本稿の個人サイトには、WordPress などを利用したブログサイトを含めている。本稿では、情報を管理するのが本人かどうかに注目して分類を行うからである。WordPress を利用したブログは、ブログ提供業者のブログとは性格が異なり、自らサーバを準備して情報を自ら管理するからである。そこで、従来型のホームページと WordPress などによるサイトを含めて個人サイトと呼ぶこととする。

なお、これらについて、明確な定義があるわけではない。ブログ提供業者のブログも SNS に含めることもあるが、本稿では、一般的な分類に従って次のように定義する。

  • 個人サイト
  • レンタルサーバを契約するなどによりサーバーを確保し、htmlファイル等を直接入力したり、WordPress 等の CMS を利用して作成するサイト
  • なお、Jimdo や Wix は、利用者が自らサーバを準備するわけではなく、情報発信を自らの管理下で行うわけではないので、本稿では個人サイトには含めない。
  • ブログ提供業者のブログ
  • Amebaブログ、ライブドアブログ、FC2 ブログ、はてなブログ、楽天ブログなどブログ提供業者を利用したブログ
  • SNS
  • Twitter、Facebook、YouTube、Instagram、LINE、ツイキャスなど

なお、個人サイトの公式な定義があるわけではないが、本稿の個人サイトの定義は、一般的な概念とほとんど同じである。


(2)個人サイト、ブログ提供業者のブログ、SNS の入力の特徴

個人サイト、ブログ提供業者のブログ、SNS の特徴(メリットとデメリット)をまとめると次表のようになる。

表 個人サイト、ブログ提供業者のブログ、SNS
サイト種類 個人サイト ブログ提供業者のブログ SNS
作成の難易度
  • html ファイル等を直接入力するなら難易度は高い
  • WordPress を利用するなら難易度は比較的低い。ただし、html で修飾するなら高い。
  • きわめて容易
  • html で修飾するなら難易度はやや高くなる。
  • きわめて容易
情報の管理者
  • 情報の管理者は本人
  • サーバの変更も可能
  • 独自ドメインも使用可能
  • 情報の管理者はブログ提供業者
  • 独自ドメイン使用の可否は業者による
  • 業者の判断で公開停止もあり得る
  • 情報の提供は SNS 事業者
  • 独自ドメインは使用不可
  • 業者の判断で情報の削除もあり得る
  • アカウント停止やシャドウバン等の可能性もある
広告の有無
  • 業者の広告は載らない
  • 自ら広告を載せることは自由
  • 無償の場合は業者の広告が載る
  • 自らの広告表示の可否は業者による
  • 業者の広告が載る
  • 自らの広告表示は通常は不可
時間が経過した情報
  • html ファイル入力の場合は維持される
  • WordPress の場合、過去の記事は他の記事に紛れやすい
  • 過去の情報は参照されにくくなる
  • 過去の情報がなくなるわけではない
  • 過去の情報はほぼ参照できなくなる
  • 過去の情報がなくなるわけではない
検索のされやすさ
  • 高い
  • 中程度
  • 業者によるが、一般に低い又は無い
開設から閲覧者が増加するまでの期間
  • 長い
  • 短いが伸びにくい
  • 短く伸びやすい
対外的な信頼性
  • 発信者によるが一般に高い
  • 発信者によるが一般に低い
  • 低い又は無い
費用
  • サーバのレンタル料と独自ドメインの費用が必要
  • 無償のものと有償のものがある
  • 原則として無償

3.個人サイトの可能性

(1)個人サイトが、企業や組織のサイトの利用数を上回ることは可能

意外に思われるかもしれないが、個人のサイトが企業や組織のサイトの利用者数を上回ることはよくあることなのだ。

企業や組織の WEB サイトの情報は、その企業活動の枠内に制限されてしまう。また、組織の方針に縛られるため、閲覧者の欲している役立つ情報をタイムリーに提供できない面がある。

これに対し、個人サイトは、閲覧者に必要な役立つ広範な情報をスピーディーに提供することが可能である(※)。そのため、個人サイトの利用者数が、企業や組織のサイトの利用者数を上回ることは普通にあることである。

※ 当然のことながら、法令や公序に反したり、第三者の権利を侵害するような情報をアップすることは許されない。しかし、そのような違法な情報を用いなくとも、閲覧者の満足する情報を提供することは可能なのである。


(2)当サイトと、労働災害防止団体のサイト等の比較のツール

そこで、当サイトと、当サイトと同種の情報を提供している労働災害防止団体のアクセス数を比較してみよう。もちろん、自分のサイトのアクセス数はGoogle アナリティクスで分析できるが、他のサイトはツールを用いて推計するしかない。

他のサイトのアクセス数を調べるツールとしては次のようなものがあるが、一般的に使用されているものとして本稿では SimilarWeb(シミラーウェブ)を用いて比較してみよう。

SimilarWeb による当サイトの2月の分析結果

図のクリックで拡大します

まず、SimilarWeb で2023年4月4日時点での当サイトの分析(推計)を行うと図のような結果となる。このサイトは2023年2月(※)のデータを示しているが、Total Visits は 23.5K となる。これは、2023年2月の当サイトへの訪問数のトータルが約 23,500 であることを意味している。

※ 当サイトは、8月から 10 月までが訪問者数のピークとなり、1月から3月は最も少ない時期である。

また、Pages per Visit(1回の訪問で閲覧されたページ数)は 2.65 で、Avg Visit Duration(1回の訪問者が滞在した平均時間)が00:02:36となっている。

Googleアナリティクスによる当サイトの分析結果

図のクリックで拡大します

一方、同時期のセッション数(訪問数)(※)を Google アナリティクスでみると、81,259である。これは実際に測定しているので誤差はほとんどない。SimilarWeb のTotal Visits の 23.5K は Google アナリティクスの結果の28.9 % であるから、かなりの誤差はあるが推測である以上やむを得ないだろう。

※ 一部のサイトで SimilarWeb の Visit を Google アナリティクスのページビュー数と誤解しているケースがある。実際は SimilarWeb の Visit は Google アナリティクスのセッション数に当たるものである。

また、Google アナリティクスのページ/セッションは4.19で SimilerWeb のPages per Visit の 2.65 よりかなり大きい。また、平均セッション時間も 00:05:28 でSimilarWeb の Avg Visit Duration の 00:02:36 より大きいようだ。

Googleアドセンスによる当サイトの過去3ケ月分析結果

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また、SimilarWeb の測定結果は月によってかなりばらつくようである。SimilarWeb の Total Visit は過去3ケ月のデータを表示する機能があるが、4月9日に調べてみたところ、当サイトの Total Visit は1月 43.8K 、2月 23.5K 、3月 20.5K 、とかなりばらついている。

Googleアナリティクスによる当サイトの1年間の分析結果

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しかし、Googleアナリティクスによる当サイトの過去1年間の分析結果をみても、セッション数は月によって大きな変化はない。むしろ、1月から3月までわずかではあるが、増加傾向がみられる。

繰り返すが、SimilarWeb は推測データであり、やむを得ない面はあろう。

1件のデータにすぎないので、これをどう評価するかは、様々な考え方もあろうかとは思うが、訪問数については、SimilarWeb の推計でも正しい値から桁が違うというほどではないだろう。


(3)当サイトと災防団体等との訪問者数の比較

SimilarWeb による中災防の分析結果

図のクリックで拡大します

一方、中央労働災害防止協会(中災防)の WEB サイトの2023年2月の Total Visit を SimilarWeb で分析した結果は図のようになる。これを見る限りでは、当サイトは、中災防止のサイトの訪問者数には及ばないが、その 20.8 %(1月では 36.8 %)に達するのである。

かなりの誤差はあるとは思うが、中央労働災害防止協会の訪問者と比較して、当サイトの訪問者数は無視できるような数値ではないということである。

SimilarWeb による中災防の分析結果

図のクリックで拡大します

なお、中央労働災害防止協会の方は、過去3月の数値を見てもほとんどばらついていない。これは、訪問者数が多いため、安定した数値が出るのかもしれないし、偶然かもしれないが、原因は不明である。

中央労働災害防止協会は、全国に拠点を持つ大規模な組織であるが、創設してわずか7年の個人サイトが、2023年2月だけの比較ではあるが、その2割程度の訪問数があるのだ。個人サイトは、ネットメディアとして大きな可能性を有していると言えよう。

なお、他の労働災害防止団体について、2023年1月から3月の Total Visit を SimilarWeb で分析した結果をまとめたものが次表である。

表 当サイトと各種労度災害防止団体の Total Visit 比較
1月 2月 3月 合計
当サイト 43.8K 23.5K 20.5K 87.8K
中央労働災害防止協会 119.0 112.8K 131.4 363.2K
建設業労働災害防止協会 40.7K 54.2K 63.3K 158.2K
陸上貨物運送事業労働災害防止協会 3.7K 13.2K 15.3K 32.2K
林業・木材製造業労働災害防止協会 25.2K 13.0K 19.5K 57.7K
港湾貨物運送事業労働災害防止協会 -- < 5K -- --
(一社)日本労働安全衛生コンサルタント会 2.7K 8.4K 8.8K 19.9K
(公財)安全衛生技術試験協会 228.6K 195.7K 193.0K 617.3K

※ 港湾貨物運送事業労働災害防止協会は、訪問者数が少ないため分析ができない状態である。

この表から見る限り、当サイトは、中災防、建災防には及ばないものの、陸災防、林災防、港湾災防、コンサルタント会などより訪問者数が多いのである。現実には、かなりの誤差があるだろうが、少なくともこれらの労働災害防止団体と比肩し得る数値となっていることは間違いないだろう。

なお、試験協会は、労働災害防止団体よりかなり訪問者数が多いが、これは受験者に直結した団体だからであろう。すなわち、これらのことから分かることは、訪問者数は発信者が法人か個人かによるのではなく、その扱っている情報の種類によるということである。


4.個人サイトを保有するメリット

(1)多くの方との交流が持てる

個人サイトを保有するメリットの大きなものに、その業務において知名度が上がるということがある。労働安全の関係の人びとが集まる場所で、自己紹介でサイトの話をすると、知っていますと仰られる機会も多い。

また、掲示板やメールを通して、産業保健や労働安全の専門家や実務家の方と知り合いになることもある。ときには、ネットの内容について、様々な情報やご意見を頂くことがあるが、これは私にとっても大変有意義なことである。

私のサイトは、そのような交流を産んでくれるひとつのツールとなっているのである。


(2)サイト作成の過程が学習の機会となる

また、サイトの情報を発信するためには、常に情報の収集と学習が必要となる。労働安全衛生に関する行政の動向や、判例、などの情報が自然に身に付くのである。

また、掲示板やメールでのご質問を頂くことによって、現場でどのようなことに困っているのか、どのようなことに悩んでいるのかが生の声として分かる。そして、そのことが新たな学習につながってゆくのである。


(3)自分のメディアを持つことができる

当サイトへの訪問者数は、陸災防や林災防の2倍程度、建災防の半数程度に達しているのである。月間の訪問者は9万件ほどになるのだ。2022 年のページビュー数(ページをみられた回数)はGoogleアナリティクスで約 470 万 PV である。

これは小規模ながらひとつのメディアだといってよい。それを保有できるということは、やはり一つの大きなメリットであろう。


(4)自分の管理下での情報が蓄積されてゆく

もちろん、ブログ提供業者のブログや SNS でも様々な情報が蓄積されていく。また、世界中の方の書き込みも見ることができ、それらは個人サイトとは別な意味で貴重なツールである。

しかし、自分の管理下で自らが記した情報が整理されて蓄積されてゆくのは、個人サイトを置いて他にはないのである。ブログ提供業者のブログは情報を整理して蓄積することは困難であり、SNS は時間が経過した情報は消滅してしまう。

そればかりか、ブログ提供業者や SNS の事業者が事業から撤退すれば、すべてのデータが消え去ってしまうのである。しかし、個人サイトの場合、仮にサーバの業者が事業をやめても(※)サーバを移転すれば、閲覧者に気付かれることさえなく、サイトを継続できるのである。

※ 2019 年に Yahoo! ジオシティーズがサーバ提供事業を終了するという事件があり、それに伴って少なくない小規模サイトが終了した。しかし終了したのは、ほとんど更新されていなかったサイトが主である。Yahoo! ジオシティーズは、廃止までに十分な期間を置いて他のサーバへの移転の方法を案内していた。

なお、Yahoo! ジオシティーズは無償のレンタルサーバ事業を行う業者であり、エックスサーバー、ロリポップ、さくらのレンタルサーバなどの有償の大規模な業者であれば事業が終了するリスクは極めて低い。

自らの情報を自ら管理できることは、個人サイトの大きな特性と言えよう。


5.最後に

パソコンを扱う女性

※ イメージ図(©photoAC)

最後になるが、2000 年頃のインターネットは、マイナーなやや怪しげな雰囲気さえ感じられた世界であったが、その将来性を鋭く感じ取った人びとにチャンスを与えてくれる場であった。その中で個人サイトも隆盛したのである。

その後、既存の企業とは異なる新しいパイオニアによって、ブログ提供業者、SNS の提供者などが表れた。そして、激しい競争の中で淘汰が進み、現在では少数の巨頭によって情報の寡占化がもたらされている。

しかしそれは、多くの個人サイトの運営者が、ブログ提供業者のブログや、SNS に流れる方向を作り出してしまったのである。

すでに、SNS の事業者は、世界の方向性を変えてゆくほどのパワーを持ち始めている。その気になれば、ある種の情報を世界中に拡大し、別な種類の情報を消し去ってしまうことさえ可能なのだ(※)

※ 現在の主要な SNS の事業者は、そのようなことはしていない。しかし、2016年にトランプ大統領を生み出した要因のひとつに、某 SNS に流れたフェイクがあったのではないかとよく指摘されている。これはその SNS 事業者が意図的に行ったものではないが、その気になればそのようなこともできてしまうのである。

そのようなインターネットの世界で、個人サイトを保有することにどれだけの意味があるのかと思われるかもしれない。また、個人サイトは衰退してゆくと感じられる方も多いだろう。

しかし、本稿で説明したように、インターネットの世界では、個人サイトは労働災害防止団体のサイトとでも十分に張り合えるのである。これは、紙ベースでのメディアではあり得ないことなのだ。

そして、WardPress という、個人サイトの作成を支援してくれる強力なツールが生れているのである。もはや個人サイトを作るのに html や css を学習しなければならないという障壁は取り除かれているのだ。インターネットと個人サイトの今後に期待したいと思う。


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